レディー・ガガ ライヴ@横浜アリーナ

4月17日、それは新横浜駅に着いた時点から、まさに"レディー・ガガ旋風"と呼ぶにふさわしい盛り上がりでした。早めに到着し、モール内のスタバで時間をつぶしていたら、ガガ・ファッションの女子が頻繁に行き来していて......、何も知らない買い物客は驚いていたかもしれません。会場に着くと、コスプレ大会のように客同士で撮影会が行なわれていました。

オープニング・アクトの2組はガガさまが選んだということもあり、双方をチェック。2番目のバンドは、特にヴォーカルはゲイ達者なステージングで、いきなり上下の服を壇上で着替え始めたり......と、パフォーマンス好きのファンを歓喜させる内容。超満員の横浜アリーナを温めていました。

FIGARO076A.jpgダンサーが多数登場したステージ。Photo: Miki Matsushima

アルバム『THE MONSTER』が発売されたこともあり、"MONSTER BALL TOUR"と題されたツアー。City ACT1、Subway ACT2、Forest ACT3、Monster Ball ACT4と4章に分けて展開していきます。といっても、それは観終わってから知ったので、観ている時は、BARのネオンなどが付いたジャングルジム風の鉄塔をステージ中央に据え置き、次々といろいろなものが登場する、という印象がありました。

正直、以前紹介した一番最初のショウケースのインパクトがあまりに強烈で(→こちら)、特にその時は映像も面白かったし、そして次のサマーソニック'09でのフェス向けのアグレッシヴなパフォーマンスも圧倒的だったために、今回はどのように展開するのかと思っていたのですが、苦手だと話していたダンスを相当練習し、歌って踊るパフォーマンスに重点を置いていたように感じました。

FIGARO076B.jpg3曲目「ジャスト・ダンス」でのパフォーマンス。Photo: Yoshika Horita

それにしても一体何回衣装を着替えたのでしょう......。まだワールドツアー中とあって、オフィシャルの写真は「ジャスト・ダンス」の時の模様のみだったので、残念なことに他の衣装を紹介できないのですが、「ザ・フェイム」の時には石のようなものから死神風の真紅の衣装を着て登場、地下鉄の車両から現れた時は今年流行のヌード・トーンというかプラスチック・パックされたような衣装となり、「マニー・ハニー」ではクリスタルを思わせるロケット型のキーター(ギターのように肩から提げるキーボード)を持って黒いコスチュームで登場。続く「テレフォン」で黒のマントを脱ぐと黒のビキニ状態に。「ソー・ハッピー・アイ・クッド・ダイ」ではボリショイ・バレエ団との共演から刺激されたのか天使のような衣装で現れ、マドンナのライヴで一躍注目された筒状LEDの中に一旦消え、現れた時にはウェディングドレスというか白いドラゴンとなって羽ばたいて見せたり......。

FIGARO076C.jpg常に話題を振りまく、パワフルなレディー・ガガは、現在24歳。Photo: Yoshika Horita

「モンスター」では歌舞伎からヒントを得たのではないかと思うような奇抜な衣装で登場。被り物を取って黒いレオタード姿になってからは、胸にたれた血のりで、腕に「TOKYO」と書いてみたり。「アレハンドロ」ではステージに噴水が登場し、ガガは水を浴びながらパフォーマンス。終盤の「パパラッチ」ではアンコウを思わせる風貌のモンスターに対抗してグリーンの服を着たかと思えば、なんと!ガガの両胸と下腹部から花火が噴き出し、ラストの「バッド・ロマンス」では宇宙服のような衣装で登場......。ステージが良く見える席でもゆっくりメモを取れる状況でもなかったので、すべて合っているか自信はないのですが、たとえ曲を知らない人が観たとしても、彼女の挑発的なファッションを見るだけでも十分に楽しめたのではないでしょうか。

FIGARO076D.JPG黄色の車のボンネットにキーボードが収められていて、演奏も。Photo: Yoshika Horita

正直、車や地下鉄の車両をステージに置いたコンサートは珍しくないけれど、車のボンネットを開けたらキーボードを弾けるようになっていたり、また「スピーチレス」を熱唱しながら、ちょっとした歓声に「What?」と演奏をやめて客に対応しようとしたり(ただし3回も繰り返していたから、もしかしたらこれも演出の1つなのかもしれません)、「チケットを買ってくれてありがとう」といった発言をはじめ、観客を驚かせ、楽しませ、終始会話をして距離感を縮めようとする姿勢には好感を覚えました。

FIGARO076E.JPGモンスター・ツアーとあって、ダンサーのメイクも強烈。Photo: Yoshika Horita

レディ・ガガには「ジャスト・ダンス」「ポーカー・フェイス」「パパラッチ」「バッド・ロマンス」「テレフォン」といった大ヒットしたエネルギッシュなダンス・ナンバーがあるものの、アルバム全体を通して聴くと、聴きやすいメロディの曲やバラードもあり、気をてらったソングライターでないことがわかります。どちらかというと親しみやすいポップ・チューンで構成されています。また、前にインタヴューした時に、「私は何よりもパフォーマンス・アーティストなのよ」と熱く語っていたのですが、確かに今回のインタールードの映像に驚きがなかったこともあり、歌にダンスに衣装に演出に......と、ステージ上のすべてに全身全霊をかけていると感じました。

FIGARO076F.jpg早くも次のアルバムの発売も見えているそう。疾走し続けるガガ。Photo: Yoshika Horita

ただ、ガガの場合は、マドンナのように完璧ではないんですよね。雑というのとも、力ずくというのとも違うのですが、ダンスは体の隅々まで緊張感が行き届いているわけではないし、衣装にしたって後半は笑いが出てしまうほど奇想天外......。そして、ガガ自体もそれを楽しんでいる雰囲気があって、パーフェクトであることよりもファンに伝わるライヴを......と、ステージ上からファンを見るのではなく、自分からファンに接しようとする人間味を感じさせるパフォーマンスになっていたと思いました。そして、なかでも印象的だったのは、「私はお金は好きじゃないのよ」「お金がすべてじゃない」「あなたたちは自由なのよ」といったメッセージを繰り返し発言していたこと。まだ新人と呼んでもおかしくないキャリアなのに、2時間ほどのステージを盛大に展開できるのは、彼女が"リトル・モンスター"と呼ぶファンに向かって伝えたいことがたくさんあったからだと思います。

アメリカでは、若手のスタイリストやメイクアップ・アーティストの誰もが、ガガと仕事をしたいと望んでいるそう。ステージや衣装に手作り感を漂わせ、レディー・ガガ自身も人間味溢れるキャラクター......。話題先行に思われがちでしたが、人気が安定してきた昨今、そんなところも人を多く惹きつける魅力なのかもしれませんね。


*to be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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