時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、メレリオのジュエリーの話をお届けします。
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MELLERIO
JARDIN SUSPENDUS
17世紀から続くメゾンの歴史を、 モダンなブレスレットに集約。
パリでも指折りの老舗ジュエラー、メレリオからグラマラスな新作ブレスレット「ジャルダン サスペンダス」が登場。 17世紀から18世紀にかけての庭園をイメージしたデザインで、2本のチェーンの間に並ぶスクエアなチャームは、それぞれ取り外し可能。たくさん付けたり、お気に入りのデザインを選んで付けたりと、自分らしくアレンジできるのがうれしい。ミステリアスな空中庭園や幾何学を生かしたフランス式庭園にオマージュを捧げたチャームは、職人技を凝らした透かし細工で仕立てられているのもポイントだ。
モダンでスタイリッシュなのに、このブレスレットがどこかアンティークなムードを醸し出しているのは、1613年創業のメレリオならではのこと。興味深いエピソードを満載したこのメゾンの始まりは、フランス国王ルイ13世がまだ幼かった頃に遡る。イタリア北部、ロンバルディア地方にルーツを持つメレリオ家は、当時パリで宝石や銀細工、小間物を扱う小さな店を出していた。
ある日、煙突掃除をしていた少年が、煙突の中で何やら不穏なひそひそ話をしている男たちの話を漏れ聞いてしまう。煙突にもぐって煤を落とす掃除は、サヴォワ地方から出稼ぎに来た子どもたちの仕事だったのだ。煙突の中で聞いた密談の内容は、ルイ13世の暗殺計画。同じイタリア系のメレリオ家にも出入りしていた少年は、その話をメレリオに伝え、当主はそれを国王の母マリー・ドゥ・メディシスに注進。幼君暗殺を未然に防いだ褒美として、イタリア移民であるためさまざまな制約を受けていたメレリオ家に、フランス全土で宝飾品を商う異例の勅許状を与えて保護したという。
パリのラペ通りにある本店のアーカイブには、創業時の勅許状や マリー・アントワネットのブレスレット、マハラジャの妃のヘッドジュエリーなど、貴重な品々がいまも残る。古い顧客台帳に書き込まれているのは、ヨーロッパ中の王侯貴族たちの名前。そうした稀有な背景がメゾンのジュエリーに息づいているのだ。
現在のメレリオを率いるのは、14代目当主ロール=イザベル・メレリオ。4世紀を超えるメゾンの歴史をリスペクトしながらも、コンテンポラリーな感覚をデザインに巧みに落とし込む。この新作ブレスレットも、いにしえの宝物のような存在感がありながらも、身に着けた時の印象はとてもモダンで軽やか。いま、メレリオが生み出すのは、現代のプリンセスたちのためのジュエリーなのだ。
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko