"脱ファンデーション"を通して考える、本当の美しさ。

最近、“美しさ”というものが変わってきているのを感じる。「いまこれが美しい顔!」「きれいな身体!」みたいな一過性のトレンドではなくて、もっともっと根本的なところ。考え方というか概念そのものの変化を感じるのだ。

数年前は、均整の取れた顔が美しい顔とされたり、芸能人やセレブリティなどの憧れの誰かみたいになりたくて、その人の顔に自分の顔を寄せていくことが美しくなることだったなぁ、と思ってて。つまり、ある美しい基準に自分を寄せていくのが、美しくなることだったというか。でもいまは、“自分らしくあること=美しいこと”という基準に移行しつつある、ある種の過渡期なんだと、いろんなムーブメントを見て感じたり。

たとえば、渡辺直美ちゃん。彼女のような人が強く支持を得ていたり、ランウェイを見ていてもいわゆる均整の取れたモデルより、もっと個性的な肉体、個性的な顔つきが評価されている。肌色も体型もバラバラの個性がランウェイを闊歩しているショーの方が、きれいな白人モデルが歩いているショーよりもいまっぽくてクールになっている。それはキャンペーンビジュアルに出てくるモデルたちにもいえること。

ストリートスナップを撮っていても、顔立ちにおいては自分の個性が活きる見せ方をメイクや髪で表現している人が増えてるな、と。美しくなるための努力のベクトルが、美の基準に寄せることではなくて、自分を客観的に見て、その個性を活かすためにどうしたらいいかを考えることに向いている気がするのだ。そう、LGBTQの性別問題に続き、美しさでも“多様性(ダイバーシティ)”の考え方にシフトチェンジが始まっている。その影響が第一に表れてきたのが、素肌。ここに関して言えば、思った以上のハイスピードで美しさのマインドセットが進んでる。ファンデーションを脱ぎ始めた女性たち、そんなムーブメントが始まってるのだ。そして彼女たちに支持されているのがシロ。植物の素材の持つ力を活かすプロダクト作りにこだわった、メイドインジャパンの硬派なブランド。

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「うち、そもそもファンデーションないんです」とシロのPRの梅津和佳奈さんは話す。化粧品メーカーなのにファンデーションがないって?

「シロの考え方は肌は隠すものではなくて、シミもシワも自分自身なのだから、そのままを受け入れて、それを活かした美しさを見つけよう、メイクを楽しもうよってスタンスなんです。とはいえ何もせずに肌をそのまま放置……ではなくて、素肌を活かしたメイクをしたいからこそ、素肌力そのものを上げる努力や工夫を基礎化粧品でやっていこうという考え方で。肌のくすみやクマが気になった時、ファンデーションを塗ることで消すことも可能だけれど、スキンケアで改善することもできるんです。ネガティブを消すのではなく受け入れて、それがチャームポイントだと考えていくと(私自身もそうだったんだけど)、本当にすごく気持ちが楽になるんです。ファンデーションを塗らないことで肌に負担がかからない分、肌そのものも健康になり、生き生きとした素肌になっていくから、心にも身体にとってもプラススパイラル」 

その考え方って、シロのプロダクト作りと根幹は一緒なんだなぁと思う。米ぬかやがごめ昆布、タマヌやカレンデュラなどなど……素材そのものの力を引き出すプロダクトは余計なものを一切入れず、植物そのものの力で勝負しているから。“足さずに、引き出す”というアプローチは、プロダクトのクリエイションしかり肌しかり。

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「もちろん、いきなりファンデーションを脱ぐことには躊躇すると思うんです。人にはそれぞれ自分なりのメイクの教科書(ノウハウ)があると思うから。だからいきなりではなくて、段階的に近づけていくために最近シロではプライマーを開発しました。顔色補正のための一般的なプライマーをという認識ではなくて、私としては美容液に少しだけプライマー要素を混ぜた(色をつけた)もの、という認識なのですが。レイさん、私たちはメイクの固定概念を変えたいんです。“こうあるべき”を見直すことでメイクはより自由になるし、自分自身も楽になって、結果自分らしさが滲み出てくると思うから」

勇気を出してファンデーションを脱いでみると、いかに自分が固定概念に縛られてメイクをしていたかがよくわかる。それをきっかけに、メイク以外でもさまざまな固定概念を持ったまま生きていたということがどんどん浮かび上がってくる。日々のルーティーンを「本当にする必要がある?」「そうすべきこと?」って問いかけることで、人生はより肩の力が抜けて軽やかになっていく。

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美しさの固定概念も崩れつつある。

私たちはそれぞれに美しさを持っている。誤解を恐れずに言うならば、あなたがいま気にくわないと思う箇所、たとえば小さな目、シミやそばかす、面長な顔立ち、薄い唇、高い身長、小さな胸、ふくよかで寸胴な身体……。それらこそが、あなたの個性でありいちばんのチャームポイントなのだ。その美しさを輝かせるために必要なのは、まずはその美しさ(チャームポイント)を自分自身で受け入れること、そしてその個性を引き立たせるにはどうしたら?という方向に意識と努力をシフトチェンジすること。

ありのままの自分を楽しめる人。そんな人が、これからの世の中では美しいのだと思う。

そして、今回の記事で『シトウレイの東京見聞録』は最後になります。いままで10年間、ありがとうございました!

連載を通して出会えた人たちに、ショップに、会社に、そしてなによりこの連載を楽しみにしてくれていた皆様に、改めて心からの感謝を。

またいつか皆様にお会いできる日を楽しみにしていますね!

シトウレイ

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