絶大な人気を誇る個性派俳優マ・ドンソク、『犯罪都市』で開花させた夢を語る。

インタビュー 2022.11.03

『グッド・バッド・ウィアード』(08年)や『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16年)などで知られる韓国の個性派俳優マ・ドンソク。2021年にはマーベル映画『エターナルズ』でハリウッド進出し、世界的なスターとなった。自らが脚本・製作・主演を務める大ヒット作『犯罪都市 THE ROUNDUP』の公開に際して、その熱い想いと壮大な構想を語ってくれた。

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Ma Dong-seok/韓国で生まれ、18歳で家族とアメリカへ移住。94年にアメリカでミュージカル俳優としてデビューし、2000年台からは韓国で本格的に俳優活動を開始する。韓国で人気を博したドラマ『H.I.T. -女性特別捜査官-』(07年)のナム・ソンシク刑事役で頭角を表し、『グッド・バッド・ウィアード』(08年)や『生き残るための3つの取引』(10年)などのヒット作に出演。12年に公開されたホラー『隣人-The Neighbors-』で注目を集め、韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる百想芸術大賞 (第49回)で男子助演賞を受賞する。16年の『新感染 ファイナル・エクスプレス』では助演ながら強烈な存在感を示し、韓国国内のみならず世界中にその名が知れ渡り、2017年自身の企画でもある『犯罪都市』で人気は不動のものに。その後は『守護教師』(18年)や『悪人伝』(19年)など主演作多数。21年にはマーベル・シネマティック・ユニバースの第26作目『エターナルズ』にドン・リー名義で出演し、名実ともに韓国を代表する俳優となった。

クムチョン署の強力犯係に所属する怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)らは、国外逃亡した容疑者を引き取るためベトナムへ行くよう命じられる。ソクトとチョン・イルマン班長は容疑者から怪しい気配を感じ取り、秘密裏に捜査に乗り出す。やがて、残忍な凶悪犯罪を重ねるカン・ヘサン(ソン・ソック)の存在が浮上。ソクトらは韓国とベトナムを行き来しながらヘサンを追い詰めていくが……。

――前作の『犯罪都市』は、韓国で興行成績歴代の3位という大ヒットを記録し、続編がすぐに決まりましたね。ヒット作の続編はプレッシャーもあると思いますが、『犯罪都市 THE ROUNDUP』におけるさらに広がりを持たせるためのコンセプトとはどんなものでしたか?

実は子どもの頃の夢が警察官になることだったので、刑事役に常に関心がありました。私の周りには親しい刑事が何人かいますし。同時に、シリーズものを作りたいという夢も持っていました。ということで、8作品から10作品くらいの刑事モノを作りたいという構想の元に始まったのが『犯罪都市』(前作)です。当たるかどうかはわからないけど、とにかくやってみようと企画を立ち上げ、自分で主演と製作を務めました。幸い、非常によい興行成績を上げることができ、シリーズものにすることが出来ました。

『犯罪都市 THE ROUNDUP』も、コロナのパンデミックの時期に、これほど大ヒットするとは思ってもいませんでした。運よく大勢の方に観ていただけました。おっしゃる通り、1作目が大成功を収めたので、続編を作ることに対してはプレッシャーを感じていましたが、もともと私自身は、常に新しい作品を作らなければやる意味がないと思っています。シリーズもので大切なことは、前作をただ継承してはいけないということ。つまり、続編ではアクションもアップグレードさせ、ストーリーやキャラクターも進化させなければ楽しんでもらえない。なので、前作とは別もの、続編とは言っても独立した作品だという想いで2作目も作りましたし、いま作っている3作目も、やはり構成もストーリーも新鮮なものになるはずです。

――それを踏まえて、『犯罪都市 THE ROUNDUP』の見せ場はどこですか?

まずは、アップグレードした痛快なアクションです。ストレスが解消できるような痛快なアクション。そして、ストーリーも非常に痛快なものになっています。キャラクターに関しては、まるでその場にいて呼吸をしているような、息遣いが聞こえてくるような、ライブ感のある楽しいキャラクターを作ろうと思って、監督や俳優たちは努力しました。それから、この作品は笑えるポイントがたくさんあるんです。韓国語から他の言語に翻訳されると、少しニュアンスが変わってしまうかもしれませんが、その言葉の部分も楽しんで欲しいと思います。

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――このシリーズの大きな魅力のひとつは、あなたが演じるマ・ソクトという刑事のキャラクターです。銃などの武器を使わず素手でガンガン戦う、あるようでなかった人物像が新しく、大変おもしろいと思いました。このキャラクターはどのように作り上げたのでしょう?

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マ・ドンソクが演じるのは、肉体派で正義感が強く、どこかユーモラスなマ・ソクト刑事。前作では暴力団同士の抗争事件を自慢の肉体で解決してきた。

マ・ソクト刑事は、私の親しい刑事から最初にアイデアを得たんです。そこに私、つまりマ・ドンソクの姿を反映させて作り上げました。普段の私は、周りの人たちを笑わせたり、痛快なお話をするのも大好きなんです。アクションについては、素手で戦うことにした理由はふたつあります。まず、刑事は職業柄、悪党を罰するときは武器を使うのではなくて素手で制圧するのが基本なんです。ふたつ目の理由は、私は14歳か15歳くらいの頃から、ボクシングをやっていました。なので、映画の中で、ボクシングで培ったようなアクションを取り入れたいとずっと思っていました。通常は、作品によってコンセプトがあったり、アクションデザイナーがいるので、それに沿ってアクションを演じるのですが、私自身が手掛けるこのシリーズでは、ボクシングに由来する素手を使ったアクションをたくさん取り入れたいと思ったのです。

――マーベル映画『エターナルズ』にも出演されました。制作費も多いハリウッド大作に出演した経験から、韓国で制作する作品に反映したものはありますか? 

マーベルとの契約としては、今後3作品4作品、ずっと作品が続いていく予定で、10年くらいアメリカで撮影することになりそうです。『悪人伝』をアメリカで私主演でリメイクするという企画もあります。『エターナルズ』に出演して感じたのは、まずは規模の大きさです。撮影現場には常に1000人くらいの人たちがいます。俳優を警護するSPだけでも200人ほどいました。また、あれほど大きなセットを見たのも初めてでした。なかでもとても印象深かったのが、地球の初期の姿のシーンです。私は、当然スタジオでCGを使って地球の初期の姿を再現すると思っていたのですが、実際はスペインのとある火山で撮影しました。地質学的に、火山の様子に地球の初期の姿を重ねたんですね。そういったことも非常に大きな経験になりました。

もちろん、アンジェリーナ・ジョリーをはじめとしたハリウッドの俳優さんたちとも非常に親しく過ごすことができ、一緒に撮影をする中で、新しいケミストリーが生まれたのは楽しい経験でした。ハリウッド映画で学び、韓国映画に活かしたいなと思っているのは、ストーリーを作る時の世界観の構築の仕方です。私は自分でも脚本を書きますが、世界観を構築するのは非常に大切なこと。どんなに小さな作品を作る時にも、世界観を大事にして作るということを学ぶことができました。

また、私はアメリカに長く住んでいたので、英語でコミュニケーションを取るのは問題ありませんが、英語で話すことと英語で演技をすることは違うなと感じました。

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――反対に、韓国映画ならではの培ったものを、何かハリウッド映画に持ち込むことができると思いますか?

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韓国映画で学んだ何かをハリウッド映画に活かすとしたら、やはりアクションですね。もちろんアメリカにも素晴らしいアクションチームがいますが、私は元々ボクシングをやっていましたし、アクションの専門家でもあるので一緒にアクションデザインを考えてほしいと頼まれることがたくさんあります。これから撮影する予定のハリウッド作品でも、アクションデザインを一緒にやって欲しいとオファーを受けています。

――『犯罪都市』シリーズはすでに3作目も撮影されていますね。どの辺がさらにパワーアップするのでしょうか。また、青木崇高さんが出演していますが、彼はどんな役になるのでしょうか。

青木崇高さんは、元々好きな俳優さんだったので出演をお願いしました。一緒に撮影しながら、私は人間としても彼のことが大好きになり、いまではとても親しい間柄です。役柄やストーリーに関してはまだ撮影中なので、詳しいお話は作品が完成したらお話させていただきますね。

『犯罪都市 THE ROUNDUP』
●監督/イ・サンヨン
●出演/マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・ジファンほか
●2022年、韓国映画(R-12)
●106分
●配給/HIAN
全国で公開中
https://hanzaitoshi.jp
©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION

 

text: Atsuko Tatsuta

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