京菓子の世界に新風を吹き込む、若手職人のお店へ。

京都上ル下ル 2022.10.31

小長谷奈都子

茶の湯や年中行事とともに発展してきた京都の和菓子。老舗の名店がひしめくなかで、いま注目されているのが若い世代の活躍。旬の果物やハーブを使ったり、季節感を大切にしながら王道の和菓子で勝負したり。独自の世界観で新風を吹き込む若手職人のお店3軒を紹介。

ストーリー性のある味わいと菓銘に魅せられて。

菓子屋のな

四季のうつろいや花鳥風月を色やカタチで表現する上生菓子。そこに旬のフルーツやハーブ、洋酒などを取り入れ、味わいでも季節感を表現しているのが菓子屋のなの名主川千恵さん。栗の甘みにカシスの酸味を添えたり、黒糖きんとんにリンゴあんを合わせたりと、和菓子の定石ではない斬新な組み合わせで、新しい和菓子の世界を開拓。アンデルセン小説をモチーフにした看板商品「アントニオとララ」、井上陽水の『少年時代』の一節からとった「風あざみ」など、小説や歌などからインスピレーションを得たストーリー性のある菓銘もまた人気の理由。「菓銘から背景の物語へ思いを巡らせ、味わいとともに楽しんでいただけたら」という名主川さん。季節でがらりと変わるショーケースの中身を楽しみに、何度でも足を運びたくなる一軒だ。

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通年店頭に並ぶ看板商品「アントニオとララ」は、森鴎外が翻訳を手がけたアンデルセン小説『即興詩人』のオマージュ。主人公アントニオの翻弄される人生の苦味を濃厚なキャラメルあん、盲目の美しき少女ララの情熱的な人生をトロピカルあんで表現。¥940

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左上から時計回りに、黒糖きんとんにりんごあんを合わせた「夜明けのうた」、和栗あんにカシスあんやラムレーズンを合わせた「亜麻栗」、小豆の練り切りときな粉ミルクあん、カカオニブの「千代古の花」、いちじく、五色豆を入れたかぼちゃの葛焼き「黄金の秋」各¥470

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栗がごろごろ入った秋の人気商品「栗万寿」。現在こちらは終了して、今後は安納芋の焼き芋入り蒸し羊羹「みつ芋万寿」、赤ワインいちじく煮入り蒸し羊羹「一熟ぶどう」などが登場。

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北区の老舗和菓子店、長久堂で培った技術や知見が礎となっているという名主川さん。

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堀川五条の交差点からすぐの住宅街の一角。元イタリアンシェフの夫と二人三脚で営む。

菓子屋のな
京都府京都市下京区篠屋町75
TEL:なし
営)12時〜18時(売り切れ次第閉店)
休)日曜、月曜
www.instagram.com/kashiya.nona/

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“王道”を大切にした地域密着型の和菓子屋さん。

まるに抱き柏

老松、亀屋良長、出町ふたばといった名店で修業を積んだ西森敬祐さんが目指すのは“王道”の和菓子。お店の三本柱は、やわらかい餅に蜜煮した黒豆とこしあんがやさしい甘さを奏でる黒豆大福、ふんわりしっとりした上用饅頭、しゃきしゃきと歯切れのいいみたらし団子。そして、どら焼きや団子といった日常のおやつと、繊細に季節を表現した上生菓子の両方がショーケースに「並ぶ。インスタ映えはしなくても、王道のものをしっかり作りたい」と味や食感を大切に、手間暇と心を注いでひとつひとつ手作り。季節ごとの行事や風習にちなんだ和菓子も次々と登場し、なかにはわずか数日しか店頭に並ばないものも。「これからは1シーズンにひとつくらい、新しい試みの和菓子に挑戦したい」と西森さん。どんな和菓子が誕生するか楽しみだ。

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人気商品の黒豆大福は砂糖を加えてやわらかくのびよくした餅が特徴。秋には丹波栗がごろっと入った栗餅が登場。左から、黒豆大福¥290、栗餅¥450

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そばの実を皮ごと挽いたそば粉と香ばしく炒ったそば茶を使った、そばの香り高い生地でこしあんをくるんだ、そば上用¥340

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ショーケースに並ぶ定番&季節の和菓子。みたらし団子の醤油、春のいちご大福のいちごなど、地元香川の食材も取り入れている。

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お店は西院駅から徒歩5分。元呉服屋を改装した空間で、和菓子はすべて奥の工房で作っている。

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1985年生まれの西森さんは、同世代の和菓子職人とのネットワークも広い。個性的な店名は実家の家紋から。

まるに抱き柏
京都府京都市右京区西院平町21
tel:075-748-9650
営)9:00〜18:00
休)火曜、不定休
www.instagram.com/maruni_dakigashiwa/

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上質な味わいと愛らしい見た目で幅広い世代に人気。

御室和菓子いと達

仁和寺、龍安寺、妙心寺といった名刹が集まるエリアの住宅地の一角に佇むお店。店主は老舗の笹屋伊織をはじめとする和菓子屋で17年間にわたり研鑽を積んだ伊藤達也さん。平安王朝の着物の色合わせ「襲(かさね)色目」から着想した「包み餅」、愛らしいくまモチーフの「いと達のもなか」など、味は本格派ながら見た目は親しみやすい和菓子が揃う。京田辺の酬恩庵一休寺で作られる一休寺納豆や、赤紫色で粒子の細かいしゅまり小豆を使うなど、素材選びでも個性を発揮。注文を受けてから、ガラス窓の奥の工房でもなかにあんを詰めたり、きんとんを仕上げたりと、作りたてがいただけるのも嬉しい。「求めてくださるものを提供できるように接客には力を入れています」という言葉どおり、伊藤さんや妻・万理さんと何気ない会話にも心が和む。

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地元名古屋の名物、ういろうを取り入れた看板商品。三種類のもち米粉を独自の比率で組み合わせたもちもちの生地と美しい配色が自慢。中身は白味噌きなこあんと小豆こしあんの2種。「包み餅」各¥260

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イチオシの上生菓子「飲めるほどに柔らかいわらび餅」は炊きたてのトロトロのわらび餅でなめらかなこしあんを包んだもの。¥324

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毎年10月に仁和寺で行われる将棋の八大タイトルの最高峰、竜王戦のおやつに2年連続で選ばれて話題となった「いと達のもなか」。注文後に一休寺納豆と黒糖と練り上げたこしあんを詰める。ネクタイのデザインは季節で変わる。各¥350〜

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店内は白と木を基調にブルーを効かせた北欧調のモダンな空間。上生菓子は定番のわらび餅のほかに、季節変わりで常時3種類が並ぶ。

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もなかのクマとお揃いの蝶ネクタイを着けた伊藤さんと接客を担当する妻の万理さん。店名は由緒ある地名にあやかったものと、伊藤さんのニックネームを合わせて命名。

御室和菓子いと達
京都府京都市右京区龍安寺塔ノ下町5-17
tel:075-203-6243
営)10:00〜17:00
休)水曜、日曜
http://itotatsu.com

 

photography: Sadaho Naito, editing: Natsuko Kongayaya

小長谷奈都子

フィガロ編集部で約8年働いた後、結婚を機に京都へ移住。「フィガロジャポン」「ペン」の本誌やウェブサイトを中心に、フリーランスの編集・ライターとして活動中。夫の料理屋を手伝って、時々女将。1男2女の3児の母。出身は長崎県の壱岐の島。
連載「京都上ル下ル」は京都の楽しい、美味しいを大切な友人に紹介するような気持ちで制作。

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