10区のオテル・シャトー・ドー、2匹のパンサーがお出迎え。
PARIS DECO 2024.05.22
手頃な価格でデザインの美しいホテルを。こう提唱し、パリ市内にホテルを次々とオープンしているアドリアン・グロアゲン率いるTouristeグループ。彼は、毎回異なる室内装飾家に内装を任せ、ホテル業界のみならずインテリアの世界にも新風を送っている。グループのパリにおける7つ目のホテルは、5月にできた4ツ星のオテル・シャトー・ドーで、ホテルの名前は通りの名前からだ。この通りはストラスブール大通りを貫いていて、大通りの西側のシャトー・ドー通りは、東側と雰囲気がまったく異なり、ボボと庶民が入り混じり、活気にあふれている。そのまま通りを歩いて行けば、若者たちが集うプティット・エキュリー通り、リシェ通りに続く。この界隈の雰囲気は、パリ初心者より中級者以上がなじみやすいものだろう。
左:地下鉄シャトー・ドー駅。エクトール・ギマールによる優美なアール・ヌーヴォーの出入り口と、アフリカ人相手の床屋の客引きで有名だ。右:パンサーがちょっこり座るホテルの看板。photos: Mariko Omura
ホテルの建物の看板にはHOTELとだけ書かれ、名前の代わりに横向きのパンサーが! 今回アドリアンが組んだシャルロット・アルベールとアレクシ・ラマスタによる室内装飾家デュオNecchi Architectureが、このホテルの仕事に取り掛かった際に一番最初に思いついたのがパンサーということからで、エントランスの左右にそれぞれ陶製のパンサーが置かれている。ホテル内のカーペットもパンサーモチーフだ。ロゴにも看板と同じパンサーが描かれていて、これはビジュアル・アイデンティティをアドリアンから任されたアーティスティックディレクション界のスター、Yorgo&Co.による。
通りに面して、エントランスの左右に狛犬のように表情の異なる2匹のパンサーが置かれている。photos: Mariko Omura
左:ロビー・サロン。ここにもパンサーモチーフの肘掛椅子が置かれている。30年代の羊皮紙をイメージした壁はアーティストの仕事だ。右:喫煙サロンには20世紀半ばの家庭によく見られたというミネラルのコレクション。photos: Mariko Omura
左:喫煙サロン。床は畳がインスピレーション源だ。右:ホテルの階段の最初の段と最後の段はわかりやすくならねばならず、ここにもパンサーの柄が用いられた。photos: Mariko Omura
35室のプティホテルである。1階にロビー・サロンと朝食室、そして喫煙サロン、そこから地下のジムへと続く。エントランスから室内に至るまでホテルの中に満ちているのは、1960~90年代の個性のミックス。光を鈍く反射するラッカー、メタリックな輝きのイノックス、ふかふかのカーペット......その中に漂うのは不良ぶるスノッブたちが踊り明かした伝説のクラブであるLa Palace(ラ・パラス)の雰囲気だ。といってもシャルロットとアレクシにとってのインスピレーション源は豊富で、時代、素材、スタイルもオテル・シャトー・ドーではいろいろなコードが混じり合っている。「ひとつの家の中には、家族代々の品が時代を超えて集まって、調和をなしています。そのイメージで」とシャルロット。そのミックスにおいて彼らはコントラストも追求し、モダニティを感じさせるインテリアに仕上げたのだ。彼らがデザインした家具に加え、20年代や30年代のヴィンテージ家具も配置されている。
デザイン以上に大切なのは機能とも語るふたり。市松モチーフのタイルのバスルーム内、洗面台と鏡が一体化した家具はシャルロットが敬愛するアンドレ・プットマンの仕事を思い出させる。各客室にはカフェマシーンもミニバーも金庫もあるけれど、1~2泊の宿泊客をメインに考え、室内にはクローゼットではなくハンガーをかけるバーが設置されているだけというのも機能優先ゆえ。おしゃれなホテルながら宿泊は150ユーロ~。短期滞在のパリで活用したいホテルの誕生だ。
ここはグリーンの間。ほかにはバイオレット、黒、イエローといった色の部屋がある。photo: Hotel Château d'Eau.
家具や明かりなどが美しく反映するラッカー仕上げの光沢ある壁と、高級パラスホテルのように室内に多用されている厚手のカーペットがコントラストをなす客室。photos: Mariko Omura
市松タイルのモダンなバスルーム。アメニティはTouristeグループのほかのホテルと同じくDiptyqueだ。 photos: Mariko Omura
シャープなデザイン空間でとる朝食はカーサ・ロペスの愛らしいお皿で。photo: Mariko Omura
Hôtel Château d'Eau
65, rue du Château d'Eau 75010 Paris
www.hotelchateaudeau.com
https://touriste.com/fr/
@hotelchateaudeau
editing: Mariko Omura