カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール賞を受賞した『ディーパンの闘い』で知られるフランスのジャック・オディアール。フィルムノワールの巨匠としても知られる彼の最新作は、なんとパリの13区を舞台にしたミレニアル世代4人の男女の恋愛模様だ。
コールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人のエミリーのもとに、ルームシェアを希望するアフリカ系フランス人の高校教師カミーユが訪れる。ふたりはすぐにセックスする仲になるものの、ルームメイト以上の関係になることはない。同じ頃、法律を学ぶためソルボンヌ大学に復学したノラは、年下のクラスメイトたちに溶け込めずにいた。金髪のウィッグをかぶり、学生の企画するパーティに参加した夜をきっかけに、元ポルノスターの“アンバー・スウィート”と勘違いされ、学内中の冷やかしの対象となってしまう。大学を追われたノラは、教師を辞めて一時的に不動産会社に勤めるカミーユの同僚となる。3人の魅力的な女性とひとりの男性が織りなす群像劇を通して、圧倒的なモノクロ映像で描き出された現代のパリとは? 70歳を越えて新境地を開いたオディアール監督にインタビュー。
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――本作は、米国のグラフィックノベル作家エイドリアン・トミネの3つの短編(「アンバー・スウィート」「キリング・アンド・ダイイング」「バカンスはハワイへ」)を原作とする、女性3人、男性ひとりの青春群像劇ですが、なぜ舞台をパリ13区に設定したのでしょうか? 主要キャラクターのひとり、カミーユを演じたマキタ・サンバは、パリ育ちにも関わらず、13区についてこの映画に関わるまでほとんど知らなかったとインタビューで語っていましたが、あなたにとって13区とは?
フランス人はパリの地理についてまったく知らない、とよく言われるんですよ。パリジャンであっても、自分が住んでいる区以外のエリア、もっといえば自分の住んでいるエリアについてさえもあまり知っている人はいないんじゃないかなと思います。私個人としては、13区に13年間住んだことがあり、パリの中でもとても好きなエリアなんです。13区は「人種のるつぼ」ともいえ、文化的にも多様性のあるいきいきとした街です。ふたつの大学があり、近代的な建物も増えました。パリの中で唯一、ここ15年で再開発が進んだ地域ともいえるでしょう。
――13年間も住んでいたのですね!
居心地がよかったし、家賃も安かったんですよ。
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――脚本には『燃ゆる女の肖像』など監督としても成功しているセリーヌ・シアマとレミ・ミシウスも参加していますが、どうして3人で共同執筆することになったのですか? また、どのように作業を進めていったのでしょうか。
この物語は3つの短編がベースになっていますが、脚本を書いた時期はふたつに別れているんです。まず私は最初にセリーヌ・シアマに連絡して、ふたりでふたつの短編を元に脚本を書き始めました。そうしているうちに、私はTVの仕事にとりかからなければならなくなり、それが終わって戻ってきたら、今度はセリーヌのほうが自分の作品に入ってしまいました。なので、私はレア・ミシウスに連絡して、すでに進めていたふたつの短編をベースにした脚本の上に3つめの短編を加えて、さらに脚本を発展させていったんです。
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――この作品にはエミリー、ノラ、アンバー・スウィートという強い女性キャラクターが3人登場しますが、キャラクターの構築に関しては、ふたりの女性脚本家が主に書かれたのでしょうか。ふたりから受けた影響、気付かされたことはありますか?
ふたつの側面からお答えしたいと思います。テーマに限らず、私は女性の脚本家と一緒に仕事をしたいと思っています。なぜならこの15年くらい、フランスでは女性の脚本家が目覚ましい活躍をしているからです。それ以前は男性脚本家が多かったのですが、最近は圧倒的に力のある女性脚本家が増えた。なので、そういう人たちと仕事をしたいと思いました。
また、この映画は女性の視点で描かれるいうこともあり、女性の脚本家が合っていると思いました。セリーヌとレアと一緒に仕事をしたからこそ、この作品は完成できた。もし、以前から私が仕事をしてきたような男性の脚本家と一緒に書いていたら、まったく違った作品になっていたと思います。
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――男性キャラクターに関してはどうでしょうか。最近は有害な男性性が非難の対象になっていますが、マキタ・サンバ演じるカミーユというキャラクターを構築する上で、このような状況はどのような影響を与えましたか。
カミーユという人物は、“有害な男性性”というよりは、どちらかというと典型的なダンディズムというか、女性を魅了して誘惑するような自身過剰な男なんです。一緒にいたら感じの悪い男というか……。カミーユは教師という職業柄、文化や教養のある自分独自の言葉を持っている。ある意味、自信満々な男です。私はどこにでもいるような、そんな平凡な男を描こうとしたんです。
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――本作を作る上で、ヌーベルヴァーグの巨匠エリック・ロメールの『モード家の一夜』にインスパイアされたそうですね。
ロメールの『モード家の一夜』は、14歳の時に初めて観ました。あまりにも印象的でインパクトが強かったので、それから1週間以内に4回も観てしまいました。若い男女が夜通し、人生や宗教やパスカルの哲学などについて語り合う。最後セックスをするのかと思いきや、すべてが語り尽くされてセックスはしないまま終わります。大人の男女はどういった振る舞いをするのか、女性がどういった服装をし、どのように魅惑を振りまくのか、といったことについて、私が初めて学んだ映画です。この映画のテーマでもある「本当の愛の会話は成り立つのか」という答えを導き出すための元になった作品ですが、一方で、私の映画人生のスターティングポイントでもあります。
●監督/ジャック・オディアール
●脚本/ジャック・オディアール、セリーヌ・シアマ、レア・ミシウス
●出演/ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・エルメラン、ジェニー・べスほか
●2021年、フランス映画
●105分
●配給/ロングライド
●4/22(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
©PAGE 114-France 2 Cinéma
longride.jp/paris13/
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映画『パリ13区』試写&特別トークショーの参加者を募集!
映画『パリ13区』の試写と、フィガロジャポン読者限定のトークイベントを4月15日(金)に開催します。トークイベントの登壇者は、カンヌ映画祭の取材経験も豊富な映画ジャーナリスト・立田敦子さん。また、フィガロジャポンパリ支局長の髙田昌枝をリモートで繋ぎ、現地パリ13区の特長や、今回の作品について読者とのトークセッションを行います。記事下の注意事項をお読みのうえ、ぜひご応募ください。
【開催日時】2022年4月15日(金)18時開場 18時30分上映開始~20時15分上映終了予定
トークイベント20時20分~21時終了予定
【開催場所】神楽座(飯田橋)
東京都千代田区富士見2丁目13-12 KADOKAWA富士見ビル1F
【定員】52名様 ※1名様または2名様での参加が選べます。ホール定員116名のところ、新型コロナ感染対策のため、空間を空けてお座りいただきます。
【参加条件】フィガロジャポンのメンバーシップ「メゾンフィガロ」に会員登録をされた方限定。詳しくはこちら。
【お申込み方法】ページ下の「申込みはこちら」からご応募ください。
【応募締め切り】2022年3月30日(水)23時59分
【注意事項】
●当選者の発表は厳正なる抽選のうえ、メールによる当選通知の配信をもってかえさせていただきます。お客様の連絡先等に不備があり連絡不能な場合や、ご返信期限までに当選に対するご返信が確認できない場合は、当選無効となり弊社は一切の責任を負いません。弊社メールが迷惑メールに振り分けられてしまいご連絡いただけない場合も、同様に当選無効となります。
●当選通知メールは「@id.cccmh.jp」ドメインよりお送りいたします。メールを受信できるよう、あらかじめ設定をご確認ください。
●落選の場合、ご連絡はいたしません。
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●試写会での座席指定はできませんので予めご了承ください。
●問い合わせ先:
CCCメディアハウス マーケティング部
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text: Atsuko Tatsuta