編集者たちが毎月逸品を語る連載。今月は、ルイナールの最高峰キュヴェ「ドン・ルイナール 2010」について。
複雑で奥行きのある味わいとフローラルなアロマから、特別な一本であることがわかる。「ドン・ルイナール 2010」750ml ¥39,050/MHD モエ ヘネシー ディアジオ
シャンパーニュにおけるブラン・ド・ブラン、すなわち白ブドウ(シャルドネ)だけで造られたワインは繊細で酸があり、どこか凛としたイメージがある。ルイナールは、その代表格のようなシャンパーニュだと思う。白い丘と名付けられたコート・デ・ブラン地区と、ランスとエペルネの間、モンターニュ・ド・ランス地区、このふたつの丘で育ったシャルドネを丁寧に選定し、1729年のメゾン創立以来、最高峰の味を生み出している。なかでもドン・ルイナールは最良のブドウが採れた時にしか造られない、特別なシャンパーニュ。今回リリースされた2010年ヴィンテージを飲んで驚いた。じわじわと広がる熟成感はもちろんのこと、バニラやスパイスの香り。きめ細かな泡にも思わず恍惚……。来日した最高醸造責任者のフレデリック・パナイオティスは、この特別な一本をこう語る。
「多くのシャンパーニュが王冠で密栓、熟成しますが、かつて一般的だったコルクでの熟成を復活させました。さらに通常のヴィンテージよりも長い、最大11年にもなる熟成を経ています」
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通常は王冠で密栓して熟成させるところ、コルク栓での熟成を再現。そのためデゴルジュマン(澱引き)も一本一本手作業で行う。
変革はこれだけに留まらないが、コルク熟成から生まれる独特のニュアンスは、鮮烈なシャンパーニュ体験となった。うっとりするのは味わいやアロマだけではない。ギフトパッケージも同様だ。ルイナールは2020年から100%リサイクル可能なセカンドスキンを採用しているが、ドン・ルイナールではメゾンのセラー「クレイエル」をオマージュしたデザインに。石灰岩を切り出したようなビジュアルは、ルイナールの世界観そのもの。本当に特別な日に、手に触れて、味わって、白い丘に思いを馳せてみたい。(編集MA)
ルイナールの最高醸造責任者を務めるフレデリック・パナイオティス。日本通としても知られ、今回の来日時も「ドン・ルイナール 2010」と日本料理のマリアージュに注目。彼のいちおしは生湯葉の天ぷら。
使用するシャルドネは、コート・デ・ブラン地区が90%、モンターニュ・ド・ランス地区が10%。コート・デ・ブランに位置するル・メニル=シュール=オジェ村は、グラン・クリュの中でも長期熟成向きのシャルドネが育つ。
パッケージは石灰岩をオマージュ。紙100%で作られている。「ドン・ルイナール 2010 ギフトパッケージ」750ml¥42,680/MHD モエ ヘネシー ディアジオ
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋