カンヌのうまいもの その2
おうちでパリの味 2011.07.29
あめ色に炒めた玉ねぎ、黒オリーヴとアンチョビをのせたピザ・・・おいしそう!
これは、Pissaladière:ピッサラディエールというニース風の名物。
市場の買い物帰りに、一切れ買ったら、とっても美味しかったので、注文して作ってもらいました。
そして、味見と称して買ってみたクルジェットの花のファルシーも、病みつきになりそうな美味しさ。
すっかり、このお店のファンになってしまい、足しげく通って南仏料理を堪能しました。
お店の名前は、"Kiosque Provençal'' (キオスク・プロヴァンサル)。
ご主人のNorbertさんは、長い間、イギリスやカンヌのレストランやパラス・ホテルで働いた後、2008年にここをオープン。
元気で働き者Norbertさんと、何かと世話を焼いてくれる、優しい息子 Antonyくん。
朝から晩まで、ご近所の常連さんがひっきりなしに来て、大繁盛です。
奥さまのSophieさんの故郷は、フランスとスペインの国境の街。
「これは、うちの母のレシピーなのよ」というイカのファルシ・セトワ風 ''Encornet farcis à la Sétoise''は、挽き肉と野菜を詰めて、トマトソースで煮込んだもの。
Sétoise:セトワーズとは、フランスの南西・ランドック地方の港町に伝わる伝統料理の総称で、マルセイユやトゥーロンなどでもよく作られているそう。
「この海老は、パスティスでフランべするのよ」とソフィーさん。
自慢のパエリアは、海の幸が盛りだくさん、迫力満点です。
開いたイワシの上に、トマト・ソースをのせてグリル。
クルジェットの花のファルシは、手間が掛かるので、普通のお店やレストランでは、ほとんど作られていないそう。
Fleurs de courgette frite:クルジェットの花の天ぷらは、衣にバジル、ハーブ、にんにく、塩で味付けしたもの。揚げたてが香ばしくて、おいしい!
あちこちで見かけた"Socca"(ソッカ)の看板。やっと、ここで、本物にありつけました。
北アフリカから伝わったヒヨコ豆の粉にオリーブ・オイル、塩を加え、丸い天板に伸ばしてから、オーブンで焼いたもの。
シンプルに、粗挽きの黒こしょうをかけたり、チーズをかけていただく。
少しずつ、好きなものを選ぶと、すぐに温めてくれます。
もう、ロゼが止まらない・・・
ご主人お薦め"世界一美味しいワイン"というBANDOL:バンドールのもの。やっぱり、その土地のワインがいい。冷やしたロゼが、どの料理にもぴったりで、飲む度に、うっとりしていました
ご主人曰く、ここへは毎年、カンヌ映画祭の期間中に、監督の河瀬直美さんが、毎日、ご家族で食事にいらっしゃるそう・・・気持ちがわかります。
南仏らしい、実に明るくて気さくな人達が作る心の込もった料理、お袋の味。
どれも、本当に美味しい。
思い出すたびに、「ああ、また食べたい・・・」と溜息。
秋のように肌寒いパリで、カンヌの太陽と味を恋しく想う日々を送っています。
Kiosque Provençal
キオスク・プロヴァンサル
4,Place du Marché Forville 06400 Cannes

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo