時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーの話をお届けします。
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VAN CLEEF & ARPELS
LUCKY ANIMALS
クリップ「ラッキー アニマルズ」上から、フロッグ(YG×マラカイト×MOP×オニキス)、フォックス(YG×カーネリアン×MOP×オニキス)、ビション フリーゼ(YG×MOP×オニキス)各¥1,161,600/以上ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
心がふんわり温かくなる、優しくチャーミングな仲間たち。
いまにも跳びはねそうに元気な「フロッグ」、ふかふかの尻尾を丸めた「フォックス」、人懐っこい「ビション フリーゼ」。ヴァン クリーフ&アーペルのコレクション「ラッキー アニマルズ」の人気者たちは、愛嬌たっぷり。
動物たちの姿を生き生きと描き出したクリップがバリエーション豊かに揃うこのコレクションでは、艶やかなマザーオブパールや、オーナメンタルストーンと呼ばれる宝石をフィーチャー。オーナメンタルストーンとは、古くからモザイク画やカメオ彫刻などに使われてきた素材のこと。メゾンの専属宝石鑑定士は「フロッグ」のために縞模様の美しいマラカイトを、また「フォックス」のために半透明のカーネリアンを厳選。そして「ビション フリーゼ」のためには、くもりのない繊細なニュアンスのグレーやホワイトのマザーオブパールをチョイス。動物たちに優しく穏やかな気品を添えているのは、こうした質の高い素材だ。
ヴァン クリーフ&アーペルは1954年にも動物をモチーフにした名作「ラ ブティック」コレクションを発表している。一点ものの豪奢なハイジュエリーとは異なり、気負わずデイリーに楽しめるクリップを揃えた「ラ ブティック」は、たちまちパリジェンヌのハートを射止めてしまったという。デザインのインスピレーション源は、当時流行していたアメリカのファンタジックなアニメーション映画。世界に暗い影を落とした戦争が終結し、華やかで女性らしいファッションが広がりを見せる中で「ラ ブティック」の楽しげなクリップは、大きなトレンドとなっていったのだ。
かつて人気を誇った「ラ ブティック」をモダンな感覚で生まれ変わらせたコレクション、それが「ラッキー アニマルズ」。デザインに合わせてオーナメンタルストーンを精密に研磨したり、モチーフの輪郭を描くゴールドビーズを手作業で磨いたりと、すみずみにまで熟練の職人技が行き渡っている。特徴的なゴールドビーズの縁取りのおかげで、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーであることは一目瞭然。オニキスでできたつぶらな黒い瞳は、まるでこちらをじっと見つめているかのように感じられるから不思議だ。
キュートで心優しい「ラッキー アニマルズ」の仲間たち。ひとつ胸元に着ければ、その名のとおり、幸運を招いてくれるかも。いつも一緒に寄り添って、幸せを分かち合って生きていきたい。
*「フィガロジャポン」2023年5月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko