【医師監修】がんと診断されたら、まずやるべきことは?

ドクターに聞いてみよう。 2021.06.26

増富健吉

「まさか、私が?」誰にでも、がん告知は突然やってくる。先の治療や費用、仕事など社会生活への不安でパニックになるかもしれない。30代後半、いまはひとり暮らしでも、結婚してこれから子どもを持つ可能性だってあるのかもと思っていたのに……なんてこともあるだろう。もしも、がんと診断されたなら、どうすればよいの? まずは最初にやるべきことを 国立がん研究センターの医師、増富健吉先生に聞きました。

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Q. 30代後半、ひとり暮らしの私ががんと診断されたら、まずやるべきことは?

文/増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)

年齢、性別、生活環境などの要素を加味して考える前に一般論として「がん」と診断されたら何をすべきかという話から始めましょう。みなさんは、「医師の診断は間違いがない」と思われているかも知れませんが、意外と間違った診断も多いものなんです。とりわけ、がんと確実に診断する(これを確定診断といいます)ためには、どういう検査が必要かご存じですか? CTでもMRIでもないんです。顕微鏡で、がん細胞の存在を眼で確認することが必須なのです(これを病理診断といいます)。レントゲン、CTやMRI、マンモグラフィーなどの画像診断でがんだと診断されたという患者さんが多くいますが、あくまで、「がんを疑う画像が得られた」にすぎません(もちろん、一目瞭然、画像だけでがんと確定できるような場合もありますが……)。

210623-cancer-02.pngphoto: iStock

がんと診断された時に、すでに、病理診断が終わっている場合は治療に向けて動き出すことが必要です。この場合でも、いま一度、病理診断が正しいかどうかの確認は必要に思います。まだ、病理診断が終わっていない場合は、できるだけ早く病理診断をする方向で準備を進めることになります。

いずれにしても、「がんの診断」が本当に正しいのかも含めて、できることならば、もうひとりくらいは別の医師の意見を聞いてみることが重要に思います。私の勤務する国立がん研究センターにがんと診断されて来院し、「がんではなさそうですのでしばらく経過を見ましょう」という結論になる方もたくさんいます。

それでは、「30歳後半、ひとり暮らし」という条件がつくと。

想定されるよくあるケースは、「乳がん」や「子宮頸がん」、「卵巣がん」などのことが多いのではないかと思います(もちろん、稀なケースやこの想定からずれることもあります)。こうしたがんの特徴は女性特有の「がん」であり、しかも、30歳後半となると出産可能年齢も考慮する必要がある時期にさしかかっているということになります。「がんの治療をして、妊娠、出産も考えたい」というような場合にはやはり、がん医療を取り巻く全体像を理解している病院を探して相談することがいちばん大切だと思います。がんの治療そのものが「5年以内の妊娠、出産」を諦めることと同義の場合もあります。またそのような場合でも治療後の可能性を考えてくれる病院もあります。

もうひとつ、30歳後半、ひとり暮らしの女性となれば、仕事をされているのでしょうから、がんの治療に対する会社の理解が得られれば、そして、協力してもらえれば心強いですね。最近は、世の中も、会社も「がんとの共生」を掲げる時代になってきていますので、会社にも相談して治療に協力してもらうことも重要だと思います。

text: Kenkichi Masutomi

増富健吉

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

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