北欧MUSIC NIGHTライヴレポート

しばらく間が空いてしまいました。今日は11月20日に原宿アストロホールで開催された《北欧MUSIC NIGHT》にフィガロジャポン編集部のHさんと一緒に行ってきたので、そのライヴレポートを書きます。

今回で第4回を迎えるこのイベント。日本にはUKファン同様に、アイスランドやスウェーデンなどの北欧の音楽ファンも多く、会場には開演前から各国の大使館関係者なども集い、大盛況でした。なかでも私たちの前にはデンマークのインターナショナル・パフォーマンス・チーム、おそらく高校生くらいの女子たちが総勢20名ほど詰めかけていて、すぐにでもモデルとして活躍できそうな美貌に見とれてしまうほど。

***

■ 80年代の懐かしさ漂う、ヤーコ・エイノ・カレヴィのエレクトロ・ポップ

01-musicsketch-141204.jpg

ヤーコとドラム奏者の2人がステージに。

トップバッターはフィンランドの出身、現在はベルリン在住のヤーコ・エイノ・カレヴィ(Jaakko Eino Kalevi)。エレクトロニック・ミュージックを駆使し、プロデューサーとしても活躍する彼は、昨年イギリスの人気レーベルDominoの傘下のWired Worldと契約を果たし、北欧以外の国からも注目を浴び始めたアーティスト。長身のヤーコは歌いながら、多くの音を組み込んだシーケンサーを操りながら曲のポイントとなるフレーズも演奏、対向に位置するドラマーはシンプルにビートを叩きつつも、キックやフロアタムといった低音の響きが良く、時にタンバリンの音も交えながら曲に表情を加えていく。

02-musicsketch-141204.jpg

どこかシャイな印象のパフォーマンス。

アンビエントな音楽からディスコ・テイストまで盛り込み、なかでも80年代終盤の頃のペット・ショップ・ボーイズを想起させる哀愁を帯びたサウンドが印象的な「Mind Like Muscle」、軽やかなポップミュージックの「Double Talk」など、緩やかに身体を揺らす曲が心地良い。透明感と清涼感に溢れたサウンドは、雪が降り積もったフィンランドのどこまでも続く平原をイメージさせるようだった。この2曲を含むデビュー・アルバムは来年リリースされるそうだ。


「No End」


■ 会場がパーティと化した、ナビアのパフォーマンス

03-musicsketch-141204.jpg

出てきた瞬間から輝いていたナビア。

続いては、デンマーク出身のシンガー・ソングライターのナビア(Nabiha)。2012年に発表した「Never Played The Bass」が母国はもちろん、アメリカのクラブチャートやイギリスのアーバンチャートなどでトップ3に入ったこともあって、最新アルバム『Mind The Gap』は世界各国で大ヒット。そのためオープニングのイントロから歓声が高まり、そして派手やかな衣装で登場した彼女が最初のヒット曲「Trouble」を歌い出すと、一気に会場がパーティに変わる。ルーツが西アフリカという彼女のビートはユニークで、しかも鍵盤のフレーズの入り方にもクセがあり、それが曲のアクセントになっていく。

04-musicsketch-141204.jpg

とにかくエネルギッシュで明るい。

「Bang that Drum」


クラブなどでのライヴにとても慣れているのだろう、日本語での自己紹介にメンバー紹介もスムーズに、「Mind The Gap」では観客に向けて腕を左右に振ると、皆も振り始めてノリノリに興じていく。そこで見せる笑顔もチャーミングで、初来日とは思えないほど観衆の視線を独占。タイトなビートの「Never Played The Bass」の曲中では観客をしゃがませてから一斉にジャンプさせ、エキゾチックなビートにラップやEDMも入った最新シングル「Animals」でも魅了。ラストのダンスナンバー「Bang that Drum」ではインパクトの強いビートを効かせながら、パワフルなヴォーカルと親しみやすいキャラで会場の熱気を一気に沸点まで押し上げてしまった。

「Animals」


■ 大歓声で賑わったデンマークの人気者、クリストファー

05-musicsketch-141204.jpg

ナビアに負けじと、こちらもノリノリ。

3番目は同じくデンマーク出身のクリストファー(Christopher)。2012年にデビューし、今年リリースした2枚目のアルバム『Told You So』も好調だ。バンド編成で登場し、推しにも力が入っているがわかる。デンマーク女子の熱狂ぶりが物凄く、たぶん地元ではこんなに近くで見られる機会がないのか、ステージの彼をバックに写メを撮ったり、踊ったり、大歓声だ。22歳の彼は、スウェーデンのウルリック・マンターのような人気者なのだろう。

06-musicsketch-141204.jpg

後半は踊りまくっていました。

「MAMA」


母国で第2位に輝いた「Crazy」をオープニングに、グイグイ飛ばす。「Mama」などでのハイトーンヴォイスも魅力で、なんとなくジャスティン・ティンバーレイクの影響を随所から感じることも。「Where Do We G0 From Everywhere」では絶妙にEDMを取り入れながら、頭を振りながら激しく踊って会場を盛り上げ、母国で第1位の大ヒットになったマイリー・サイラスが流行らせたトゥワークを取り入れた「Copenhagen Girls feat. Brandon Beal」も披露。ストレートな眼差しに純朴そうな笑顔も好感度が高く、最後には日本の女性も歓声を上げていた。

「Told You So」


■ アイスランドから話題のシューゲイザー・バンド、OYAMA

07-musicsketch-141204.jpg

紅一点のジュリア。服も含めて可愛らしかった。

アイスランド出身の5人組バンドのオヤマ(OYAMA)は、シガー・ロスで有名なスタジオでデビュー・アルバム『COLDBOY』を完成させたとあって、事前の予習もしっかりやって楽しみにしていたバンド。シガー・ロスを取材した時にアウグスト・ゲンナルソンが、「アイスランドで育つと、大抵の男は10代の頃はヘヴィロックに夢中になるんだよね」と話していたけれど、ステージ上で体感するオヤマの音は、ヘヴィロックとシガー・ロスが奏でる残響音との狭間で行き来するシューゲイザー・サウンドのようで、若さがそのまま音に出たパフォーマンスだった。

08-musicsketch-141204.jpg

轟音をかき鳴らす、ギターとベース。

「Shade」

爆音のそれはそれでカッコ良かったけれど、女性ヴォーカルを活かすためにも曲によってはもう少し丁寧に聴かせてもよかったのでは、と思ってしまったり。たぶんアルバムを聴き込んでいった私が勝手に何かを期待し、イメージを描きすぎてしまったのかもしれない。人柄を感じさせるバンド全体の雰囲気も良かっただけに、成長した次の来日を楽しみに待っていたい。

「Overflow (Live on KEXP)」


■ 完成度の高いポップスでトリを務めたNONONO

09-musicsketch-141204.jpg

トリはノーノーノー(NONONO)。アメリカ、イギリスに続く音楽輸出国として知られるスウェーデン出身の3人組。既にアメリカツアーを何度も経験し、今年に入ってもトゥエンティ・ワン・パイロッツやフォスター・ザ・ピープルのツアーに同行しているとあって、この5組の中ではポピュラリティーの高いバンドだ。アステマ&ロックウェルというプロデューサーチームとして以前から活躍していた男性2人が、ヴォーカルのスティーナの声に魅せられてNONONOを結成。曲作りのツボを心得ているため、デビュー・フル・アルバム『We Are Only What We Feel』はどの曲もシングルカットできそうな仕上がりで、最近よく聴いたアルバムの一つになっている。

10-musicsketch-141204.jpg

スティーナは心理学の勉強をしていたそう。

「Pumpin Blood」

今回ドラムとベースが来日していないため、アステマはシーケンサーも使用しながらドラムパッドを使ってビートを強調、ロックウェルのギターは音色が美しく、彩りを鮮やかに染めていく。サビのフレーズが特徴の「Like The Wind」や大ヒット曲「Pumpin Blood」などで盛り上がり、途中で機材のアクシデントがあったものの、無事にアコースティック曲「One Wish」も演奏でき、全部で10曲も披露した。

「Like The Wind」

4時間近く立っているのはちょっとキツかったけれど、時間が経つのを忘れてしまったほど、それぞれタイプの異なる5組の競演は本当に楽しかった。

*Photo by Joshia Shibano
*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
和菓子
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.