時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、フレッドのジュエリーの話をお届けします。
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FRED
PRETTY WOMAN IN MY HEART
ハートの中にハートが煌めく、映画にちなんだスイートハート。
パリのジュエラー、フレッドのアイコニックな「プリティウーマン」コレクションに新作ネックレスが仲間入り。ピンクゴールドとダイヤモンドが描き出すハートのアウトラインに、甘い色味のハートシェイプピンクサファイアがひと粒。軽やかさを感じさせるデザインが、胸元のチャーミングなアクセントになってくれる。
スイートな表情のこのコレクションは、1990年代に大ヒットした映画『プリティ・ウーマン』にちなんで誕生した。初めてのオペラ観劇に出かけるために、ジュリア・ロバーツが演じる主人公ヴィヴィアンがドレスアップするシーン。リチャード・ギアが扮する実業家エドワードが宝石箱を開けると、中に入っていたのは25万ドルの価値がある豪華なネックレス。
ヴィヴィアンが恐る恐る触れようとすると、エドワードは素早く宝石箱のフタを閉めて彼女の手をはさむ。映画『ローマの休日』の真実の口のシーンにも似た、微笑ましいふたりの様子が記憶に残っている人も多いはず。
あまりにも印象的だったこのシーンの鍵となったネックレスは、赤いハートシェイプのジェムストーンをダイヤモンドで取り囲んだデザイン。フレッドが製作したハイジュエリーだ。
実は『プリティ・ウーマン』の製作中、ビバリーヒルズにあるフレッドのブティックに撮影スタッフが突然訪れ、オペラのシーンで使うハイジュエリーを貸してほしいと頼んだのだそう。メゾンは快く承諾。当時は、このネックレスが愛の象徴としてロマンティックに語り継がれるなど想像もしていなかったという。
現代の「プリティウーマン」コレクションは、スクリーンに映し出されたあの伝説的なネックレスをモダナイズし、デイリーにも楽しめるシンプルなジュエリーとしてアレンジしたもの。新作「プリティウーマン イン マイ ハート」ネックレスは、ハートの中のハートをコンセプトとしたデザインで、ハートシェイプのピンクサファイアは、心にひそむ本当に大切な気持ちをシンボライズしているかのよう。
メゾンの創業者フレッド・サミュエルが自らのジュエリーのエスプリとしていたのは「生きる喜び」。さりげなく、それでいながら存在感のあるこのネックレスは、胸の内に大切なものを秘めて生きる女性たちをポジティブに励ましてくれるような存在だ。
*「フィガロジャポン」2024年8月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko