クリエイターの言葉 禅庭園の砂庭に絵を描き出したのは...ロボット!?

インタビュー 2021.09.03

伝統×テクノロジーのアートは、東京にふさわしい。

ジェイソン・ブルージュ|アーティスト、デザイナー 

ロンドンを拠点に世界で活躍するアーティスト集団、ジェイソン・ブルージュ・スタジオによる日本初のインスタレーションが上野恩賜公園で公開されている。このアート作品は、庭師に見立てた産業用ロボットが、約150ものデジタルで可視化したアスリートたちの動きを禅庭園の砂利の上に描き出すというもの。オリンピックとパラリンピックをさらに盛り上げる、前代未聞のロボティックアート『ザ・コンスタント・ガーデナーズ』だ。このアートプロジェクトのキーマンであるジェイソン・ブルージュに話を聞いた。

「アスリートたちはオリンピックやパラリンピックでの活躍を夢見て、長年、努力を重ね、準備をして、それぞれの技に磨きをかけてきた。その精度の高い動きや寸分の狂いなく繰り広げられるパフォーマンスと、ロボットたちが静かに描く緻密な文様が作り出す禅庭は、まさにパラレルワールド。ともに、繊細な技巧、技術、さらには研ぎ澄まされた静寂で構成されている。この作品は、尊敬するアスリートたちに僕らが捧げるオマージュです」

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ジェイソン・ブルージュ・スタジオが手がけるアート、テクノロジー、スポーツを融合させたインスタレーション『ザ・コンスタント・ガーデナーズ』は、「TokyoTokyoFESTIVALスペシャル13」のひとつとして9月5日まで上野恩賜公園内の竹の台広場で公開されている。人間とロボット工学、さらにはアーティスティックなクリエイションが織りなす新感覚の異空間を体験することができる。

日本が誇る伝統的な禅庭園を、最新テクノロジーを駆使して表現する。伝統とテクノロジーの両面に光を当てるプロジェクトだからこそ、東京から発信するのがふさわしいという。大学では建築を学んだジェイソンだが、建築物や街の景色にテクノロジーを取り入れたインタラクティブデザインに興味を持ち、アートの世界に足を踏み入れた。そして2002年、ジェイソン・ブルージュ・スタジオを設立。現在は、世界中からの依頼を受けてインタラクティブデザインの先駆者として活躍する。建築家、デザイナーにエンジニア、プログラマーと、多彩な才能が集まったジェイソン・ブルージュ・スタジオだからこそ、普段アートと関係ない用途で使われる産業用ロボットを用いた今回のアートインスタレーションを可能にした。

「いまはコロナ禍でリモートワークがメインだけど、僕らのスタジオではさまざまな人々が働いている。スケッチする人、パソコンで技術図面を描く人、そしてひたすらプログラミングをする人とかね。僕は、そんな皆の姿を見ているのが好きです。得意分野が違うからこそ、一緒に仕事をすることで新しい道が見えることもある。今回の上野恩賜公園での作品は、長引くコロナ禍で、実際に見てもらうことは難しいかもしれません。でもリアリティだけでなく、体感を共有する新しい方法を模索する好機だとも思う。動画や発信のやり方はいくつもあって、テクノロジーがあれば、いまは世界のどこにいても追体験することができる。素晴らしいことですね」

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ジェイソン・ブルージュ/JASON BRUGES
1972年生まれ。オックスフォード・ブルックス大学とバートレット建築学校で建築を学び、世界有数の建築設計会社に就職。その後、インタラクションデザイナーの実績を積み、2002年にジェイソン・ブルージュ・スタジオを設立。

*「フィガロジャポン」2021年10月号より抜粋

text: Tomoko Kawakami photography: Michi Nakano

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