センセーショナルな実話を映画化した『コンセント/同意』で主演女優が伝えたかったこととは?

インタビュー 2024.08.02

この映画を通して、怒りを希望に変えていきたい。

キム・イジュラン|女優

240723_portrait_Kim-Higelin.jpg

KIM HIGELIN/キム・イジュラン
2000年、フランス生まれ。ドラマ「スカム・フランス」などでさまざまな役を演じ、キャリアをスタート。ヴァネッサ・スプリンゴラの同名自伝小説をヴァネッサ・フィロが映画化した『コンセント/同意』で彼女はセザール賞新人女性賞にノミネートされた。

フィガロジャポン3月号のジェーン・バーキンの追悼号を目にした時、キム・イジュランは「残念ながら、私には彼女との個人的な思い出がないの」と言った。

「彼女の死はフランス全体に大きなショックを与えたわ。私たちにとってアイコン的な存在だったから」

JBとして、現代フランス映画界のアイコンとなった。映画初出演にして初主演作『コンセント/同意』で演じたのは、人気作家に見初められる13歳の少女ヴァネッサ。同意を得ての交際であったが、関係性にははなから権威勾配があった。本作は実話の映画化で、ヴァネッサ・スプリンゴラが三十数年前の自らの体験を基にした同名小説をヴァネッサ・フィロが映画化したものである。

「私は原作を読んで強い怒りを感じました。そして、この怒りを希望に変えたいとも思いました。本作は若者を中心にヒットし、私はフランスの若者との一体感を感じています。道を歩いていると、若い人たちが私のところにやってきて、この映画を観たと話してくれたり、時に私の腕の中で泣き崩れる人もいました。自分が何かのアイコンになったかはわかりませんが、この映画が大人も含め、いかに多くの人を助けることに繋がったかは自覚しています」

240723_portrait_consent_main.jpg

© 2023 MOANA FILMS - WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LESFILMS DU MONSIEUR

2020年芸術文化勲章まで受賞した有名作家ガブリエル・マツネフと14歳で性的関係を持った女性、ヴァネッサ・スプリンゴラが、その関係の歪さを三十数年の時を経て告発した。ベストセラーとなり社会問題を引き起こした原作『同意』の映画化。当時のフランス文壇がマツネフの小児性愛を受容していたことへの怒りは映画にも引き継がれている。●『コンセント/同意』はシネマート新宿ほか全国で8月2日より公開。

---fadeinpager---

タイトル「同意」にあるようにヴァネッサは50歳の作家、マツネフとの交際に身を捧げる。それは罠だとキムは映画を通して警告する。

「マツネフは常に同じ手口で、吸血鬼のように獲物を見つけていました。父不在の母子家庭で、母子間の関係性がうまくいっていない頭のいい少女を捕まえ、精神的、肉体的、文化的に支配し、最終的に自分の小説のフィクションとして変換する。書かれたほうは自己を喪失し、その苦しみは長く続きました」

搾取の構造を深く理解して撮影に入ったが、冷静な思考と相反して、撮影中は皮膚が赤く腫れたり、悪夢を見たり、ずっと食いしばっていたので、歯が折れたり欠けたり、肉体的なダメージを受けたという。

「いまはその体験をポジティブに捉えています。映画を観た原作者のヴァネッサからは『本作のヴァネッサの視線、言葉の一つひとつはすべて私が生きたもので、実際に体験したものだ』と言ってもらいました。どうすれば未然に防ぐことができたのかは、この映画を通してみんなが考えていくことだと思います」

『コンセント/同意』
2020年芸術文化勲章まで受賞した有名作家ガブリエル・マツネフと14歳で性的関係を持った女性、ヴァネッサ・スプリンゴラが、その関係の歪さを三十数年の時を経て告発した。ベストセラーとなり社会問題を引き起こした原作『同意』の映画化。当時のフランス文壇がマツネフの小児性愛を受容していたことへの怒りは映画にも引き継がれている。●『コンセント/同意』はシネマート新宿ほか全国で8月2日より公開。
https://klockworx.com/movies/consent/

 

*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋

text: Yuka Kimbara photography: ©Tanguy Rothschild

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories