時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、タサキのジュエリーの話をお届けします。
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TASAKI
Danger Trap
野生の植物の生命力と、パールの白い艶めきとが妖しくミックスされた最新作。アシメトリーなデザインなので、着ける指によって手元に動きが生まれ、プレイフルに楽しめる。色や光沢の完璧に揃ったパールをバランスよく配置したデザインにこだわりあり。リング「デインジャー トラップ」(YG×あこや真珠)¥341,000/タサキ
オーガニックな真珠と鋭いトゲ、
その出会いから生まれた危険な魅力。
タクーン・パニクガルが手がけたタサキのアイコン「デインジャー」は、不思議な魅力がある食虫植物や、植物の持つ神秘的なフォルムの美しさにインスパイアされたシリーズ。エッジーな感覚でパールをデザインし、高い人気をキープし続けてきたジュエリーだ。話題の最新作のひとつは「デインジャー トラップ」。食虫植物が葉を広げ、艶めくパールをいまにも捕らえようとしている姿を表現したデザインは、パンキッシュでもあり妖艶でもある。
とびきり艶やかで美しいあこや真珠と、鋭いトゲモチーフとの意外な出会い。冠婚葬祭などのフォーマルなシーンで着けるもの、というイメージが強いパールジュエリーを、これほどまでに大胆に再構築してみせた手腕は、さすが真珠のオーソリティブランド。チャーム(お守り)としてのパワーも感じられる「デインジャー トラップ」のリングは、そっと忍び寄ってくる悪しきものを、煌めくゴールドのトゲモチーフですべてはじき返してくれそうだ。
けれど、チャームとしてのジュエリーならほかにもたくさんある。「デインジャー トラップ」は、それ自身がトラップになっているというのが見逃せないポイントだ。甘い匂いを放って虫たちを誘い、捕らえてしまう食虫植物。引き込まれたらもう逃れられない。そう、このリングは誘惑し、魅了するオーラのシンボルでもあるのだ。
心の奥底で密かに息づいている、ワイルドなパッション。ふだんは忘れかけていても、誰もが胸のうちに秘めている小さな炎。さりげなく惹きつけ、いつの間にか夢中にさせる危険なチャーム(魅力)を、この美しいリングは呼び覚ましてくれる。
個性豊かなジュエリーを生み出すタサキは、国立公園として知られる長崎県の九十九島などにあこや真珠の養殖場を所有。海の恵みを受け、環境の変化に気を配りながら、長い歳月をかけてあこや真珠を慈しみ育てている。「デインジャー トラップ」に使われているのは厳しく選別された上質なあこや真珠のみ。エレガンスの代名詞とでもいうべき真珠を惜しみなくあしらっているからこそ、洗練されたデンジャラスビューティが完成したのだ。
ちなみに、食虫植物が虫を養分とするようになったのは、厳しい荒れ地で生き抜くためなのだそう。環境に負けずに生き抜こうとする気迫で進化したという。もしも最近の自分にバイタリティが足りないと思えたら──このリングを眺めて元気をもらおう。オーガニックな真珠と鋭いトゲ、その出会いから生まれた危険な魅力。
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko