【医師監修】新型コロナウイルスワクチン、受けるべき?

ドクターに聞いてみよう。 2021.04.02

増富健吉

緊急事態宣言も解除され、日本でも医療従事者や高齢者、基礎疾患のある人、高齢者施設等での仕事についている人たちから接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチン。副作用への懸念や不安を抱いている人も多いはず。そこで、国立がん研究センター研究所の医師、増富健吉先生にずばり聞きました。

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Q:新型コロナウイルスワクチン、受けるべき?

文/増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)

私自身は絶対に受けますし、(特別な事情がない場合は)できるだけ多くの人に受けてもらいたいと思います。最近、多くの人から、「先生なら打ちますか?」と聞かれますが当然、「はい」と答えます。逆に「なぜそんな質問をするのか?」と聞き返すと、「怖いから」とか、「心配だから」という返事が返ってきます。

ワクチンをはじめとしたお薬、そして、さらにいえば医療行為には、必ず、良いことと悪いことがあります。このバランスの上にすべての医療が成り立っていることは明らかなことです。ですが、こんな教科書的な答えを読者の皆さんは期待していないと思いますので、ずばり、新型コロナウイルスに対するワクチンの「悪いこと」について少し説明しようと思います。

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photo:iStock

いま世間で話題の筋肉注射! 本当に皮下注射より痛いのでしょうか?これは、誰がどう打つかで随分と異なります。皮下注射であれ、筋肉注射であれ、下手くそが打つと痛いにきまっています。余談ですが、私の知り合いの歯医者さんは、「痛くない麻酔」のプロです。ちょっとした、医者の工夫で痛さは随分と違います。米国では、予防注射といえば泣いている子どもの太ももに、「ぶさっと」まっすぐ突き刺します。これでは、想像しただけでも痛いですよね。日本のお医者さんや看護師さんはみんな、「優しく上手」に打ってくれます。

安全についてですが、アナフィラキシーという言葉が、新型コロナウイルスワクチンに関連して「ひとり歩き」している感じがします。アナフィラキシーは、ワクチン接種のみならず、薬剤を投与する多くの医療行為に関連して起こりうる反応です。極論を言えば、医療行為ならずとも、たとえば、そばアレルギー、小麦アレルギーをはじめとした、食品アレルギー、2回目以降の蜂刺され、などで起こるアレルギー反応も医学的にはアナフィラキシーと同じ原理で起こるのです。私には、なぜ、新型コロナウイルスワクチンに関連して、特段にアナフィラキシーが取りざたされるのかまったく理解できません。

ああ、そうそう、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という病気があるのをご存知ですか? 普通に食事して、そのあとすぐ運動すると突然、「アナフィラキシー」が起こるんです。アナフィラキシーですから命に関わることも多いです。新型コロナウイルスワクチンによるアナフィラキシーなんかより、私にはこちらのアナフィラキシーのほうがはるかに恐怖です。予想もつきませんし、医者もそばにはいませんからね。そもそもこんな「病気」をご存知の方も少ないはずです。個人的には、新型コロナウイルスワクチンのアナフィラキシーよりも、啓蒙するなら「食後すぐには運動しないほうがいいよ」という事を伝えるほうが世の中のためになるような気がします。

それから、みなさんは筋肉痛の経験ありますか? 接種後の痛みは筋肉痛です。私は筋肉痛が大好きです。

また発熱や、全身の倦怠感があるのかどうか。これはたとえば、赤ちゃんや小さな子どもが、免疫を獲得して生きていくために必要な予防接種を受けた日は、「機嫌が悪い」ということを経験された親御さんは多いのではないでしょうか? まだおしゃべりのできない赤ちゃんでも経験している「正常な反応」です。

とはいえ、交通事故が怖いので車を運転しない人もいるでしょうし、飛行機が嫌で絶対に電車で移動する人もいます。良いことと悪いことのバランスを考えて最終的には本人の判断です。でも、正しい知識で冷静に考えてみることは重要だと思います。

増富健吉(ますとみ・けんきち) 
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farberがん研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

photo : istock, texte:KENKICHI MASUTOMI

増富健吉

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

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