愛しい髪とのポジティブな関係をつくりたい。
ディアナ・コーエン|企業家・クラウンアフェアCEO
「もしビジネス案があるなら、小さなことからでもいい。とにかくスタートしてみて」と話すのは、クラウンアフェアCEOのディアナ・コーエン。ブランドマーケティングの会社を立ち上げ、若き経営者として活躍してきたが、幼い頃からのヘアケアフェチが嵩じて、昨年クラウンアフェアを創業。髪の手入れ方法や自ら試した市販商品、クチコミなど、ディアナは長年ヘアケアの情報をまとめてきた。趣味の領域だったが、美しい髪を持つ彼女のところへは悩みを抱える友人からの相談が絶えず、それが創業を後押ししたと言う。
「自分の髪を理解せずに市場にあり余る商品を使用し、ストレスを抱えている人が多いことに愕然としました。ヘアケアとの新しい付き合い方を提案していけないかと思ったのです」
髪を愛することは自分を愛すること。お気に入りの道具を揃えれば、自然とヘアケアが習慣づいてくるはず。そう考えたディアナは、イタリア、スイス、韓国、日本など、さまざまな国のヘアケアを知る旅に出て、昔から根づく職人仕事や素材を探し歩いた。そして、これまで蓄積してきた経験や知識も駆使し、オリジナルのブラシ、クシ、ヘアオイル、ドライシャンプーなどの開発にいたった。
「数え切れないほどの商品がある市場で、ヘアケア習慣そのものに着眼するのがクラウンアフェア。私自身が愛用したい商品だけを選んだら、シンプルで優しく効果的なラインナップになりました」
ECサイトには厳選された商品が並ぶが、その中から、自分の髪に合わせてアイテムを選んでいくプロセスには安心感がある。
「まずはブラシを選んで、日々の習慣を身に付けてほしい。ヘアオイルは椿オイルを使用しています。出合いは、2年前に日本で経験したヘッドスパ。これほど見事に保湿してくれるにもかかわらず、重くないオイルは初めてで、何日間も髪を繰り返し触りました」
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コロナ禍で自分と向き合う時間は、アメリカでも美容の概念を再考する機会となっている。多くの人が、外見ではなく内側からケアする考えにシフトし始めたことは素晴らしいことだと話す。
「丁寧なヘアケアは身体と心をケアすることになります。髪に何か異常を感じたら、生活全体をスローダウンしてみてほしい」
クラウンアフェアでは、利益の一部をシードリングと名づけたメンターシップ活動にあてている。駆け出しの女性起業家にベテラン起業家をつけて、8週間支援する取り組みだ。プロのサポートが起業家の成功にどれほど不可欠か、痛感したからだと言う。多くの人の未来ため、自身の経験を生かしたサポートも続けていく予定だ。
ベンチャー企業で得たECやD2Cビジネスの経験から、ブランドマーケティングエージェンシー、Levitateを創設。若手起業家としてキャリアを積み、ヘアケアのコミュニティをつくりたいと、2020年1月にクラウンアフェアを創業。
*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
text : Chinami Inaishi