"新春"パリで楽しむおせち料理。
おうちでパリの味 2013.01.10
みなさま、遅ればせながら、新年あけまして、おめでとうございます。
今年も、どうぞよろしくお願い致します。
このお正月はパリに居ながら、おせち料理を作る事になり、少し慌ただしい年末になりました。
初めて母の助けなしに、ひとりで作るおせち・・・実際に始めてみると、案外自分が何もできない事を知り始める。思っていたよりも手間と時間が何倍も掛かる。
戸惑っていたときに、急に円覚寺のお坊さまの言葉を思い出した。
禅寺では、「典座(てんぞ)」と呼ばれる修行の中の炊事担当が重要な役割り。
「客をもてなす為に一生懸命働く。馳けまわって作るので"ご馳走"なのです」そして、"精進とは、自らを励ますこと" そう書いてある本を読み返し「よ~し!」と覚悟が決まる。(さすが、お坊さまは良い事を言いますね)
食材探しに走り廻っているとき、作っている時は、ひたすら食べてくれる人の事を考える。
招いた友人達、ひとりひとりの顔を思い浮かべながら・・・ああ、あれもこれも食べさせたい、こういうのも喜びそう! いつも、ちょっとしたサプライズが欲しいと思う。
いろいろと思いを巡らせて、パリで揃う材料、なるべく近郊のものを使って浮かんだアイディアを試しながら、まとめていく作業が楽しい。
改めて、北海道の母のおせち作りを想う・・・12月に入ると母はそわそわし始めて、おせちの材料の調達にかかる。毎年、九州から届く活車海老、四国のプリプリの蒲鉾、黒豆は父の畑の自家製、小樽からのあわび、日高の特上こんぶ・・・そうして出来上がったものを元旦の朝、頂くときに「今年もみんなが健康で幸せに、良い年になりますように」という父の音頭のように、いつも感じるのは、"母の願い"家族みんなの健康を祈りながら、心を込めて作ってくれているのを感じる。
また、おせちの意味を再度調べ直してみると、新たな発見があって面白い。作りながら、その気持ちになっていく、だからこそ意味を持つ気がしてくる。
作ったのは18品。左手前から
南仏産の無農薬・キンカンの甘煮、グランマルニエ風味。
田作り。タイ産の乾燥冷凍品を水に漬けて塩出し、天日干ししてから味付け。
八幡巻きは、にんじんとパネ(古い品種の野菜)と、うずらを牛肉で巻いて。
鶏もも肉を挽いて、とうふ、春雨、マレの庭の銀杏を入れて味噌で味付け、薄焼き卵で包んで蒸したもの。
・栗きんとん(中に黒糖で煮た栗入り)こちらには日本のようなサツマイモがないので(オレンジと白っぽいものがあり、甘みや風味乏しく淡泊)日本種のかぼちゃを少し混ぜて、サフランを入れて煮て色つけ。
甘酢漬けのレンコンにスモーク・サーモンとしそ。
干しあんずの甘煮、ノルマンディーのカルバドス入り。月に見立ててうさぎ(大根)を。
・伊達巻は、地鶏卵とはんぺんに酒と砂糖を少な目、煮つめたりんごジュースを入れて焼きました。
・ビーツのしぼり汁で染めたうずら卵。
花れんこん 母の梅干しのしその汁に漬けたもの(紅)と甘酢漬け(白)で紅白かまぼこの替わりに。
紅白なますは、甘酢の中にみかんの果汁を。
海老の旨煮 海老の臭みを消す為に、これにもグランマルニエをひと振り。
昆布巻き 日高昆布をとろ火で柔らかく煮て、流水に見立てました。(去年の嫌なことは水に流して・・と勝手に意味立てて。)
・うま煮
・北海道・十勝の黒豆を黒砂糖で煮て、クコの実と。
煮豚 ことこと煮た肩ロースを熱いうちにニンニク醤油だれに漬けて、柚子こしょうでいただく。
たたきごぼう。
なぜか、家ではおせちにもキンピラ。無農薬のトピナンブルー(菊芋)を皮付きで刻みとにんじんと。
今回準備したのは、14人前。元旦と2日の昼夜に分けておもてなし。
おかげさまで正月早々、賑やかな楽しい時間を過ごせました!
今年も美味しいものを作って食べて心豊かに。そして、風水的には2013年はリセットの年! だそうで、また心新たに精進する年(励まし励まし)にしたいと思っています。

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo