時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ハリー・ウィンストンのジュエリーの話をお届けします。
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HARRY WINSTON
Winston Gates
屈指のダイヤモンドブランドを創始したハリー・ウィンストンは、若くして宝石の目利きに天性の才能を発揮。1920年、わずか24歳でダイヤモンド商の仕事をスタートして、たちまち王侯貴族や大富豪、ソーシャライツや銀幕のスターたちの心をつかみ、12年後には自らの名前を冠した「ハリー・ウィンストン」を起業した。
世界的なジュエラーとなった彼は、60年、ニューヨーク5番街718番地にある壮麗な建物を気に入り、本店サロンとして手に入れる。美しい石張りで造られたネオクラシック様式の設計で、装飾を施した鉄のゲートに守られた建物だ。多数のVIPたちが訪れるこのサロンのデザインは、これまでにもハイジュエリーやウォッチのモチーフになってきたけれど、デイリーに楽しめる「ウィンストン・ゲート」も、サロンの装飾からインスピレーションを得ているという。
ロゼットと呼ばれる伝統的なフローラルモチーフと、極上のダイヤモンドを組み合わせた「ウィンストン・ゲート」は、軽やかさと優美さをあわせもつジュエリー。繊細なフローラルモチーフは、ニューヨーク5番街のサロンだけでなく、ハリー・ウィンストンの世界中のサロンを守るゲートにあしらわれたロゼットをかたどっている。
創始者ハリー・ウィンストンは、ポジティブな気分やチャンス、展望、幸運の象徴として、このロゼットをサロンに取り入れたのだそう。特別な人のために開かれるサロンのゲートにあしらわれた、シンボリックなロゼット。光り輝く明日へのゲートを開くために、思いを込めて、手元に「ウィンストン・ゲート」をきらめかせていたい。
*「フィガロジャポン」2020年7月号より抜粋
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA