インテリアのお手本にしたい、オテル・ドゥ・ラ・ボエシーの室内装飾。
PARIS DECO 2023.10.16
8区にオープンしたオテル・ドゥ・ラ・ボエシー。室内建築を担当したベアタ・ヒューマンにとって、これがホテルの初仕事である。©simonbrown
若きホテル王アドリアン・グロアゲンが率いる「Touriste(トゥーリスト)」グループ。ひとつ目のホテルから、手頃な価格でデザインの優れたホテルというコンセプトを守り続けている。パリ8区のボエシー通りに古くからあったホテルを買い取り、今年9月に4ツ星ホテル「Hôtel de la Boétie(オテル・ドゥ・ラ・ボエシー)」としてオープンさせた。ホテル名につけたのはシャンゼリゼ大通りにぶつかる通りの名前で、かつてはパブロ・ピカソも暮らし、またクリスチャン・ディオールが共同経営者として開いた画廊もあってと、1920~30年代には多くのアート関係者が足を運び、当時はそれなりに栄えた通りである。いまこの界隈にはパリに出張で来る人相手の無個性で殺風景なホテルがあるだけ。そこにアドリアンはパリ市内のほかの地区で行ったように、一石を投じることにしたのだ。毎回室内建築を誰にアドリアンが託すかが興味深い。ドロテ・メリクゾン、クロエ・ネーグル、リューク・エドワード・ホールなど過去にホテルの仕事をしたことがない若い才能を彼は発掘し、彼らの才能とエネルギーをインテリアで発揮させているからだ。彼が経営するホテルに仕上げられた内装やディテールから、パリでは室内装飾の新しいトレンドが生まれてゆく傾向がある。
RECEPTIONと刻まれたメタル。これは以前のホテルのままでヴィンテージ感を演出する一方で、ベアタは新たに花のランプをデザインした。©simonbrown
レセプション脇のサロン。メッセージボードに客たちが言葉を残してゆく。©simonbrown
左: 大きな格子のクッションや紙のように見えるランプシェードなど朝食時もインテリアチェックを。 右: 地下のバー・コーナー。©simonbrown
Kirsty Lackieが描く陽気な食事風景が壁を飾る朝食ルーム。朝食はビュッフェスタイルで22ユーロ。©simonbrown
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このオテル・ドゥ・ラ・ボエシーのために彼が声をかけたのは、Beata Heuman(ベアタ・ヒューマン)だ。スウェーデン生まれの彼女は10年前にロンドンにデザインスタジオを開き、世界各地のプロジェクトのための活動をしている。このホテルで手がけたのは、さまざまな時代とさまざまな土地のパッチワークのような内装でカラフルで遊び心にあふれている。
全40室のホテル。イタリアのフローレンスのチャペルの床のモチーフが生かされたタペストリー調のトワルがベッドの上の壁を飾る客室は劇場風で、なんともドラマチックだ。それに加えて格子柄のクッションやピンクのバスローブ……ヴィンテージ調のレセプションに始まり、オテル・ドゥ・ラ・ボエシーでの滞在は、ホテルのたくさんのビジュアルの思い出が残る滞在となりそう。地下のバー&朝食ルームもインテリアの魅力が凝縮されている。夕方になると、ちょっと一杯!と階段を降りてゆく習慣がついてしまうかもしれない。
客室は1名から5名までが宿泊できる6カテゴリーがある。チェックインタイムは最近15時のホテルが増えているけれど、ここはうれしいことに14時だ。©simonbrown
ランプの黒いベークライト、クラシックな電話機、壁を覆うタピスリー、イニシャルBが刺繍された寝具。ウェルカム・フォーチュン・クッキーがシーツの上に置かれ、快適な滞在へと旅人を誘う。photos:Mariko Omura
左: 家具はオリジナルもあれば、古い品もミックスされている。こんなクラシックなミニバーが置かれた客室も。 右: バスタブを備えた部屋もある。タオルやバスローブは寝具と同じピンクだ。アメニティはディプティック。©simonbrown
editing: Mariko Omura