カサビアンのサージが音楽を担当した
映画『ロンドン・ブルバード』

最近は人気ミュージシャンが映画音楽を担当することが珍しくありません。

最も有名なところでは、トレント・レズナー。彼はデヴィッド・フィンチャー監督作品『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)の劇中音楽をアッティカス・ロスと共同で手掛け、ロスとともにゴールデン・グローブ賞の最優秀作曲賞、アカデミー作曲賞を受賞。レズナーは何と言ってもインダストリアルロックを演奏するナイン・インチ・ネイルズでの印象が強いですが(2009年から始まる世界ツアーを最後にNINとしての活動を終了)、映画ではクラシックの素養も感じさせる多岐にわたったサウンドアプローチで、テンポの速い映画向きに感情移入のテンションを高めてくれました。今年も同じくフィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』(2012年日本公開)でゴールデン・グローブの同賞にノミネートされる活躍ぶりです。

他にも記憶に新しいところでは、ダフト・パンク本人たちもカメオ出演、時には映像そのものが彼らのミュージック・ヴィデオに感じられるほどだった『トロン:レガシー』(2010年)、一方、予想以上に映画の感情に寄り添った優美な音楽を提供していたケミカルブラザースによる『ハンナ』(2011年)。同じダンスフロアに流れることの多いクラブミュージックながら、スクリーンからはまったく別の音的情景を体感させてくれました。

かつて、エイミー・マンの音楽に触発されて映画『マグノリア』を制作したポール・トーマス・アンダーソン監督は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ではレディヘッドのジョニー・グリーンウッドを起用。その独創的なスコアは英国アカデミー賞、およびグラミー賞の候補になったほど。グリーンウッドは『ノルウェイの森』の音楽を担当したことでも話題になり、現在はアンダーソンの最新作『THE MASTER』で再びコラボレーションすることが決まっています。


111226music_01.jpg『ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD-』はロンドンを舞台に描かれた、ブリティッシュ・ノワール。

12月17日(土)に日本公開になったコリン・ファレルとキーラ・ナイトレイが主演する『ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD-』では、なんと2012年1月に来日公演を控えたカサビアンのセルジオ(サージ)・ピッツォーノが音楽を担当。


111226music_02.jpgイギリスを代表する人気バンド、カサビアン。一番右がサージ(G)。

最新アルバム『ヴェロキラプトル!』でも実験的かつ斬新な音遣いを試みているサージは、劇中でも効果的なスコアを書いて自ら演奏し、また、監督のウィリアム・モナハンと意気投合しながら選曲。60年代、70年代のヤードバーズ、ニッカボッカーズ(アメリカのバンド)、ローリング・ストーンズなどのクラシック・ロックから、最近の22-20s、カサビアンのヒット曲「クラブ・フット」までが男臭くスタイリッシュに使われています。


そのモナハン監督曰く、「映画を撮ることを初めて考えたのは、10代でロンドンに滞在していた時だ。その時からヤードバーズの『ハートせつなく(Heart Full Of Soul)』をオープニングに使いたいと思っていたんだよ」とのこと。


111226music_03.jpgコリン・ファレルのはまり役。

ストーリーも原作『ロンドン・ブールヴァード』(ケン・ブルーエン著)を、キーラ・ナイトレイ演じる相手役との関係性を変えて、さらに用心棒役のコリン・ファレル演じるミッチェルが魅力的に輝くように描かれているので、伊達男のサージも思う存分に音楽から"イイ男ぶり"を華麗に放っています。


111226music_04.jpg相手役はキーラ・ナイトレイ。原作とはずいぶんと違う設定。

このクリスマスに全米で公開されたキャメロン・クロウ監督の『We Bought A Zoo』では、主演のマット・デイモンの意向もあって、ヨンシー(シガー・ロス)がサウンドトラックを手掛け、琴線に触れるすばらしい楽曲を提供。また、Mewのフロントマン、ヨーナス・ブジェーリも映画『Skyscraper』の音楽を手掛けるなど、次々と人気ミュージシャンの映画音楽制作のニュースが入ってきています。今後はますます夢のコラボが増えそうですね。

映画『ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD-』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次公開中。
公式サイト:www.london-boulevard-movie.com
©2010 GK FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
コスチュームジュエリー
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.