パリ 9月のマルシェ『ポワトリーヌのカルパッチョ』

13年前、パリに住み始めた頃、最初に1ヶ月ほど暮らしたのが、18区のMarx Dormoy。パリの北、シャルル・ド・ゴール空港からの玄関口です。
当時はアラブ、インド、パキスタン、中国からの移民が多く、なんともパリらしいようなパリらしくないような......街全体がくすんだように汚い場末、そしてMarché Chapelleマルシェ・シャペルも薄暗くてうらぶれた雰囲気、スタンドの半分くらいが閉まっていて寂しいところでした。

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それが、2011年に大改装を終え、信じられないくらいにキレイに生まれ変わりました。
明るく広々していて、もう以前の面影はありません。
タイ料理、クスクス、イタリアンやアフリカンなどのできたての料理が食べれるイートインのスペースもあります。

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魚はもちろん、貝の品揃えも充実の魚屋さんは鮮度も悪くない。手前のムールは小粒のMoule Bouchot。
9月に入って、一番おいしいシーズンの始まりです。

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鶏専門店のうさぎ肉は、色良い肝が鮮度の証。こういうのは、コニャックでフランベしてからパテにするといいのです。ここには珍しく鶏ガラや手羽先など、あらゆる部分が揃っています。寒くなってきたので、今からジビエの季節が楽しみです。

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山小屋風のチーズ屋さんには手作りの質の良いものが揃っています。他にもジャムやワイン、瓶詰めの保存食などなど豊かな品揃え。

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マルシェすぐ横の商店街は、下町そのもの。ポルトガルからのジロールやセップがどーんと積んであります。ボボ風情の殿方が真剣に選んでいますが、週末のマルシェは男女半々で、このように食材にこだわる男性も多いのです。

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このマルシェでときめいたのは、
"Cochonnailles du Haut-Bois"オーボワの豚肉。ロワール地方Châteaudun近くの国立公園の中にある養豚場で、厳選した餌と衛生的な環境で育てられたもの。肉や加工品にも一切添加物を加えていない、ハムやソーセージの燻煙は、ブナの木......ふーん、なるほど美味しそう!

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この日買ったのは、寒くなってきたので、ポトフ用に塩漬けのJarretteすね肉,ソテー用に骨付きのフィレ肉、そして三枚肉の塊とパテ・ド・カンパ―ニュ。この豚を使ったパイ、お惣菜も人気のようで、長蛇の列ができています。

さて、うまそうな三枚肉をどうやって食べようか?
豚肉といえば、韓国人の友人! さすがに一番おいしい食べ方を知っています。いつか、「三枚肉に付いている厚くて硬い皮(こちらでは、それ付きで売られています)を包丁でそぎ落として捨てている。」というと「ええ~もったいない! そこが一番コラーゲンがあって美味しいのにぃ~~!」と。なるほど、そこをいつも食している彼女のお肌は、プリプリのハリ・ツヤ!
そこで、その時に教えてくれたのが、STAUB(厚手の鋳物など)の鍋で、表面を焼いてからフタをして45分くらい弱火でじ~っくり火を通すというもの。

今日は、それを使った前菜を作ってみました。「ポワトリーヌ(poitrine)」とは? なんだか、ちょっとラグジュアリーな響き?? ですが、三枚肉のことですよ。

■『ポワトリーヌのカルパッチョ(Carpaccio de Poitrine)』

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豚三枚肉    500g~1キロ
塩       小さじ1
油       少々
赤玉ねぎ    1個
ルッコラ    少々
ミニトマト   10個
ラディッシュ  5個
ケッパー    大さじ2
コルニション(ミニきゅうりのピクルス) 5個
ピーマン・エスプレット(又は、粉唐辛子)や赤粒コショウ 少々

―ヴィネグレット―
粒マスタード 大さじ1
くるみオイル 大さじ2
薄口醤油   小さじ1

1.肉に塩を振りかけてラップで包んでなじませる。1時間程冷蔵庫に置いてから、出てきた水分をペーパーで拭き取る。
2.鍋を強火で熱くしてから、薄く油を引く。強めの中火に落としてから、肉を返しながら外側に焼き色を付ける。
3.フタをしてから極弱火にして、時々返しながら45分くらい焼く。竹串を挿してみて、透明な肉汁が上がってきたら焼き上がり。火から下して、蓋をしたままゆっくり冷ます。
4.器にヴィネグレットの材料を混ぜる。赤玉ねぎ、ラディッシュをそれぞれ、スライサーで薄切り。ミニトマト、コルニションは縦に2等分。
5.冷めた肉を包丁で薄切りにしてから皿に並べて、野菜をのせて、ヴィネグレット、ケッパー、コルニション、唐辛子などを散りばめる。

塩豚のように、きつめに塩をしてから数日置いても良いのですが、こういう臭みがなくて質の良いものは、さっぱりと頂きたいので、うす塩ですぐに焼いてしまいます。茹で豚にすると旨みがお湯の中に流れて身がパサパサということもありますが、これなら豚エキスもすべて凝縮。
大きな塊で仕込んで、余ったものはジッパー付きのビニール袋へ入れて、醤油少々と潰したニンニクを入れて揉み込めば、チャーシューに(冷蔵庫で1週間くらい保存、又は冷凍も可)。肉から出た焼き汁は、翌日美味しい煮こごりになっています。
チャーシューが出来たら作るのは、青山のふーみん風のネギそば。ただスライスして、白髪ねぎとゆずこしょうだけで食べてもおいしい。ヴィネグレットの代わりに、ポン酢とゴマ油もいいですね。
これには軽めの赤ワインBouillyがぴったり! お酒も進み、一皿がぺロリ。

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さて、マルシェを出ると、この界隈にも洒落たエピスリーやボボ風なカフェができていて、びっくり! 近くには、タイ料理の食堂や中華のレストランも多いので、平日のランチタイムは、近所の出版社や会社員で賑わっています。

そして、少し歩いて今日のもう一つのお目当てへ。

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長年、SNCF(フランス国鉄)の倉庫だったところが再開発されて、ショップや学生のアパートが入っている複合施設に。あたりの様子が一変、ここもボボ臭いっぱいです。カナル・サンマルタンでいつもお世話になっているBob's Juiceの支店Bob's Bake shop、ずっと行ってみたいと思っていたのです。NYのユダヤ人として育ったMarcの自慢のケーキやベーグルのサンドが人気。NYのダイナーにいるような気分で楽しくなっちゃう!

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建物裏側には野菜畑や、パリにしては最先端のソーラーシステムの設備、魚が泳ぐビオトープがあって、穏やかな散歩道。

今日は少しずつ変わりゆくパリを眺めながら、良い気分転換ができました。

■Marché couvert La Chapelle
10, rue de l'Olive 75018 Paris
メトロ)12番線 Marx Dormoy 駅下車
営)火~土曜8時30~13時、16時~19時30 日曜8時30~13時

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo

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