マダム・レーヴ、ルーヴル郵便局の建物が5ツ星ホテルに。

PARIS DECO 2021.11.22

その昔、インターネットが発達していなかった時代は郵便が頼りだった。深夜まで営業していることで知られ、パリっ子の大勢が愛用したのがルーヴル中央郵便局。2005年に工事のために移転した。そして長期間の工事を経て、1888年建築のかつての中央郵便局の建物にオープンしたのが5ツ星ホテルの「Hôtel Madame Rêve(オテル・マダム・レーヴ)」である。来年1月に郵便局も移転先から戻り、小さなサイズで再出発するそうだ。この郵便局跡地の再開発に関わったホテルのオーナーはローラン・タイエブ。マレ地区のカフェビストロ「Le Café Trésor」に始まり、フィリップ・スタルクと組み「Bon」や「Kong」など過去にオープンしている実業家だ。ホテルにしては不思議な名称のマダム・レーヴはアラン・バシュンの歌のタイトルとして有名で、このホテルにはこの名前しかないというオーナーの一声で決まったそうだ。  

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左: マダム・レーヴの小さなエントランス。右手の中庭Cour Gutenbergにカフェ・レストランのテラスが広がる。 右: 長方形のロゴは建物内に作られた空中庭園を客室がぐるりと囲むさまをイメージさせる。

スイート含めて82室からなる7000㎡のホテルだけれど、ルーヴル通り48番地のエントランスはとても小さい。スピークイージーか、誇張ではあるが茶室に入るのか……というサイズ。レセプションもこぢんまり。奥に広がる8メートル高さの天井のロビー・カフェ・レストランがより巨大に感じられることに。観光客だけでなく、パリの住民の心も捉えることが使命のパリのホテル。このカフェ・レストランも宿泊客以外にも開かれ、開業以来パリっ子たちを集めている。建築物の歴史を尊重して19世紀的雰囲気を感じさせる内装。エミール・ガレの花器、ルイ・マジョレルの家具……というイメージで、天井のシャンデリアはウィーン分離派的を思わせるデザインだ。広々としたテラスも魅力で、その眺めを満喫できるようにと、バーカウンター席のスツールの高さが調整されているという。午前8時から翌朝2時までの営業で、メニューは地中海料理である。

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エントランス。床のモザイクは19世紀風の再現で、建物の建築が始まった1881という年号も入れられている。フロントデスクの後方、壁画は画家オリヴィエ・マモントゥイユの作品だ。photo:Hôtel Madame Rêve

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天井の高さ8メートルという地上階のロビー・カフェ・レストラン。ヨーロッパの古都を旅しているようなクラシックな内装だ。営業は午前8時から翌2時まで。photos:(左)Hôtel Madame Rêve、(右)Mariko Omura

もうひとつのレストラン「La Plume(ラ・プリュム)」はホテルの最上階にあり、ルーフトップ・バーへのアクセスもこのレストランのパティオから。窓の外にぐるりとパリが広がる眺めは、ほかでは味わえない。宿泊客はここレストランでも朝食をとれるという特権がある。宿泊客以外の人はランチからの利用が可能で、エティエンヌ・マルセル通り43番地に面したラ・プリュム専用の入り口から直行できる。こちらはコンテンポラリーな和風料理がメイン。ルーフトップのオープンは来年の春だという。というのも、環境問題に配慮し、このルーフトップは暖房を備えていないからだ。またパリ市内で人気のルーフトップはDJによる大音響の音楽というのも不可欠となっているけれど、マダム・レーヴでは宿泊者のための静かな時間を約束すべく、音楽はなしとのこと。パリの景色を眺めつつ、アペリティフ&タパスで気持ちのよいひとときが過ごせそう。なお宿泊者専用の長椅子もルーフトップには配置され、晴天日にはのんびりと日向ぼっこができる。 

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フォルナセッティの家具、オブジェが飾るラ・プリュム。こちらは和食レストラン。photos:Mariko Omura

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来年春のオープンが待たれるルーフトップ。photos:Mariko Omura

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このホテルの82の客室は、建物の3エム・エタージュを占めている。これはオスマニア建築の6階の高さに相当するそうだ。郵便局時代にはなかったフロアで、ホテルの建築に際して2フロアが追加されたという。中央に見事な空中庭園が設けられ、その周りを囲むように廊下の内側の客室が並んでいる。そして廊下の外側に並ぶ客室はパリの街に面する、という造り。同じホテルでも、まったく異なるふたつの滞在が待っているのだ。ホテルでは800点のアート作品が飾られている。そのうちおもしろいのは客室に飾られているメール(郵便)・アート。さすが元郵便局の建物!とちょっとニヤッとさせられるアイデアでは?

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左: パリのど真ん中のホテルらしく、ブルス・ドゥ・コメルスが眺められたり、目の前にサントゥスタッシュ教会が、という部屋も。 右: 庭園に面した部屋。庭に張り出したテラスで食事がとれるのが素敵だ。この壁の作品はイネス・ロンジュヴィアルの自画像。photos:Hôtel Madame Rêve

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左: 室料はスタンダードが550ユーロ〜。 中: メール・アートが壁を飾る。 右: ルーフトップから庭園に面した客室の眺め。photos:Mariko Omura

プルミエ・エタージはサウナ、ジム、そしてKOSのプロダクトを使用するスキンケアが受けられるキャビンで構成され、マダムのブードワールというイメージだという。廊下には女性がスポーツをするモノクロ写真を飾り、レトロなタッチを醸し出している。ビジネスマンは対象にしていないホテルなのでセミナールームなどはなく、パリの滞在を余暇でエンジョイする客がもっぱらだそうだ。ホテルのオリジナルパフュームをクリエイトしたのは調香師のオリヴィア・ジャコベッティ。バラとシダーが調合された穏やかな芳香がホテル内に漂っている。この香りはブティックで販売されているので、お土産にするのもいいだろう。またひとつ、パリの中央に夢のホテルのオープンである。

Madame Rêve
48, rue du Louvre
75001 Paris
www.madamereve.com

editing: Mariko Omura

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