秘密の家具コレクションを、ボン・マルシェで見る!
PARIS DECO 2016.10.05
アパルトマン、一軒家、レストラン、ブティック、オフィス、ホテル……インテリア・デザイナーたちが腕を振るう。その際に、時にはオリジナル家具などもデザインする。それらはその場所のための一点ものゆえに、欲しくても購入はできない。そんな歯がゆい思いをした女性が、デコレーターたちによる家具を販売するサイトを立ち上げた。
名前はThe Invisible Collection(http://www.theinvisiblecollection.com)で、隠された、とか内密のコレクションといった意味である。室内建築やインテリアデザインの仕事をする約30名が注文主のため、あるいは自分のためにデザインしたランプ、ソファ、テーブルなどがサイトに集められている。例えば、といっても、あまり表に出てくる名前ではないのでピンとこないかもしれないが、実は知らずにその仕事に接しているGille & Boissier(美術館Musée de l’HommeのCafé de l’Homme、14区のHexagoneなど)、India Mahdavi(シャルル・ド・ゴール空港内のギー・マルタンのレストランI LOVE PARIS、バスチーユ広場のCafé Françaisなど)、François Champsaur(Hotel Vernet、ホテルMaison FLなど)といったデザイナーたちだ。


デパートの3階、モード・フロアの一角にThe Invisible Collectionのコーナーが設けられている。現在は展示家具が入れ替わっているので、写真と同じではない。
彼らの仕事の特徴は、フランスの職人たちの仕事を生かした家具や室内装飾品をクリエートしていることだ。フランスのサヴォワール・フェールはこうした特別注文があることによって、存続の困難や、技術的発展の機会が得られないといった危険から護られている、といっていいだろう。
現在デパートのボン・マルシェでは、日頃は見ることができないThe Invisible Collection の商品を、3階(2èm étage)のモード・フロアにて展示受注中である。価格が表示されていないのは、展示の品をもとに特注ができるようになっているから。ディテールを変更したり、素材を変えたり……。The InvisibleCollectionでは、ラグジュアリーの極みの最高素材のLoro Pianaと提携しているので、ソファや椅子などの布はこのブランドの品の中から選べる。気軽にオーダーできる品ではないけれど、フランスの職人技の巧みを生かした家具を間近で見ることができる良い機会。パリでなかなかお邪魔できそうもない高級アパルトマンの中を垣間見る感じもある。「パリ!」展のついでに、あるいは同フロアのローズ・ベーカリーでお茶をした後とか、ちょっと立ち寄ってみては?


左:ジャン・コクトーが喜びそうな40年代風のガラスと真鍮のテーブルは、Jérome Faillant-Dumasのデザイン。右:黒漆を施したスティールの傘の巨大なランプ。高さ138cm。India Mahdaviのデザイン。


左:パラディウムとシコモア木の家具は、Caroline Sarkozy&Laurent Bourgeoisのデザイン。
右:Jérome Faillant-Dumasのエレファント・チェアと赤い透明なテーブル。


緻密な細工や美しい素材を、ぜひ近くで見てみよう。
会期:開催中~10月15日まで
Le Bon Marché Rive Gauche
38, rue de Sèvres
75007 Paris
営)10:00~20:00(木金 ~20:45)
休)日・祝
Mariko Omura
madame FIGARO japon パリ支局長
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。