【医師監修】乳がん検診、マンモと超音波は1年ごとでOK?

ドクターに聞いてみよう。 2021.04.16

増富健吉

女性なら多くの人が一度は受けたことがあるであろう、乳がん検診。40代ともなれば定期的に受けるべきと頭でわかっていても、超音波検査とマンモグラフィ、どちらの検査方法をどのくらいの頻度で受けるのがベストか、曖昧な人が多いのでは? そこで、国立がん研究センター研究所の医師、増富健吉先生に改めて聞いてみました。

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Q 乳がん検診、マンモと超音波検査は1年ごとに受ければいい?

文/増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)

100人に共通の答えといわれれば、最低限「40歳以上、女性、2年に一度、マンモグラフィ」ということになるのでしょうが、状況に応じて答えは異なります。ただし、とりわけ乳がんの早期発見に貢献するかもしれないと考えられているのが「自己検診」です。乳がんは自分の手の届く数少ない臓器のひとつ。自分の手で異変がないか探すことが効果的に実施できる臓器です。月に一度。月経周期のなかで乳房の張りの少ない時期に自分で触診して異常がないかみてください。

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photo:iStock

最初に理解して頂きたいのは、人間の身体のことで「こうすれば大丈夫」といえることは何もありません。しかしながらそうはいっても、科学的な根拠をもとにできるだけ公平・公正な判断をもって、「病気をより早くみつけるには」どうすれば良いかということを提案するのは大切なことです。そのために、長年蓄積してきたデータをもとに、「こうすると、本当に病気を早く発見することができ、どうやら、そうすることが長生きに繋がった」と思えること(科学的に証拠を提示できそうなこと)を学会は世間に公表して、そして、本当らしい確実性があれば国は公的資金で、検診を実施してくれます。すなわち「どうやら本当らしいぞ。よし住民検診として国が予算を負担したうえで国民に広く実施して、病気の早期発見に役立てて、国民の長生きと医療経済に貢献しよう」と決めたものだけが、皆さんの自宅に「住民検診」のクーポンとして届くわけです。

その観点でいえば、「乳がんに関して言えば、40歳以上の女性は2年に一度、マンモグラフィを実施すること」が推奨されています。同じ観点でいえば、残念ながら「超音波検査」はまだ効果があるかどうかについて決着はついていません。

さて、「2年に一度のマンモグラフィ」だけで本当に大丈夫?と思われる方は多いのではないでしょうか?そのとおりなんです、特に国が行う検診事業での推奨は、その個人にとって意味があるかどうかは考えていません。あくまで、国民全体にとって意味があるかどうかを指標にしています。

少し難しい話になりましたが、もう少し具体的に話しましょう。もし、親族や身内に、乳がんで早く亡くなられた方とか若くして乳がんになった方がいる、とか個々人で異なる状況を考えなければ、「40歳以上、女性、2年に一度、マンモグラフィ」ということになるのです。要は個々人の状況に応じて、柔軟に対応することが大切です。2年に一度の住民検診のクーポンに加えて、間の年は、自費で超音波検査を受けるもよし、母親が乳がんだったので心配なので超音波検査を毎年受けるという人もいるでしょう。そして、また、気になる「しこり」があればそんなこととは関係なくすぐに診察を受けるべきだと思います。

増富健吉(ますとみ・けんきち) 
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farberがん研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

photo : istock, texte:KENKICHI MASUTOMI

増富健吉

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

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