シガー・ロスのヨンシーが音楽を担当した映画『幸せへのキセキ』前編
Music Sketch 2012.06.29
主人公ベンジャミン・ミーを演じるマット・デイモン。左はマットも驚いたと言うほど似ている、息子ベンジャミンを演じるコリン・フォード。右はロージー役のマギー・エリザベス・ジョーンズ。© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation
映画『幸せへのキセキ(原題:We Bought A Zoo)』のトレイラー。© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation
映画のストーリーをごく簡単に説明するなら、最愛の妻を亡くして失意のどん底にいる主人公ベンジャミンが、立ち直るきっかけを求めて、2人の子どもとともに思い出のたくさん詰まった家から引っ越すことに。娘が"住みたい!"と、ようやく気に入った家は、廃園寸前の動物園付きの住居で、動物園の再生を通して、自分たち家族も再生していくという内容です。家族向けの作品のようでいて、実は大人の心にズンと響くヒューマンドラマになっています。スカーレット・ヨハンソンは、強い信念と意思を持ち合わせ、人生のすべてを動物園の仕事に捧げる女性、ケリーを演じる。© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation
「これはラストシーンに関係してくるのだけど、大切な人を亡くした時に、 "それでも先へ進まなきゃ行けない"と、一般的に人はよく言うけれど、進まなきゃいけない必要はあるのかい? 僕は、大切な人の印象やマインドの部分をそのまま一緒に未来へ持ち込むのでもいいんじゃないかと思うんだ。それも"人生"という旅の一部分だと思う。大切な人を失ったとしても、その人は生きていないとしても、未だまわりにいるんだ。それぞれの人によって未来への持ち込み方が違うとしても、言えるのは、(心に残るくらい)存在そのものがその人から私たちへの贈りものなんだよね。僕はこの作品で、どのくらい愛を感じたり表現できるかを、描きたかったんだ」
リリー役のエル・ファニングも好演。実際に犬と馬を飼っているほど、動物好き。© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation
「たとえば僕は11歳の双子の男の子の父親だから、父ベンジャミンと息子ディランの関係はとてもパーソナルだった。だから映画を通して、言いたいことを言った。それは"生きているのは、なんて素晴らしく幸せなことなんだ"ということ。それを理解するためには時々大きなリスクを背負わないとならないけれど、それによって毎朝起きて人生をどれだけ愛しているか、その素晴らしさをわかることができる。だからベンジャミンの話を通して、個人的なメッセージも盛り込んだ。あと、この映画から、親であることはどういうことかについてもとても学ぶことができたよ」
この作品を映画化したいと考えた時点から、ベンジャミン役にはマット・デイモンのイメージがずっと頭に浮かんで離れなかったそう。また、ベンジャミン同様、人生の中で大切なパートナーがいる俳優に演じてほしかったので、「そういう意味でも奥さんと親密な関係が続いているマット・デイモンが適役で、しかしこれまで彼が演じてこなかったような役柄だったので、本人からOKの返事をもらうまで、心配でたまらなかった」と、話していました。
クロウ監督曰く、動物の中で一番演技が上手だったのはライオン。俳優たちからは、「動物の方が食事も特別メニューで高待遇だった」という声が上がったそう(笑)。© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation
「この作品は『ヘイマ〜故郷』へのオマージュなんだ。関係者の間で、この映画のシークレットネームが"ヘイマ"だったくらいなんだから(笑)」
この映画のイメージソースとなったというシガー・ロスのドキュメンタリーDVD『ヘイマ〜故郷』(2007年作品)。
ビョークと共にアイスランドを代表する世界的人気バンド、シガー・ロス。アイスランド語で"勝利の薔薇"の意。右下の写真がヨンシー。
*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
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