安田章大主演の舞台『リボルバー』、脚本の原田マハ&衣装の伊藤ハンスが語る創造の過程。

インタビュー 2021.07.16

作家の原田マハが原作・脚本を手がける舞台『リボルバー 〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜』が、2021年7月10日、PARCO劇場にて初日を迎えた。演出は映画監督として名高い行定勲が担当し、主演には関ジャニ∞の安田章大と、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。そんな期待作の衣装をクリエイトしたのは、パリ発のファッションブランド「エコール・ド・キュリオジテ」のクリエイティブ・ディレクターである伊藤ハンスだ。今回、どのような経緯でこのコラボレーションが実現したのか? 気になるいきさつや、クリエイターとして舞台に込めた想いを聞いた。

“生”の言葉の鮮度と、服が投影する生きざまの共鳴。

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舞台『リボルバー』で主役のゴッホを演じる安田章大のメインビジュアル。

――今作はマハさんが初めて脚本を手がけた舞台であり、ハンスさんにとっても初の舞台衣装のお仕事となったそうですね。

原田 はい。PARCO劇場のプロデューサーから「戯曲の台本を書いてみませんか」という打診があって、ぜひやってみたいとお引き受けしました。ですが、演劇の台本執筆は初めてのこと。まずは原作小説を……と思い、書き上げたのが小説『リボルバー』です。過去作の『たゆたえども沈まず』でもテーマとして取り上げたことのあるふたりの画家、フィンセント・ファン・ゴッホとポール・ゴーギャンの関係性にもっと深く踏み込みたいと思い、覚悟を決めて取り組みました。

演劇の舞台は、ふたりの画家が生きた19世紀後半。衣装も雰囲気のあるものにしたいと考え、ハンスに衣装を担当してもらうことを私からPARCO劇場側に提案しました。パリで長らくファッションブランドを手がけていることや、過去にハンスが19世紀の服飾文化を研究していたことなどもあって、プロデューサーも“舞台にパリの風を吹かせてほしい”と同意してくれ、抜擢が決まったんです。

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左から、東野絢香、ゴーギャンを演じる池内博之。撮影:宮川舞子

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――ハンスさんがクリエイティブ・ディレクターを務める「エコール・ド・キュリオジテ」も、“物語のある服”をテーマに、マハさんの掌編小説をもとにしたコレクションを毎シーズン発表されています。いつものコレクションと今回の舞台衣装とで、作り方に大きな相違はありましたか?

伊藤 確かに、“物語を基によいものを作る”という点では共通していますね。ですが、「エコール~」ではより多くの人のスタイルや生活にしっくりとなじむよう、服づくりに“余韻”を持たせるのに対し、舞台衣装では“どれだけ本物に見せられるか”が大きなポイントになったと感じています。

ファッションブランドにおける服づくりは、不特定多数の人の人生と打ち解け、非常によい調和を生み出すことがひとつのゴールだと思っていて。なので、デザインには僕なりのフィルターをかけすぎず、引き算することを心がけているんです。究極のおしゃれってすごくシンプルで、シックな中に粋な洒脱が生まれると考えているから。

一方で舞台の『リボルバー』は、19世紀末の貧しかった画家の生きざまや、エモーショナルな部分を主題とした作品。マハさんの脚本でもキャラクターがしっかり描かれ、行定さんによる演出プランの肉づけもありました。さらに、個性をむき出しにした生身の役者さんたちの強いオーラもあいまって、衣装もどんどん輪郭を濃くしていった部分があったかなと思いますね。

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左から、細田善彦、北乃きい、相島一之。撮影:宮川舞子 

――行定さんから、衣装についてはどんなリクエストがありましたか?

伊藤 最初は詳細な指示などがそれほどなく、かなり自由にやらせていただきました。いくつかオプションを提案すると、そこから徐々にご自身の想定に近いものに寄せていってくださって。でも通りいっぺんではなく、たとえボタンひとつであっても非常に注意深く見てくださっていると感じました。何度もやり直したものもあれば、反対にすぐ最終決定までいたったピースも。こだわりは並大抵ではなく、行定さんは”とても物静かな怪物”だと感じましたね(笑)。

――途方もない数の話し合いを重ねてこられたのでしょうね。実際に舞台稽古をご覧になってみて、いかがでしたか?

伊藤 僕と行定さんの間で衣装に関するラリーを数えきれないほど続けてきたように、脚本に関してはマハさんと行定さんの間でキャッチボールが重ねられ……何度もみんなでやりとりを交わし、ようやく形になったことがとても感慨深かったです。

原田 これまで自分の書いた小説の映像化は何度か経験してきましたが、脚本を手がけた舞台はまったく違うものだと感じました。“生”の言葉が演じられると、やはり鮮度が違うなと。キュレーターとして展覧会を作っている感覚のほうに近いかもしれません。ひとつの新たな芸術が生まれる場にライブで関わっている実感があって、ヘアメイクや衣装とのバランスを見るのもとても楽しいです。

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――コロナ禍においても、今回の舞台の会場となるPARCO劇場は感染症対策に考慮しながら演劇の灯を絶やさぬスタンスを貫いていますね。そんな姿勢について、舞台の準備に取り組む中で何か実感されたことはありましたか?

原田 公演の日が近づくにつれ「これ、本当に舞台になるんだ!」という実感が増してきていて。本当にここまで、奇跡の連続だったなと思いますね。失って初めて気づくものだといいますが、表現活動の場が持てることのありがたさを改めて噛みしめているところです。緊張感もありますが、やはり喜びのほうが大きいです。 

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舞台の原作となった小説『リボルバー』(幻冬舎刊)。とても贅沢なつくりで、ゴッホが描いた「ひまわり」のカバーを外すと、ゴーギャンが描いた「ひまわり」が出てくる。

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原田マハ
キュレーターとして活躍したのち、小説家やエッセイストとして執筆活動を開始。2005年に『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞したことを皮切りに、数々の文学賞受賞作や映像化作品で知られるように。美術への深い造詣を生かし、「楽園のカンヴァス」、「たゆたえども沈まず」など、アートに材を得た内容の小説を数多く生み出している。近作に『リボルバー』(幻冬舎刊)、『キネマの神様 ディレクターズ・カット』(文藝春秋刊)など。写真で纏っているのは、「エコール・ド・キュリオジテ」のもの。©ZIGEN

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伊藤ハンス
東京都出身、パリ在住。日本の大学で映画を専攻し、その後パリに拠点を移して服飾の道へ。パリの服飾専門校を卒業後、大手メゾンなどで経験を積み、2015年に「エコール・ド・キュリオジテ」をローンチ。2017年、原田マハとともにブランド設立、原田が書き下ろしたオリジナルストーリーを基に毎シーズンコレクションの発表を重ねる。©ZIGEN

『リボルバー 〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜』
期間:7/10(土)〜 8/1(日)
会場:PARCO劇場
料金:¥12,000(税込み・全席指定)
●問い合わせ先:
パルコステージ
tel:03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp

期間:8/6(金)~ 8/15(日)
会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
料金:S席¥12,000 A席¥11,000(税込み・全席指定)
●問い合わせ先:
キョードーインフォメーション
tel:0570-200-888(11時~16時、日祝休業)
●問い合わせ先:
エコール・ド・キュリオジテ
www.ecoledecuriosites.com

text: Misaki Yamashita

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