最終回! KIKIの、東京と鎌倉行ったり来たり。
KIKI、ときどき鎌倉暮らし。 2023.09.04
KIKI
平日は東京、週末は鎌倉(から引越して、今は隣町の逗子)で過ごす。そんな生活になって、約5年。犬を飼う前、そして、子どもが生まれる前のことだった。長女が1歳の春にはコロナ禍に突入したのだが、家のなかに閉じ込められるような生活になるとわかっていれば、鎌倉で暮らし続けていたかもしれない。
今年の夏も、子どもたちとたくさん海で遊んだ。逗子海岸に行くことが多いけれど、鎌倉の材木座や由比ヶ浜、葉山の森戸や一色海岸など、近隣に海水浴場がたくさんあり、砂浜や風景、海の家の雰囲気もそれぞれことなるので、ときどき遠征もする。
とはいえ、東京での暮らしも気に入っている。住んでいる家は、もともとわたしの祖父母が使っていたマンションの一部屋で、以前からずっと住みたかった場所でもあった。築50年越えと年季が入っているけれど、建物全体の手入れもよく、当時、夫婦ふたりで使いいいようにリフォームしたのだった。わたし自身の実家も近く、幼少のころからの暮らし慣れた土地でもある。
行ったり来たりするようになったからこそ、見えてきたことがたくさんある。
4歳の長女は、テトラポットでのカニ獲りに夢中。
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鎌倉や逗子の良さは、まずは都会の利便さを兼ねながら自然が近いこと。海だけでなく山もあり、小さい子どもや飼い犬がいると、その自然のなかで自由に散歩したりや遊んだりできる。海鮮を含んだ新鮮な食材が、手頃な値段で手に入ることも良い(ときに、友人が釣ってきた魚を差し入れてくれることも)。
東京、わたしが今、拠点を置いている場所の良さは、たいてい都内で撮影があるので、仕事場に行きやすいこと。新幹線や飛行機に乗るのに、駅や空港へのアクセスがいいこと。そういった立地のことばかりでなく、近隣に緑が多いのもうれしい。
住めば都、とはよく言ったもの。利点を挙げたらきりがないなかで、あらためて思い返してみると、ふたつの暮らしには共通点があることに気づいた。それは、適度な近所付き合いがあることだ。
鎌倉の友人宅でスイカ割り。毎夏の恒例行事になりつつあるが、今年は、直前に「棒」がない!ということで、使っていない掃除機の管を代用。来年には、なにか用意しようと思う。
東京では、先に述べたように実家が近かったり、マンション内にも祖父母の代からの知り合いや親戚がいたりする。すごく面倒見のいい小学生の男の子(娘のはとこ)は、保育園帰りの娘を見つけると、近所の公園に行こうと誘ってくれたり。犬を飼っている人も多く、散歩に出る時は、よく管理人さんが可愛がってくれたりもする。
鎌倉には、オイチイチという家の近くにある居酒屋を通じてできた、同世代の友人たちがたくさんいる。そもそもオイチイチは、駅と家とのあいだにあったので、仕事からの帰り道にひとりでも立ち寄れる、息抜きの場だった。店主ともそこでできた友人とも、店以外でも肩肘張らない付き合いができ、いざ困ったときにも頼りになる存在だ。
鎌倉と逗子の境目付近にある、飯島公園近くの海は磯になっていて、貝殻さがしが楽しい。次女は芝生で日光浴。
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どちらの家の近くでも、知った顔とすれ違うことたびたび。2歳と4歳の娘たちには、日々、「ちゃんとあいさつしてね」と声をかけているのだが、それは、挨拶する間柄の人たちと、日常で行き交うことのある環境にいるということ。当たり前にあってほしいことだけど、今の暮らしに落ち着く前は、隣に住んでいる人の顔もあまり知らないような環境だったなと思い返す。
海で遊んだあとは、公園でお弁当を食べたり木登りをしたり。そして、また海に戻るというエンドレスループ。子どもにとって、遊びにことかかない環境だ。
娘たちが大人になったときに、そういえば、子どものころに暮らしていた場所はなんだか居心地よかったなと、ぼんやりでいいので記憶に染み込んでくれたらいいなと思う。
約2年にわたり連載させていただいた『KIKI、ときどき鎌倉暮らし』は、今回で終わります。この場を借りて、皆さまに「ありがとう」をお伝します。日々の暮らし出来事を、また皆さまにお伝えできることを楽しみにしています。
photography & text: KIKI
KIKI
モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere