エルメスの創造の秘密を紐解くエキシビション『レザー・フォーエバー』開催。来日したクリエイティブ・ディレクターのクーリ・ジョベールにインタビュー。
インタビュー 2014.11.20
2014年12月2日より、上野の東京国立博物館の表慶館で開催される特別エキシビション、エルメス『レザー・フォーエバー』のために来日した、エルメスの皮革・馬具部門 クリエイティブ・ディレクター、クーリ・ジョベール。フランスの歴史あるメゾンならではのユニークなエキシビションの魅力と、エルメスのレザーの魅力について語ってくれた。

Couli Jobert(皮革・馬具部門 クリエイティブ・ディレクター)
スタイリスト、デザイナーとしてキャリアをスタート。数々のメゾンにてコンサルタント、デザイナーとして活躍し、2007年、エルメスの馬具のクリエイティブ・ディレクター就任。2008年より現職。
photo:FEDERICO REPARAZ
――2014年4月号のパリ大特集の号からスタートしたフィガロジャポンの25周年企画「ETERNAL LUXURY 永遠に愛すべきもの」連載は、エルメスからスタートしました。美学をしっかり持っているメゾンだからこそです。
クーリ・ジョベール(以下、C):エルメスというメゾンは、大きな哲学を持っています。「モード」というよりも「ものづくり」という考え方を大事にしているのですから。
――今年の12月2日からスタートする、特別エキシビション、エルメス『レザー・フォーエバー』。たまたま香港で開催されているこのエキシビションを拝見する機会がありましたが、素晴らしかったです。
C:『レザー・フォーエバー』は、これまでに6都市で開催されてきましたが、私は現在、エキシビションを開催するそれぞれの都市のために、まったく新しいアプローチでつくられる「スターバッグ」のディレクションに関わっています。このエキシビションを通して伝えたいことは、エルメスというメゾンの革についてのノウハウや時代を超えたクリエイションの豊かさを表現すること。どの都市で開催されようと、その方向性は貫いています。
――上海からスタートして、ローマ、ロンドン、マドリッド、台北、香港......長い時間をかけて、エルメスのレザーのクリエイションの意義をエキシビションで伝え続けていますね。
C:都市を変えて回を重ねるごとに、エキシビションの内容はよりよく進化しています。開催する都市に合わせて展示の演出も工夫されています。都市だけでなく、その都市の中のどのような「場所」で『レザー・フォーエバー』が開催されるか、そこにこだわることも大切だったのです。
――東京での開催地は、伝統の美術や工芸の集まる場所、上野の東京国立博物館 表慶館、とお聞きしました。
C:素晴らしい場所だと確信しています。
――製作の際、どれくらいの種類のレザーから選んでいるのですか?
C:デザインをイメージする段階で、どのレザーでつくるかは想像済みです。実際の製品化には、素材を選ぶことはとても重要なことですが、あらかじめ5種類選ぶこともあれば、このデザインなら1種類だけ! と決め込んで試作品をつくることもあります。色と皮革の相性のことも考慮しています。エルメスの革製品にとって、とにかく色がとても大事な要素。私はそのあたりのバランスをとることに、必要以上にこだわりを持ってのぞんでいます。
――東京のためのスペシャルデザインの「スターバッグ」のことを聞かせて下さい。
C:エルメスはクリエイションのために必要で素敵なことと考えれば、妥協せずにがんばってしまうの! こんな限られた時間のなかで、東京のために8タイプも作ってしまったのだから......。8は日本では幸運の数字ですよね? 日本の代表的な文化でもある「盆栽」の正確に縮尺された世界観にインスパイアされて、「ケリー」や「ボリード」などエルメスの代表的なバッグをミクロサイズで8タイプ作りました。

手のひらに収まるくらいのミクロサイズの「バーキン」。高さ15cmあまりの小ささでありながら、精密な職人の手作業により完璧な縮尺の美が完成される。photos:VINCENT LEROUX
――エキシビションが開催された他の都市の「スターバッグ」はいかがでしたか?
C:他の都市はと言えば、ロンドンでは4つのデザインだったのです。これは英国内の4地方を表現し、スコティッシュチェックなど、各地方を想起させる素材やデザインを「パス・ギード」のバッグに施しました。香港では同じく「パス・ギード」に夜景を思わせるデコレーションを加えました。上海はケリーで、クロコの赤。中国の象徴的な色を使いました。
――香港での「スターバッグ」の展示は、まさに夜景を背景に飾られていました。
C:演出が大切なのです。エルメスはファンタジーを伝えるメゾンですから。そして、エルメスを体感する人々にいつもサプライズを届けたいのです。
――クーリさんにとって、エルメスのレザーとは?
C:エルメスにとってのレザーとは、1枚1枚がユニークであり、厳選された素晴らしいものなのです。良いレザーとは何でしょう? それは、触れたい、という気持ちを人に起こさせるものです。目でも、手でも感じたい。多くの物語を語りかけてくれるのが、レザーだと思います。
――一言でエルメスのレザーを表現すると......。
C:エモーション。心を動かすもの、すなわち感動です。
――意外でした、エモーションとは。
C:エルメスは感動を届けるメゾンです。エルメスのレザーのプロダクトは、ここで働く人々、ひとりひとりの誇りを背負っています。みんなの気持ちを共有し、それぞれの才能を、ひとつのプロダクトに込めてつくっているのですから。エルメスとは、ファンタジーのメゾンなのです。もちろんクオリティや精密な仕事はエルメスにとって大切ですが、夢に満ちた姿勢が、核となっているのです。
特別エキシビション
エルメス『レザー・フォーエバー』
東京国立博物館 表慶館(東京・上野)
会期:2014年12月2日(火)~23日(火)9:30~17:00
(12月3日~7日までは~20:00)
休)月
※入場は無料。入場引換券を下記URLより取得のうえ、東京国立博物館正門の専用窓口にて、携帯・スマートフォンの画面をご提示ください。
http://lfe.hermes.com/jp
●問い合わせ先:エルメスジャポン Tel.03-3569-3300