第94回アカデミー賞授賞式、心に沁みた言葉。

アカデミー賞の授賞式、毎年心から楽しみにしています。特に楽しみなのは、
・歌曲賞のパフォーマンス
・亡くなった映画人たちの紹介
・LIVE中に流れるミニ知識的なもの➡今年はアカデミー博物館見学がおもしろかった!
・受賞者のスピーチ
です。なんてったって、受賞者スピーチがいちばんの楽しみ。ここには、スターが喜びを語るということだけでなく、短編映画の受賞者や、ふだん裏方である美術や音響など技術スタッフのなど、人生を懸命に生きてきた人からあふれ出る「生き方や考え方の手本」みたいな言葉を聴くことができるから。今年も素敵な言葉がたくさんありました。

★女性司会者3人組
“私たち女性3人合わせても、男性ひとりのMCのギャラより安いわよ!”

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皮肉が効いています、すごく! コメディエンヌであり女優でもあるレジーナ・ホール(右)、ワンダ・サイクス(中央)、エイミー・シューマー(左)です。アメリカのお茶の間でもそうとうな有名人たち。©Getty Images

★★★助演女優賞アリアナ・デボーズ
“アイデンティティに疑問を抱いて、闇の中のように感じていたとしても、自分自身の居場所は必ずある”

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『ウエスト・サイド・ストーリー』にて、過去の映画ではリタ・モレノが演じたアニータ役。ラテンの女性、クイアな自分と称して、想いを語りました。©Getty Images

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★★撮影賞受賞グレイグ・フレイザー
“今日は夕食に間に合うように帰ります”

『DUNE / 砂の惑星』にて受賞。オーストラリア出身のグレイグ・フレイザーは現在公開中の『THE BATMAN』、『ローグワン スター・ウォーズ・ストーリー』なども手がけた撮影監督。先の言葉の前に、「長い間、砂遊びさせてくれてありがとう」と家族へメッセージ。アカデミー賞ならではの、ユーモアとウィットのあるスピーチの締めに、昔自分が憧れたアメリカの都会の会話、というのを感じました。ちょうど『THE BATMAN』を昨日、池袋のグランドシネマサンシャイン12階のIMAXレーザーのシアターで観ましたが、この劇場の虜になったきっかけは『DUNE ~』を昨年ここで観たからです。

★★★助演男優賞受賞トロイ・コッツァー
“スティーヴン・スピルバーグの著書にあったのですが、名監督の定義は「スキルのあるコミュニケーターであること」。我が監督シアン・ヘダーは、障がい者とそうでない人たちの素晴らしいコミュニケーターであり、ふたつの世界を繋いでくれた”

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『コーダ あいのうた』には、トロイ・コッツァーとともに、同じく聴覚障がい者で俳優のマーリー・マトリンも出演。マーリー・マトリンは『愛は静けさの中に』でアカデミー賞主演女優賞を受賞しましたが、共演者の故ウィリアム・ハートと婚姻関係に。後に、ウィリアム・ハートから性的・精神的な虐待を受けていたと自身の書籍で告発。今年のアカデミー賞の故人を送るコーナーではウィリアム・ハートの写真も写されたのですが、かの名優にコメントをする映画人はいなかったのです。©Aflo

★★★★短編実写映画賞受賞リズ・アーメッド
“世の中に敵と味方は存在しない。全員仲間です。帰属意識のない人たち、自分がひとりだと思っている人たちにこの賞を捧げたい”

『The Long Goodbye』(原題)の出演俳優。監督は、出演もしているアニル・カリア。先日、毎年3月に行われる大阪アジアン映画祭に行ってきたのですが、短編作品の秀作が増えてきている、という話を映画人たちから聞きました。さまざまな方式で映画を簡単に撮れる時代になってきたいま、「伝えたい何かを持っている」人のメッセージが宿った作品は強いはず。この作品も配信など何かの形で観られるといいですね。個人的には、今回このリズの言葉が最も好きで、共感しました。

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★脚色賞ノミネート大江崇允
“(濱口竜介)監督は、「人を諦めない」人です。人を見捨てないということが作品に現れている”

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『ドライブ・マイ・カー』共同脚本・演出補。WOWOWのアカデミー賞授賞式ライブ放映が興味深いのは、アメリカでの放送をそのまま翻訳して伝えるだけではなく、インタビューを挟んだり、受賞までの経緯を町山智弘さんの解説でアメリカの事情を伝えたりしてくれるところ。今回も、濱口竜介監督に関して、事前に共同脚本家の大江さんにインタビューした映像が途中で挟まれました。©Aflo

★★★脚色賞受賞シアン・ヘダー
“この脚本の執筆と監督をしたことは、人生が変わる経験だった。美しい言葉を映画として表現してくれてありがとう”

『コーダ あいのうた』。聴覚障がい者の家族の物語を監督・脚本を担当したシアン・ヘダー。声として表現されなくても、映画としては表現できる、それを信じている彼女の美しい心に、こちらの心まで柔らかくなります。

★★★プレゼンター ケヴィン・コスナー
“作品を作り上げるには、仲間の協力がなくては決してできない。今日ここにいる監督はその偉業を成し遂げた人々です”

監督賞は、10年以上撮っていなかったジェーン・カンピオンの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が受賞。ケヴィン・コスナーのこの言葉に、カンピオン監督は「ドラマティックだったわ、ケヴィン」と声をかけました。

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★★★★主演男優賞受賞ノミネート デンゼル・ワシントン
“頂点を極めた時に悪魔が囁く。その悪魔の誘いに乗ってはならない”

おそらく、『ドリームプラン』で主演男優賞を得たウィル・スミスの近くに座っていたデンゼル・ワシントン(『マクベス』にてノミネート)が、ウィル・スミスにその場で言った箴言。ウィル・スミスの妻(現在闘病中)に対して、クリス・ロックは繊細さを欠いたおふざけを発言。ウィルは舞台に上がり、多くの聴衆と放映番組を観ている人々の前でクリス・ロックに平手打ちをくらわしました。テニスボールをラケットで打ち出すようなフォームでしたが。席に戻っても放送禁止用語でクリス・ロックにムキになって暴言を吐いていたウィル・スミス。ただし……よき助言によって、ウィル・スミスのスピーチも、とても尊い内容になりました。

★★★主演男優賞受賞ウィル・スミス
“人々を愛さねば、守らねば、人々にとって大河のような存在にならなければならない。愛を入れるための器になりたい。人々に光を当てる存在になりたい”

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『ドリームプラン』は、ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズの父親が彼女たちを独自の方法で世界最高峰のテニスプレイヤーに育て上げたリチャード・ウィリアムズの物語。ウィル・スミスは、ウィリアムズ一家から本当に信頼されるまで、時間をかけて本作を作り上げました。プロデュースも務めています。クリス・ロックへの平手打ちと暴言により、各メディアから相当なバッシングを受けているウィル。自身のSNSで真摯に謝罪をしました。2006年のFIFAワールドカップ決勝戦で、フランス代表ジダンがイタリア代表のマテラッツィに頭突きをくらわせて退場になった事件を思い出しました。あの時も同じような論争が起きましたね。「あくまでも暴力はよくない」「暴力を誘発するような言葉を吐いてはいけない」。ジダンは退場になりイタリアが優勝しましたが、ウィル・スミスは主演男優賞を獲得しました。この論争、続きそうですね……。©AP

今回のアカデミー賞授賞式の舞台装置のライトの色は、イエローとアクアブルー。これが何を示しているのか、といえば、ウクライナへのメッセージだと予想します。
WOWOWのスタジオゲスト、河北麻友子さんが言ってましたが、今回の受賞式は「愛」という言葉がたくさん登場した、と。単なるヴィクトリーではなく、「愛が力を持つ」時代。だんだん、そうなっていくのかもしれません。

アカデミー賞授賞式はWOWOWオンライン配信で4月4日まで観られます。また、4月3日(日)13時より、90分間のダイジェスト版も放送されます。アカデミー賞の過去の受賞作や、事前には予想番組など興味深いものが他にもたくさん! 
www.wowow.co.jp/academy/

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