2021年を振り返る時間に、おすすめのアルバム4枚。

残り少しとなった2021年。ここ数カ月内でも、コールドプレイ、エド・シーラン、またブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるシルク・ソニック、そしてアデルなど、チャートや街を賑わす音楽は数多。素敵なアルバムがあふれるなかでも、今回は年末の充電用やリラックス用、大切な人と過ごす時のBGM用など、おすすめの4枚を厳選してみた。
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*レミ・ウルフ『ジュノ』

年末の大掃除のBGMや、エネルギーの補給におすすめな、レミ・ウルフのアルバム。リトル・ドラゴンやチューン・ヤーズ等とコラボ経験があるように、多彩な音楽をDIY感のあるポップスに落とし込んでいくセンスが見事な、シンガー・ソングライター兼音楽プロデューサーだ。

 

高校在学中にオーディション番組『アメリカン・アイドル』に出演し、その時から異彩を放ち、音楽学校卒業後、2019年にソロ・デビュー。脚光を浴びたのは、楽曲「Photo ID」をTikTokにアップしたことから。昨秋にはiPhone12のキャンペーンソングに「Hello Hello Hello(Polo & Pan Remix)」が起用された。アイデアはもちろん、音楽の引き出しも多く、刺激をもらえる。今後は個人の活動の他に、ソングライターとしても活躍しそう。

 

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レミ・ウルフ『ジュノ』ユニバーサルミュージック(デジタル配信)

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*H.E.R.『バック・オブ・マイ・マインド』

H.E.R.のアルバムは、タイトルが示すように、この1年を振り返るおともの音楽としておすすめ。今年1月のグラミー賞で最優秀楽曲賞を受賞し、その後のアカデミー賞でも最優秀歌曲賞を受賞するなど、時の人となった彼女。ブラック・ライブズ・マターに向けて書いた曲などメッセージ性の強い歌の印象があるものの、このデビューアルバムは自身の恋愛経験に基づいた歌がメインなので、共感を覚える人は多いのでは?

 

 

H.E.R.という名前には「すべてを明らかにする(Having Everything Revealed)」を込めているそう。アフリカ系アメリカ人の父とフィリピン人の母の間に生まれ、それゆえ双方のコミュニティを団結させるものとしても音楽の重要性を説き、メッセージ性の強い歌にそれは反映されてきた。一方で、12歳でアリシア・キーズのマネジメント会社と契約したほど早熟な才能を持ち、プリンスの影響大のギターや、ピアノやドラムスなどもマルチに演奏。ローリン・ヒルの曲をサンプリングするなど、オーガニックなR&Bは、この1年を振り返るひとときに優しく寄り添ってくれそう。

 

 

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H.E.R.『バック・オブ・マイ・マインド』ソニー・ミュージックレーベルズ(デジタル配信)

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*カニエ・ウェスト『ドンダ』

音楽の素晴らしさに浸かりたい時に、今年絶対に聴き逃さないでほしいアルバムは、カニエ・ウェストの『ドンダ』。フィガロ読者には、お騒がせセレブとして目に触れる機会が多く、キム・ダーシアンとの離婚騒動に加え、大統領選に出馬したり、今年に入っては名前を「イエ(Ye)」に改名するなど、常に話題に事欠かない。そして、本業の音楽やアートとしての才能はというと、相変わらず破格に卓越している。やはり、いちばん注目してほしいのはアルバムだ。

 

 

アルバムタイトルの『Donda』とは07年に死去したカニエの母親の名前。大学教授で、その後、彼のマネージャーとなり、活動を支えた。聖書や母親の大学での講演からの引用、そして清められるような美声がある一方で、相当な数の仲間(ジェイ・Z、クリス・ブラウン、ザ・ウィークエンド、ヤング・サグ他)が参加し、支持の厚さを体感できる全27曲(デラックス盤全32曲)。ジュンヤ ワタナベや高橋盾の名が登場する曲や、キムを想起させる歌もある。コンセプトの強い奥の深い作品だが、何も考えず音楽だけ聴いていても触発されることが多いはず。

 

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カニエ・ウェスト『ドンダ』ユニバーサルミュージック(デジタル配信)

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*ノラ・ジョーンズ『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』

4枚目は、今年リリースされたクリスマス・アルバムを。ノラ・ジョーンズは、コロナ禍で日々募っていった「今年こそは大切な人とクリスマスに集まれることを願う気持ち」を楽曲に込め、ここ数年抱えることになった複雑な思いから、喜びへと向かう気持ちなど、率直な感情をオリジナル曲に表現。“ジョリー・ジョーンズ”のジョリーとは、クリスマスの時期にhappyなどの類語として使われる言葉“jolly”から付けたそうで、ノラらしいウィットに富んだ言葉遊びも緩やかなビートに弾む。

 

 

カバー曲もある。「ウインター・ワンダーランド」といったお馴染みの歌を聴いていると、ペダル・スティール・ギターの名手ラス・ポールの夢見心地になるような演奏にも引き込まれ、そこにノラのスモーキーな歌声が流れて、暖炉の前でホットワインを手にして温まっている気分になる。ノラ初のクリスマス・アルバムでぜひ、素敵な時間をさらにハートウォーミングな空間に。

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ノラ・ジョーンズ『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』ユニバーサルミュージック ¥2,860

*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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