パリ 6月のマルシェ『びわのコンポートとリキュールのジュレ』
おうちでパリの味 2013.06.10
今の時期は、どの八百屋さんでも見かける旬を迎えたびわ。温かい南、主にスペインから来るものが中心です。
今日はパリの東駅側、いつも行く常設市場マルシェ・サンカンタンの大好きな八百屋さんへ。お店の人達は、とっても感じ良く親切で正直! 品揃えと質もいい。ビオで揃わない野菜は、時々こちらで購入します。
毎年、初夏になってびわを見るたびに、一連なりに蘇えってくるのは祖母のこと。
「これは、お婆さん(姑)の好物だったから」と言って、必ず初物のびわを仏壇にお供えして、「どうぞ、おあがりください」と言いながら掌を合わせる。
キレイな箱に入って大事そうに扱われていた、品の良い形をしたびわ。
なにか食べ物を見て、その人を偲ぶ。その人の好きだったものを捧げて「いつまでも想ってますよ」と知らせる。祖母のたゆまぬ愛情を感じて、"そういう事を忘れずに、何十年も習慣にして生きている祖母がいいな"と思ったりした。
キズひとつなく、無垢な肌が美しい日本のびわと違って"あばたもえくぼ"な感じのこちらのびわちゃん達。自然に粗野に育ったものは、甘い香りと穏やかな酸味があります。
今日は、びわを使ったデザートを作りました。
■びわのコンポートとリキュールのジュレ
材料4人分
びわ 6個
ライム(またはレモン)1個
ミントの葉 少々
●シロップ
水 400cc
砂糖 大さじ5
リキュール 大さじ2
寒天(またはゼラチン) 2g
1.びわの皮を剥き、縦半分に切って種を取り出す。
2.鍋に水、砂糖を入れて沸騰させ、そこにびわを入れて1分ほど煮て火から下す。そこに、リキュールを入れて、びわと半量のシロップを器に移して、スライスしたライムを浮かべて冷ます。粗熱がとれたら冷蔵庫へ。
3.鍋の中の半量のシロップに水で戻した寒天を入れて煮溶かし、平たい皿かバットに入れて粗熱をとり、冷めたら冷蔵庫へ入れて冷やす。
4.ガラスの器に冷えたびわを入れ、スプーンで砕いたゼリーをかけて、シロップの中のライムとミントの葉をあしらってできあがり。
リキュールは手元にあったアルザスのぶどう、ゲウルツトラミネールの"eau de vie(蒸留酒)"を使いましたが、グランマルニエやコアントローでも美味しい。
暑い時は、寒天(ゼラチン)を多めにして少し硬めに作り、クラッシュ・ゼリーにして、砕いた氷と一緒に入れるときれいです。また、ゼリーは無くとも、刻んだミントの葉を入れたシロップ漬けもよし。
ライムの酸味とリキュールが効いて「ああ、美味しい!」と、伸び伸びとした気分になる一品です。
ところで、私のお供えは何かしら?と思うと「やっぱり、江戸前寿しと母の作る北海道の山菜のいっぱい入った炊き込みごはんかな・・・」
■マルシェ St-Quentin(サン・カンタン)
営業日:火曜~日曜
メトロ:Gare de l'Est

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo