メイ・シモネスとtricotのキダ モティフォ(Gt)の対談が実現。
Music Sketch 2025.08.29
今年4月に『フィガロジャポン』本誌7月号用にメイ・シモネスにインタビューした時に、大好きな日本人のミュージシャンのうちの1組として名前があがったtricot。このMUSIC SKETCHでも取り上げてきたように、筆者はtricotを10年以上前から取材してきたので、7月にフジロックフェスティバル'25出演のために来日した際に紹介することを約束、そしてtricotのギタリスト、キダ モティフォと対談が実現した。その時はゆっくり話すには時間が足りなかったため、シモネスのアメリカ&アジア・ツアーが一段落した8月中旬にZOOMで再び対談を行った。(*ふたりの会話は読みやすいよう再構成したもの)

既にインスタグラムで相互フォローしていたふたり。
――フジロックで演奏した会場、レッドマーキーのお客さんはどうでしたか?
メイ・シモネス(以下S):よかったです、でもすごく静かに聞いていましたね。びっくりしました。やっぱり日本のお客さんたちは(演奏に)集中している感じがします。素晴らしいですね。
キダ モティフォ(以下K):いいライブでした。
メイ・シモネス「Dumb Feeling」
――レッドマーキーという会場にはコアなファンがいて、新しいアーティストを発掘したいという人が多いし、同じステージでもグリーンやホワイトのような野外の開放された雰囲気の中で音楽を楽しむというよりは、音楽を聴く場所というイメージがあります。ただ雨上がりは蒸すし、あと虫が飛んできてまとわりつくことがありますよね。
S:そう。ライヴ中に蜂がベーシストのところにずっと来てて、「うわぁ〜」ってなってました(笑)。
K:曲の構成が飛んじゃいそう(笑)。それもまぁ醍醐味というか。
――キダさんとメイさんはインスタグラムを相互フォローしていましたが、お互いを知った経緯を教えてください。
K: 去年か一昨年か前に、ライブハウスが企画したイベントでtricotとChelmicoが初めて対バンした時に、ChelmicoのMamiko(鈴木真海子)が「私の友だちですごくtricotのことが好きな子がいる」と言ってメイさんを教えてくれたんです。そこからフォローして。Spotifyとかで音源を聴いたりして、めちゃカッコイイと思って聴いています。
S:ありがとうございます。ずっと前のことですが、Mamikoさんがインスタでフォローしてくれて、そこからメッセージをやりとりして、日本に来た時に会いました。日本での初ライブを去年の1月にブルーノート・プレイスでやったんだけど、それもMamikoさんがブックキングの人を紹介してくれたりして、すごくサポートしてくれました。
K:インスタ繋がりやったんや(笑)。
メイ・シモネスが最初に好きになったtricotの曲「potage」。
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ふたりの音楽の共通点は変拍子。
――メイさんは、元々グランジロックがすごい好きでニルヴァーナとか演奏していたんです。
K:へぇ〜。そこからジャズに行こうと思ったのは?
S:高校でジャズのプログラムがあって、ギターが好きだったから、学校でギターが弾けるのならやってみようとなって、そこからジャズが好きになった。キダさんはジャズとか勉強したんですか?
K:全く(笑)。全然。
――キダさんは全て独学です。最初はコピーから始めたんですよね。
S:すごい。どういうコピーから?
K:私は椎名林檎さんが好きで、その曲や、椎名さんが好きなNUMBER GIRLや、ACIDMANというバンドが好きで、そのあたりの曲を弾きたいなと思ってギターを練習していましたね。高校で軽音楽部に入って、バンドで演奏するとなった時は、昔の音楽のイーグルスとかキッスをコピーしたりしていました。
S:私もギターを始めた時はレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドとか弾いていましたね。
メイ・シモネス「Animaru」 。
――ふたりが変拍子の音楽に興味を持つようになったきっかけを教えて。
S:ジャズを弾き始めた後からです。ジャズにも変拍子が入っている曲が多くて、それで初めて5拍子や7拍子で演奏するようになりました。マスロックに興味を持ったのは、大学に入って私の友達にマスロックぽい音楽を作っている人がいて、その人のバンドCliffordの音楽がすごく好きになってから。そこから私もそういう曲を作ってみようかなと思ったし、こういう音楽を聴いてみようかなと思って、それでtricotを見つけたんです。
――キダさんは?
K:中嶋イッキュウ(Vo)とtricotを組む前に、イッキュウが組んでいたthe fauvismeが変拍子を多用するバンドで、そこで初めて変拍子に触れるというか、すごくカッコイイなと思って。そのバンドが解散してtricotを組むことになったので、変拍子をやりたいというよりは、「なんで4分の4拍子でないとダメなんだろう」という気持ちになって、自由な拍の曲を作るようになりました。そこからcinema staffや、toeやLITEといった音楽に触れて、より「自由でいいんだ」って思うようになりました。
tricot「おとずれ」
――曲作りは大変でした?
K:自分が思いついたままのフレーズというか、フレーズの時点で5拍子だったり、8分の7だったりしていたので、バンドメンバーにそれに合わせてもらっているような感じ。なので、自分が大変という感じではないですね。
S:私も同じ。自分でナチュラルに出てくるフレーズを弾いて、後からバンドに「これは11だ、13だ」とか言われる。私は作曲している時は全然考えていないし、拍を数えてないけれど、後から「こうだよ」って言われることが多いです。
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「tricotの音楽は聴いててすごく楽しい」(シモネス)
「英語の曲にいきなり日本語が出てきてビックリ」(キダ)
――tricotを最初に聴いた印象はどうでした?
S:感動しました。こういう音楽があるのかって、聴いててすごく楽しいし、自分もインスパイアされて自分もそういう音楽を作りたいなって思えるほど、すごく良かったです。TVに出るようなメインストリームの日本の音楽しか知らなかったから、日本にはこういう音楽もあるんだって知って、自分も日本語の歌詞を入れてそういう音楽を作っても聴いてくれる人がいるかな、と思えるようになったので。最初に好きになった曲は「potage」で、すごく好きになって毎日聴いている時期もありました。ちょっと恥ずかしいけど、私が「potage」をカバーしたのを聴いたことありますか?(といって動画をキダに見せる)
K:うれしい! しかもレギュラーチューニングでカポをつけないでやっているのがすごい。
S:ありがとうございます。あと、「爆裂パニエさん」という曲も好きです。私がいつも見ていたのはYouTubeのライブバージョン。ボーカルがすごくおもしろくて、ラップじゃないけれど、ずっとスペースを開けないままずっと歌っている感じのセクションがあって、それがすごい好きです。
tricot「爆裂パニエさん」 2:59〜がシモネスの指摘していた箇所。
――メイさんの曲の印象はどうでしたか?
K:最初に聴いた時に普通に英語の曲と思って聞いていたら、いきなり日本語が出てきて、「えっ!」って、ビックリしました。メイさんの曲では、私は「I Can do what I want」が好きです。最初のギターとメロディの感じとかすごく好きだし、ギターでハーモニクスを弾いているところとか、結構難しそうなことをしているなと思いきや、サビで開ける感じというか、ロック感が出るというか、そのバランスがとてもいいなと思いました。
S:ありがとうございます。そういう難しいフレーズとか入っている曲を作っている時は、ちゃんとしたキャッチーなコーラスがあった方がいいかなって思って、バランスを取ろうとしているんだけど、うん、良かったです(笑)。
キダ モティフォが好きなメイ・シモネスの曲「I Can do what I want」。
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「すごくカッコイイ。いろいろな動きがあって」(シモネス)
「すごく難しそうなフレーズを淡々と弾きながら歌っていることに驚き」(キダ)
――ライブ映像はどうでした?
S:すごくカッコイイなと思いました。私は演奏する時はずっと動かないまま演奏しているけれど、キダさんとかtricotの皆さんはジャンプしたり、いろいろな動きがあって。私は残念ながら、ちょっとできないと思います。もしかしたら練習したらできるようになるかもしれないけども(笑)。キダさんはナチュラルにそういうふうになるんですか? それとも意識して「ここはジャンプしよう」とか思ってやっているの?
K:最初は意識してやったりしていて、それこそ動き方の練習というか、どうやったらカッコよく見えるんだろうとか練習していたら、自然と動き回るようになりましたね。
S:いいですね。Audiotree Liveの「おちゃんせんすぅす」でも、ダンスステップみたいな動きがあっておもしろかったです。
tricot「おちゃんせんすぅす」 シモネスが話していたのはの10:40あたり。
K:メイさんは私から見ると、すごく難しそうなフレーズを淡々と弾きながら歌っているというのがびっくりしたポイントではありますね。あんなに弾けて、こんなに歌えるんだっていう。それこそ動きがなくても、ただ弾いているだけでもというか。あれはギターのフレーズとして歌っているのか、メロディを弾いているのか、どっちのイメージですか?
S:場合によるけれど、普通はギターリフを歌っている感じですね。バークリー音楽大学にいる時に、先生は即興演奏する時に歌いながらインプロバイズするとフレージングが良くなると教えてくれて。それで一緒に歌いながらやるようになり、作曲に使ったらおもしろいかなと思って。ジャズだとカート・ローゼンウィンケル(Gt)やキース・ジャレット(P)もそうですよね。キダさんは即興する時に歌いながら演奏することはありますか?
K:私はまだ即興で弾けるほどの技術がないので笑、考えて考えてフレーズを練ったりするし、メインで歌うような曲はあんまりないので。
S:えっ、そうですか?(笑)でも、きっとできる。キダさんは結構ハーモニーとか歌っていますよね。
K:ハーモニーをつけるのが好きで歌っているという感じです(笑)。
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作曲しながら熱量を閉じ込めていくtricotと、アレンジに時間をかけるメイ・シモネス
S:tricotは、グループとして、それとも誰かがメインで作曲しているの?
K:基本的にはみんなで作っていることが多いです。きっかけみたいな、ちょっとしたフレーズとかを持っていって、それに好きに合わせてくださいみたい、な感じで作っています。
S:私はギターのコードとかギターリフを作り、そこからインスパイアして浮かんでくるメロディをつけて、最後に歌詞を載せる。それができたらバンドに見せて、そこからグルーヴやアレンジする感じ。リフやフレーズを作るときに、このリフはチャーリー・パーカーのフレーズからとか、サックスのフレーズをギターに移行させると、ギターだとなかなかできない動きが生まれることがあって、それを試したりしています。バークリーの授業で、いろんなジャズの曲のいわゆるコピーをするカリキュラムがあったんですよね。
――The xxのギタリストのロミも、「オルガンとかキーボードの音をギターで演奏したらどうなるかな」って、そうやってギターのフレーズを作っていたと初期の頃に話していました。キダさんもこれまでコピーしてきたものが、自分のフレーズに蓄積されていると感じますか?
K:そうですね。意識して「この人のこれっぽい音」みたいな感じではないけど、多分こう奥にはあると思います。演奏していると、自然に鼻歌みたいな感覚でフレーズが無意識に出てくるので、それを大事にしています。
メイ・シモネス「Rat with Wings」
S:曲が完成するのにどれくらいかかりますか?
K:私はひとりで全部を作り切ることはほとんどないので、自分でフレーズだったり、コード進行をある程度のものを作って、そこからバンドに投げてみんなで合わせながら作るので、そんなに時間はかけずに2、3回くらいスタジオに入って曲を固めていくような形です。最初の勢いのまま作っちゃうことも多く、その時の熱量を閉じ込めるというか、そういう方法で作ることが多いかもしれないですね。
S:私は自分のギターとボーカルを作るだけで、忙しくてあんまり時間がないこともあるけれど、時々何ヶ月とか、やっぱり時間がかかりますね。そこからバンドに見せて、アレンジするのも結構時間がかかります。私は大体のアイディアは出すけれど、私よりバンドの皆さんの方がそれぞれの楽器のパートを作るのが上手だと思うので、彼らにほとんど任せています。
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ツアーの楽しみは街を歩くことと現地の食事!
S:ツアーで楽しいことは何ですか?
K:いちばんライブが楽しいですけど、時間がある時は近くの街を歩いたりするのが楽しいかな。
S:私もそう。ライブがいちばんで、街を見たり、行った場所の食べ物を食べたりするのが楽しい。今回の来日だと下北沢の「はんさむ」さんで食べた、お蕎麦と揚げ出し豆腐丼がすごく美味しかったです。
K:(日本の後にツアーで行った)韓国と台湾のご飯はどうでした?
S:すごくおいしかったです。特にお豆腐が大好きなので、韓国のいいお豆腐をいっぱい食べてそれが良かった。ツアーだと街を見る時間がない日が多いけれど、台北がすごく楽しかったし、春に行ったツアーでは、アムステルダムの街がとても可愛くて本物の街じゃない感じでした。映画みたいな感じでした。
K:ヨーロッパって感じの街ですよね。
S:そうですね。あとパリもすごく好きです。tricotはアメリカにも行っていますよね。
K:何度か行っているけど、結構前に初めてグランドキャニオンに行って、メンバーみんなで日の出を見るっていう、いい体験をしました。でもその帰りにすごく体調を崩して、もうツアーも終わりかけだったんですけど、大変で(笑)。それもセットで思い出になりました。
S:(笑)。よくありますよね。ツアー中に体調が崩れることは、私も前はよくあったけど、いまは寝れば大丈夫(笑)。
――来年1月にジャパン・ツアーで戻って来た時にtricotのメンバー全員と会えるといいですね。
K:そうですね。
S:会えたらすごくうれしいです。お話しできてすごくうれしいです。
K:こちらこそ。ありがとう。
全員:どうもありがとうございました。

「極楽浄土」 9/1 (月):恵比寿 LIQUIDROOM
「マネキ倶楽部」9/30(火) : 鶯谷 東京キネマ倶楽部
お招きゲスト:斎藤ネコ、Moto (Chilli Beans.)
https://tricot-official.jp/live/
2026/1/23(金):東京duo MUSIC EXCHANGE【SOLD OUT】
2026/1/24(土):名古屋Live & Lounge Vio【SOLD OUT】
2026/1/25(日):大阪SHANGRI-LA【SOLD OUT】
2026/1/27(火):広島CLUB QUATTRO*
2026/1/28(水):福岡BEAT STATION
2026/1/30(金):沖縄SAKURAZAKA CENTRAL
*with support from Suzu Toyama
[追加公演] 2026/2/1(日):東京duo MUSIC EXCHANGE
【メン・アイ・トラスト "EQUUS JAPAN TOUR"】with MEI SEMONES
2026/1/20(火):大阪Zepp Namba
2026/1/21(水):名古屋Diamond Hall
2026/1/22(木):東京Garden Theater
*メイ・シモネスはオープニングアクト的な出演になります。
問い合わせ先:
SMASH https://smash-jpn.com/
*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh