人も自分も傷つける、行き過ぎた謙遜はやめたい

文:犬山紙子

謙遜風悪口……行き過ぎた謙遜に出会うことがちょこちょこあります。
それは自虐の場合もあるし、身内をサゲる場合もあって、どちらにせよそれは「自虐」「他虐」なので、謙遜ではなく虐げていることになっている。でも、なぜかまだ謙遜として認識されているんですよね。

例えば、子どもを褒められた親の場合
「ありがとうございます〜、いや〜この子手先が器用で絵だけは上手なんですよ。でも勉強はからっきしで……、それに●●ちゃんみたいに美少女というわけでもないですし!」なんて風に。
そして妻の料理を褒められた夫なんかも
「そんなそんな! 愚妻をそんな風に言っていただいて……いやあ、そんないいものじゃないですよ。家ではいつもトドみたいにゴロゴロしてますから」とサゲるサゲる。
更には、後輩を褒められた先輩も
「ありがとうございます! こいつ、やる気だけはあるんでしごいてやって下さい。気に入ってもらえてよかったな! あ、こいつ恋愛の不幸エピソードいっぱい持ってるんで、ご飯に行った時にでも聞いてやって下さい。な! 彼氏何年いないんだっけ! ははは、かわいそうなやつなんでご指導お願いいたします」だったり。

自分を褒められた人は
「いやいやいや、滅相もございません。私なんて肥えに肥えて腹回りなんて超絶やばいですし、全くモテませんし!」
……こんな感じで。

せっかく相手から褒めてもらっているのに、相殺どころか地の底に下げるような言葉を畳み掛けてしまう。
子どもは親の所有物じゃないし、パートナーサゲはシンプルに殺意だし、取引先や上の人に気に入ってもらうがためにハラスメント連発する先輩は滅びてほしい。
自虐は、いくら心にバリアを張っても自分を傷つけちゃう行為だし。

これらをいっせーのでやめたいんですよね。
自虐をやめるのは、自虐を求める空気がまだあるし、自分を守るためだったりもするのですぐには難しいかもしれないけれど
他虐、他虐は今すぐにいっせーのでやめたい、やめなきゃいけない。

子ども時代親に謙遜風悪口をされて傷ついたという人も多いんじゃないでしょうか。「なんで絵を頑張って褒められたのに、この子は顔はイマイチって言われるんだろう?」なんて。その後ずっと自分に自信を持てなくなることだってあるでしょう。親の言葉って、まだ世界が小さな子どもにとっては大きなもので、自信にも呪いにもなるものですから。

でも、これをするのって相手を傷つけたいからではなくて保身からなんですよね。「調子に乗っていると思われたくない」「自慢していると思われたくない」「勘違いしていると思われたくない」って。「あいつ調子に乗ってるよね」「惚気てる」「あの人自分のことかわいいって勘違いしてるよね」って誰かが言われているのを聞いて、余計な恐怖心を植え付けられてしまっている。学校や会社や子供の学校など、集団に入ることでその恐怖は蘇り、自分だけでなく他者までを傷つけてしまう。

まずはその恐怖が本当に必要なものなのか? 本当に自分含む大切な人を傷つけないで、守る方法はないのか? そこと向き合うところなのかなと思います。
(職場の先輩後輩の場合は「いじり」が「おいしい」と勘違いしているというケースも多々ありそうではありますが)(夫による妻サゲも妻は夫の所有物という過去の発想が見え隠れします)

そんなわけで私は自虐含めやめるようにしました。「やめる」って決めちゃうと「ルールだから」って空気に負けることも少なくなってよかったです。
問題は自分が話している相手が自虐、他虐をしてしまう場合。そんな時の対応に頭を悩ませているのですが、今の所「そんなこと言わなくて大丈夫ですよ、素敵ですよ」と笑顔で一言。そこにもしお子さんがいたりしたら、話を遮ってお子さんに「今、お母さんと●●ちゃんの絵が素敵だって話していたんだよ」って話しかける。
なかなか実行するのは難しいですが、対応の方も慣れが大切ですもんね。いつの日か呪いブロッカーとして胸を張れるようになりたいものです。

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イラストレーター、エッセイスト。1981年、大阪府生まれ。2011年『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)にてデビュー。

日本テレビの「スッキリ」をはじめ、コメンテーターとしても活躍。2017年に1月に長女を出産。

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