追加上映決定!プラネタリウムでピンク・フロイドを体感。

ピンク・フロイドの超名盤『The Dark Side of the Moon(邦題:狂気)』がプラネタリウムで体感できるというので、7月15日にその視聴会に行ってきた。5.1チャンネルのサラウンドの音響を22.2チャンネルで聴けるというほかに、この上映用に製作した映像をドーム状の真下から浴びるように観られるというもの。映像を製作したのは、現在もピンク・フロイド関連のアートディレクターを担当している元ヒプノシスのオーブリー・パウエルである。

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『狂気』は1973年の発売から今年で50年を迎え、50周年記念盤も発売されている。そして、それに合わせてプラネタリウムでの上映会が世界計100ヶ所以上で順次開催中だ。日本でも6月26日からコニカミノルタプラネタリアTOKYO DOME1(有楽町マリオン9階)で上映されるが、既に当初の期間分は発売当日に完売し、追加上映が今日発表された(先週記事を掲載しようとした際に完売を知ったので、追加上映の日程を下記に掲載)。

なぜ、プラネタリウムで上映されることになったのか。1973年2月27日のアルバム発売当時、EMIレコーズはこの作品の発表記者会見にふさわしい場所としてロンドン・プラネタリウムを選んだからだという。ただしメンバーは“サイケデリック・スペース・ロック・バンド”と呼ばれていたことを嫌い、記者会見をボイコットしたそうだ。

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Pink-Floyd_A写.jpg『狂気』発表時のメンバー、(写真左から)リチャード・ライト(Key)、ニック・メイソン(Dr)。ロジャー・ウォーターズ(B)、デヴィッド・ギルモア(G)。

この『狂気』の楽曲と共に、星や星座、宇宙のビジュアルが映しだされたイベントは話題を呼んだ。さらにアルバムは予想を遥かに超越した刺激的で芸術的、しかもポップな出来栄えとあって、全米ビルボードのBillboard 200に15年間(741週連続)でランクイン、現在までに5,000万枚以上の驚異的なセールスを記録している。

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私はつい最近までこのプラネタリウムにまつわる話を知らなかったのだけれど、それを抜きにしても、このアルバムはとてつもなく魅力的な作品だ。心臓の鼓動音や叫び声、人が駆け回る足音、時計が鳴り響く音、レジのキャッシャー音といった、当時は画期的だったフィールドレコーディングのような音響が楽曲に使われている一方、美しいメロディやハーモニー、まさに宇宙遊泳しているようなサウンドも心地よく、そこにはあらゆる感情が揺さぶられるようなアート・ロックが充満しているのだ。もちろんメッセージ性も強いのだが、長くなるのでここでは割愛する。

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子どもの頃、私は家でステレオのスピーカーを左右に置き、その間に寝転がりながら『狂気』を聴いていたが、いま思うとこの音楽はやはりサラウンドを意識して作られていたのだろう。そのようにして聴きたくなる音楽なのである。3月にドルビーアトモス音源での試聴会に行き、8個のスピーカーに囲まれて聴いた時には、それぞれの音が解き放たれて自在にスタジオ内を駆け回り、音楽に酔いそうになってしまったほどだ(Apple Musicではこのドルビー・アトモス・ミックスも配信中。ただしそれに応じた再生環境などが必要)。

 

プラネタリウムでの映像はアルバムのそれぞれの曲ごとにテーマを持って展開されるが、映像制作者のオーブリー・パウエルは次のように語っている。

「映像には、未来を見据えて前を向くものもあれば、ピンク・フロイドのビジュアル面での歴史を懐かしく振り返るものもあり、すべてがプラネタリウムならではの最新鋭のテクノロジーを網羅した、時空体験となるもの。いま風に言えば真の没入型イベントであり、包括的なサラウンド・サウンドとビジュアルとの楽しみが現実を超えて、2次元の範疇をはるかに超えた空間へと案内できるはずだ」

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会場にはソファに寝転がってドームを眺める前方の席と、椅子席がある。私は寝転がって観たけれど、全天周から降り注ぎ迫ってくる最新のテクノロジーを駆使した迫力は想像を超えるもの。ただ、曲によってはすでに自分の頭の中でイメージできていた世界観があったので、好みが分かれるものもあった。とはいえ、この音響空間でこのアルバムを堪能できただけでも感激だし、そこにプラネタリウム用に製作された映像があるのだから、贅沢な体験だと思う。『狂気』は自分に影響を与えたアルバムのひとつであり、子どもの頃にプラネタリウムの会員になっていたほどプラネタリウムや宇宙好きの私としては、また音楽も映像も浴びに行きたいと思っているほど。

このアルバムのこともピンクフロイドのことも知らなくても、世界的に大ヒットしたアート・ロックなアルバムを、最新技術とともに体感してみることは、とても画期的なことなので、ぜひオススメしたい。

★追加上映スケジュール.jpg

ピンク・フロイド – The Dark Side Of The Moon
本編上映時間:約44分
会場:コニカミノルタプラネタリアTOKYO DOME1
料金:¥2,600
https://planetarium.konicaminolta.jp/program/pinkfloyd
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『狂気-50周年記念SA-CDマルチ・ハイブリッド・エディション(7インチ紙ジャケット仕様)』(完全生産限定盤)1972年来日公演関連として、貴重な「フォトブック」(48p)や「ツアー・パンフレット」など15大特典付き(¥6,600/ソニー・ミュージックレーベル)。このほか、ボックス・セットやライブ盤など50周年を記念したCDやLPなど発売中。

*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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