テーマは水! 竹小屋の中でセバスチャン・サルガドの写真展。

PARIS DECO 2022.04.21

写真家セバスチャン・サルガドの写真展『Aqua Mater(アクア・マテール)』が始まった。開催地がデファンスと聞くとなんだか行きにくい場所のように思ってしまうけれど、地下鉄1号線の終点駅La Défence Grande Archeで下車し、地上に上がった広場が展覧会場である。また終点といっても遠くなく、シャルル・ド・ゴール・エトワール駅からたった6つ目だ。昨年はフィルハーモニーで春から秋にかけて半年開催された『サルガド・アマゾニア』展が大勢を集めたように、彼はパリっ子たちが関心をもって鑑賞する写真家でとても人気がある。

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広場に忽然と登場した竹の古屋の中に、セバスチャン・サルガドが撮影した42点のモノクロ写真が展示されている。photos:Mariko Omura

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2005年にナミビア共和国、ホアニプ川の流域で撮影された水を飲むハートマン・マウンテン・ゼブラたち。© Sebastião SALGADO

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2010年撮影。インドネシアのニューギニア島に住むアスマット族の女性たちによるエビ漁。川ではカニ、伊勢エビ、魚が獲れる。© Sebastião SALGADO

恵の水を意味する『アクア・マテール』展は、アフリカ、南米、アイスランド……など彼がさまざまな土地で撮影した水にまつわるモノクロ写真42点を集めたものだ。人間、動物、川、山……生涯自分の目で見ることのないだろう光景、瞬間の数々。作品を鑑賞しながら会場を一周すると、まるで一生分の“水の旅”をしたような気がする。環境問題というと温室効果ガスが注目されるけれど、地球、生命に不可欠の水が脅かされていることへも目を向けて、と警鐘を鳴らすサルガド。森の木々は雨水を土に蓄え、光合成の際に水蒸気に変換させる。破壊されたバイオ・ダイバーシティを森に植林をして再生させることによって取り戻そうと、彼は1999年に植林プロジェクトを開始した。78歳の現在も精力的に彼は活動を続けている。この展覧会の開催にあたっても「カラハリの砂漠で小さな植物の上に夜が残した小さな水滴を集めて飲む貧しい女性を見てください。この展覧会の話がきた時、私は水をテーマにしましょうと提案しました。写真展を見に来た人が、水の大切さ、人生の源へ意識を向け、会場に来た時と出る時には同じ人でないことを望んでいます。一緒に植物を植えましょう。これが地球を守る唯一の方法です」と熱く語った。

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セバスチャン・サルガドの『アクア・マテール』展で水を巡る旅ができる。photos:Mariko Omura

コロンビア人建築家シモン・ヴェレズによる1000㎡の竹素材の小屋が会場となっている。2018年のアルル写真展で僧侶で写真家のマチュー・リカールの作品を展示する会場として建築されたものだ。この『アクア・マテール』展の開催の折に、ヴェレズは「アスファルトジャングルと言えるデファンスにこの竹の小屋を設けることは、アルルとは別の意味がある」と喜んでいた。サルガドも“この竹のパヴィヨンはコンクリートのデファンスに咲いた花のよう!”と。写真だけでなく会場の造りを鑑賞するのを忘れないようにしよう。

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左: 被っていたニットキャップを取り、「洗髪後、ドライヤーで乾かすのには時間がかかります。僕を見てください。あっという間に乾いてしまう。僕のこの頭はいわば樹木のない地球。樹木は地面の髪です。だから樹を植えなければ!」と語るサルガト。 右: 写真の展示会場の外周。photos:Mariko Omura

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左: 小屋の素材はステンレスより丈夫だというアマゾンのGuaduaという竹。二酸化炭素を吸収し、酸素を生産するという特性がある。 右: 準備中の『アクア・マテール』の会場。

『Aqua Mater』展
開催中~9月22日
Parvis de la Défense
92400 Courbevoie
開)10:00~19:00
休)月
料:16ユーロ
www.aquamater.art

editing: Mariko Omura

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