バンド大賞の審査員に
Music Sketch 2008.12.17
11月30日に品川のステラボールで開催された《日経おとなのバンド大賞2008》の審査員をさせていただきました。昨年から始まったコンテストで全国規模で開催し、今年は622組の応募があったそうです。バンドの中に40歳以上の人が2人いれば参加OKという規定があり、なので40歳以上の両親と子供たち、という編成も可能。私は審査委員長である加藤和彦さんからのご推薦をいただき、初参加してきました。
出演者と一緒に。
しかし、審査って難しいですね。いわゆる演奏やパフォーマンスの優劣を競う大会ではないし、カヴァー曲、オリジナル曲双方での参加が可能なので、同列で比較するのは難しい。大会が始まる前のミーティングで、ステージ・パフォーマンス(メロディ・リズム・ハーモニー)での評価に、バンドの夢や志、音楽への姿勢やエピソードも加味され、仕事や家庭との両立といったワークライフ・バランスにも視点を向けて欲しい、といった話になりました。
先日TVで島田紳助さんが「M-1グランプリ決勝」の出演順について話していましたが、どうしたって最初に登場した組が基準になるので、後半の方が得点が上がりやすい。確かにそう思います。今回の《日経おとなのバンド大賞2008》には全国の予選から選ばれた12組が出場し、北から南へ順に演奏。トップバッターはファンクのコピー曲(インストゥルメンタル)を演奏したので、特に判断基準を作り難かったです。
大阪出身のロック・トリオ SPOON
いろいろ迷いましたが、私はもう1度聴きたくなったバンドとして大阪出身のSPOONに10点満点の9点を入れました。男性ヴォーカル&ギター、女性ベース、女性ドラムスのトリオで、フロントの2人がオーバー40。曲はプライマル・スクリームやオアシスに影響を受けたようなスペイシーなコズミック・ロックで、エンターテイナーとしてのパフォーマンスも見事だったと思います。また、女性ベース奏者が部分的にフットスイッチでシンセサイザーも演奏するという1人2役でサウンドに厚みを持たせていたのが興味深かったです。ただ、"日経新聞が開催するおとなのための音楽大賞"ということでは、グランプリを獲得するには個性やバンドの背景が弱かったと思います。
グランプリは学校の先生バンド BLACKBOARD
結局グランプリは、中学校の校長先生がドラムスを叩く、学校の先生による神奈川のバンド、BLACKBOARDが獲得。ブギー・ロックに「お説教」というタイトルの歌詞を乗せたオリジナルでウケは抜群で、特にスキンヘッドで歌う生活指導の先生のキャラが強烈でした。会場には歴代のPTA会長や卒業生が多数応援に駆けつけていました。
沖縄出身のトリオ ヤンバル・ヒート・オーケストラ
素晴らしい歌声と弦アンサンブルで会場を魅了した沖縄のヤンバル・ヒート・オーケストラは準グランプリ。私は高得点を入れましたが、井上陽水さんのカヴァー曲でなく、オリジナルがあれば、そちらで聴いてみたかったです。終盤には去年のグランプリ・バンドや、加藤和彦さんと井上鑑さんを中心とした選抜ミュージシャンによる「タイムマシンにお願い」の演奏があり、スポンサー会社のCEOや社長といった方々からの特別賞もあり、終始和やかなイベントになりました。
加藤和彦さん中心の選抜バンド
他にも魅力的なバンドがあって、27歳くらいでバンド活動を止めてしまった私としては、また始めたくなったりも......。バンドって本当に楽しいですからね。また、終演後にそれぞれのバンドが交流を図っていたのも印象的でした。とはいえ、審査って難しい。いろいろ勉強になった一日でもありました。
なおこの内容は12月20日(土)16時からテレビ東京系列6局ネットでドキュメントタッチで放送されるそうなので、興味のある方はぜひご覧になってください。
「写真:日本経済新聞社提供」
*to be continued*

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
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