新緑の季節に訪れたい鎌倉の新店エンソウで、香りと食に満たされて。
2022.04.23
鎌倉ウイークエンダー 2021.10.17
長谷川真弓
あちらこちらで金木犀がいい香りを漂わせる10月の鎌倉。涼しい風が心地よく、お散歩するにも絶好の季節。いつもよりちょっと足を伸ばして、アートに触れに、一点物の作品に出合いに、小さなギャラリーに出かけてみませんか。
9月末に伺った、鎌倉山にあるYAECAのink gallery。数々の名建築を残している吉村順三氏が設計した家がリノベーションされ、ギャラリーとして公開されている。会期中しかオープンしない特別なギャラリーなので公式サイトで確認を。
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住宅街の中に溶け込むギャラリー。photography: Shinichiro Oroku
鎌倉駅から材木座海岸に向かって散歩していると、半分を過ぎたあたりで現れるのが古民家を使ったギャラリー、John(ジョン)だ。目印は大きな松の木と三角のトタン屋根。扉が開かれているので気軽に入りやすく、中は天井の高い開放的な空間でなんとも居心地がいい。
「おもしろい出合いがある場所にしたい」と、写真、イラストレーション、陶芸、織り物など、展示内容はジャンルも年齢層も多岐に渡っている。月2回程度のペースで展示が変わり、入場料もかからないので「いまは何がやっているのかな」とフラッと訪れる人が多いそう。
作品を観たらカフェで休憩するなど、ギャラリーとカフェを行き来する人も多い。たまたまコーヒーを飲みに来たお客さんからアーティストを紹介され、それが展示につながるということも珍しくないそう。芸術家、クリエイターが多く住み、アートが身近な鎌倉らしいギャラリーだ。
手前がカフェ、奥がギャラリーとなっている。カフェではハンドドリップのコーヒーや焼き菓子ブランドBakeromiのスイーツが味わえる。photo: Shinichiro Oroku
今月は、イラストレーター岡本果倫の個展を開催。
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ギャラリーの前に広がる、眺めのいい前庭。オーナーのシャハニ千晶さんと看板犬のキャドバリーくん。
鎌倉駅からバスに揺られて15分ほど、鎌倉を代表する別荘地・鎌倉山に着く。会席料理の老舗や、絶景のテラスが有名なスイーツ店などが立ち並ぶ鎌倉山に今年の4月にオープンしたペタル。1階は器の常設展示、2階は不定期でスパイス料理や発酵食のワークショップを行い、食にまつわるさまざまな提案を行う場となっている。
ギャラリーではオーナーのシャハニ千晶さんが昔から好きだという佐賀県の唐津焼きを中心に、全国からよりすぐった作家の器を紹介している。唐津の作家、中里花子や土屋由起子、伊万里の馬場光二郎、旭川の工藤和彦、信楽の八木橋昇、沖縄のガラス作家おおやぶみよなど、さまざまな表情の焼き物が美しい佇まいで並んでいる。
眼下に広がる緑が気持ちよい憩いの空間で、ゆっくりと器の魅力に触れるひとときを過ごしてみては。
和洋の料理が映えるお皿やお茶の時間が豊かになるポットやカップなど。新しい作品も随時入荷する。
平日は予約制なので、ゆっくりとした時間が過ごせる。
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落ち着いた雰囲気の一軒家のギャラリー。取材時は5周年記念展「蓮依」の開催中、茶道具を中心にした茶の展示会が行われていた。
北鎌倉の駅から10分ほど、緑豊かな坂道を上がっていくとたどり着く隠れ家的ギャラリー。オーナーの庄司英順さんは、四季を感じられるこの散歩道が気に入り、「来てくださる人に散策も含めて楽しんでほしい」と、山あいの閑静な場所にギャラリーをオープンした。
在日韓国人である英順。日本で生まれ育ったがルーツとしての韓国の芸術作品に惹かれ、自分にしかできないセレクトのギャラリーにしたいと日本と韓国の作家ものがミックスされた空間を作り出した。当初は器や古道具が中心だったが、幅が広がり、いまではアート作品の企画展が多いのだそう。
「佇まいだけで場の空気を変えるようなもの」が好きで、それがセレクトの基準。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館にも所蔵されている、パク・ソンウクの茶器など、とっておきの作品にも触れることができる。
ギャラリーを見た後は、そのまま北鎌倉駅へ戻るのではなく、オーナーおすすめの葛原岡神社から銭洗弁天へ抜ける道をウォーキングして帰った。鎌倉の秋を満喫できるので、訪れた際はぜひお試しを。
陶芸作家の浜野まゆみ、福村龍太、ガラス作家の橋村大作・野美知、韓国の作家パク・ソンウク、カン・ヨンジュンなどの作品を取り扱う。
写真は昨年行われたチェ・ハノル個展の展示風景。
photography & text: Mayumi Hasegawa
長谷川真弓
出版社で女性ファッション誌の編集に携わり、2011年に独立。現在はフリーランスのエディター兼ライターとして雑誌やウェブなどで活動中。19年に都内から鎌倉へ移住。小学生の娘と幼稚園児の双子の母。