時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ブレゲの時計の話をお届けします。
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BREGUET
Classique
腕時計「クラシック 9068」(18KRG×ダイヤモンド、φ33.5mm、アリゲーターストラップ)¥3,102,000/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
スイスきっての老舗ウォッチメゾン、ブレゲを創業したのは、天才時計師アブラアン−ルイ・ブレゲ。18世紀から19世紀にかけてパリのシテ島に工房を構え、王侯貴族のための特別な懐中時計を次々に生み出していた。
たとえばフランス王妃マリー・アントワネットは、恋人フェルセン伯爵に贈る時計をブレゲに作らせ、自分も同じデザインの時計を愛用していたという。そして「世界最高の時計」を作るようにオーダーし、それが完成する前にヴェルサイユを去ることになった。
フランス革命後もブレゲの人気は高まるばかりで、皇帝ナポレオン1世とその妃たちも彼の顧客に。ナポリ王妃となったナポレオンの妹カロリーヌ・ミュラは、トータルで34個もの時計をブレゲから購入したほど。
宮廷のステイタスシンボルだった、アブラアン−ルイ・ブレゲの時計。その美意識を継承しているのが、ブレゲの「クラシック」コレクション。パリの石畳を思わせる「クル・ド・パリ」装飾をほどこした文字盤、青く艶やかなブルースティールの針などは、典型的なブレゲのスタイル。かつて模造品対策としてアブラアン−ルイ・ブレゲがひそかに刻んだシークレットサインも、12を表すローマ数字の両脇にそっとあしらわれている。
かつて王妃たちが愛した格調高いスタイルを現代によみがえらせた「クラシック」コレクションは、流行に左右されないエターナルなデザインの決定版。トータル88個のダイヤモンドが輝くこのモデルは、どこまでも端正な佇まい。どんなシーンで身に着けても決して引けを取らない美しさを、このウォッチは宿している。
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA