演じることは、私にとってセラピー。
リナ・クードリ|俳優
ティモシー・シャラメと革命家を演じたウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』、カンヌ国際映画祭で高評を得た『ガガーリン』に続く新作『オートクチュール』。今年日本公開される映画だけでも出演3作目となるリナ・クードリは、いま最も注目の若手俳優だ。
アルジェリアからの移民で、パリ在住の29歳。『オートクチュール』では、引退間近の縫製師と出会ったことで、職人技の極地オートクチュールの世界に飛び込む主人公ジャドを演じている。
「子どものような純真さのあるジャドが好きです。庇護者のように、周りの人の世話を焼くところとか。私とは性格は違いますが、共感する部分もあります。私も俳優という仕事に就くまで苦労したから。ジャーナリストの父が殺人の脅迫を受けたことから、90年代に両親とともにフランスに移住してきました。フランスは自由、平等、博愛の国ですが、平等は尊重されていない部分もある。私のような出自では選べる職業は限定されていて、俳優になるなんて非現実的なことだったんです。でも、なんとか俳優になることができた。どんなに困難なことでも叶うこともあるし、希望もある。フランスはエリート校でも公立校は学費無料だし、チャンスを掴むために努力するのは大事なことです」

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ジャドは、名俳優ナタリー・バイ演じる老舗ラグジュアリーブランドの責任者から縫製の技術を学んで、自らの才能を開花させていく。世代交代における技術の継承も、この映画の隠れたテーマだ。
「ディオールのアトリエで、実際に多くの時間を過ごしました。本物の作業を目の前で観察することができたのは、とても勉強になりましたね。ナタリー・バイとの出会いも本当に幸運でした。演技だけでなく仕事自体に対する姿勢、そして、自分ひとりですべてができるわけではない、というアドバイスももらいました。ジャドは天職を見つけたことで新しい人生を踏み出しますが、私と同じような若い世代にも自分の道を見いだしてほしいですね」
演技という技術を通してキャリアを順調に開拓しつつあるリナだが、自身にとって演じることはセラピーだともいう。
「技術や感情面でさまざまな経験をすることは、とても良い効果がある。この仕事が私を救ってくれているといってもいいくらいです。映画は実人生を反映します。私も俳優として役を演じるにあたって、真実味を与えるために、自分の人生をちゃんと生きなければいけない。全力で生き続けることこそが大事だと思います」
1992年、アルジェリア生まれ。2歳の時に、家族でパリに移住。『Les Bienheureux』(原題、2017年)でヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門の最優秀女優賞受賞。同作品でセザール賞若手女優賞を受賞。
*「フィガロジャポン」2022年4月号より抜粋
text: Atsuko Tatsuta