死と向き合う作品で、オゾン監督と初タッグ。
ソフィー・マルソー|俳優
13歳の時に初主演した『ラ・ブーム』(1980年)でトップアイドルになってから40年余り、絶大な人気を誇り続けるソフィー・マルソーが、『すべてうまくいきますように』でフランソワ・オゾンと初タッグを組んだ。『アンナ・カレーニナ』(97年)や『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(99年)など、英語映画でも活躍しているだけに、フランスの国民的な監督の作品に出演歴がなかったことは意外だが、親交のあるふたりにとっては念願のコラボだという。
「フランソワの作品はデビュー作『海を見る』(96年)の時からずっと好きです。彼とは以前から知り合いで、これまでも出演依頼はありました。でも脚本はよかったものの、役柄に合わないと思ったので実現しませんでした。今回は原作となった小説を読んだ時から、この作品と私とフランソワの相性がよいとすぐにわかりました」
今作では、脳卒中で倒れた父親から尊厳死に協力するように求められ、葛藤する作家の娘エマニュエルを演じている。出世作『まぼろし』(2001年)以来、オゾンの朋友だった脚本家で作家のエマニュエル・ベルンエイムが、自身の家族に起こった出来事をベースにした小説の映画化である。
17年に彼が61歳の若さで逝った後、映画化に取り組んだオゾンだが、その条件はマルソーの出演だった。
「人生の岐路で、人は誰かの死に向き合わなければなりません。すべてが変わってしまうような、感情の波に対処しなければならないのです。この作品はそういう意味で笑いから絶望までさまざまな感情が入り混じった、言ってみれば人生を凝縮したような映画です。もちろん、親子関係についての物語でもあります。もし親が死んだら、彼らが何者であったのか考えるでしょうか。あるいは彼らの人生が理解できるかといえば、それは違う。イメージや仕草、感覚、親密さなど、いろいろなことを感じることができたとしても、私は親について知らないことばかり。疑問も問題も解決しないで、彼らは逝くのです。でもそれでいい、そういうものだと思っています」
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長いキャリアを積んだ現在も、映画作りはすべてが挑戦だという。
「正直なところ、どう自分が映っているのかわからないんです。監督たちは想像力があるし、私はリスクを恐れていません。新しい才能と出会うのは興味深いことなので、新人監督の仕事もする。でも、何かあると思ったとしてもダメな時はダメ。そういうものです」
でも、失敗することは彼女にとって苦にはならない。
「雨の後には虹がかかる。それが人生。よい涙は、自分自身の内面の深いところと繋がっているものでしょう?」
1966年、パリ生まれ。13歳の時にオーディションを受け、主演に抜擢された『ラ・ブーム』(80年)で一躍トップアイドルとなる。『ブレイブハート』(95年)、『アンナ・カレーニナ』(97年)、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(99年)など、フランスを代表する俳優。
*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋
text: Atsuko Tatsuta