時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計の話をお届けします。
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VACHERON CONSTANTIN
ÉGÉRIE MOON PHASE
大人びたトープカラーがこのコレクションでは初めて登場。時計「エジェリー・ムーンフェイズ」(PG×ダイヤモンド×MOP、φ37mm、自動巻き、写真のサテンストラップのほか、アリゲーターストラップ、ラムスキンストラップが付属)¥5,148,000/ヴァシュロン・コンスタンタン
夜空の月をふと見上げたくなる、ロマンに満ちたムーンフェイズ。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、世界最古ともいわれるスイスのウォッチメゾン。創業は1755年。王妃マリー・アントワネットの誕生と同じ年といえば、その古さが実感できるだろう。
格式高い老舗から登場したレディスウォッチは「エジェリー・ムーンフェイズ」。ニュアンスのあるトープカラーでまとめたシックな顔立ちで、月の満ち欠けを表すムーンフェイズの機構を搭載。ストラップは自分で簡単に交換でき、サテンストラップのほか、ツヤのあるアリゲーターストラップ、キルティングをあしらったラムスキンストラップも付属している。その日のスタイルに合わせて自分らしくウォッチを楽しむことができるように、心配りを利かせたデザインになっているのがうれしい。
ダイヤモンドに囲まれた小窓の中に顔をのぞかせているのは、艶やかなゴールドのフルムーン。月は29日半の周期で雲の下に姿を隠し、またしずしずと現れ、やがて雲を抜けて、満月となった姿を再び見せる。ムーンフェイズとは、天空に輝く月の満ち欠けを教えてくれるファンタスティックな機構なのだ。
月は海の潮汐と深く繋がっていて、昔の船乗りたちにとって、満月や新月の周期を知ることはとても重要だった。また、満月を過ぎると月の出は日に日に遅くなっていくので、月明かりを頼りに暮らしていた時代には、月の位相はやはり大切だったに違いない。
そんないにしえの名残ともいえるムーンフェイズ。このモデルでは、1時と2時の間のオフセンターな位置に小窓とリュウズが配されているのが特徴。ヴァシュロン・コンスタンタンがかつて貴婦人のために仕立てたポケットウォッチにも、こうしたアシメトリーなレイアウトの文字盤があったのだという。リュウズにあしらわれているのは、上質なムーンストーン。月にちなんだ宝石とは、何とも魅力的。月を隠す雲はマザーオブパール(真珠母貝)の象嵌細工でできているけれど、古来パールも月と深く関係した宝石だと考えられてきたので、ムーンフェイズの小窓を飾るのにふさわしい素材なのだ。
コレクション名の「エジェリー」とは、芸術家たちに霊感を与えた古代のミューズたちのことなのだそう。このフェミニンなウォッチを身に着けて輝く月をそっと見上げれば、星降る夜の空からハッピーなインスピレーションが降ってくるかもしれない。
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko