齊藤工 活動寫眞館・弐拾壱 阿部純子。

俳優、斎藤工。そして、映画監督、齊藤工。表舞台であらゆる「人物」を演じ、裏方にまわり物語をクリエイトしていく。齊藤工がいま見つめるものとは、何か。彼自身がシャッターを切り、選び出す。モノクロームの世界に広がる、「生きた時間」を公開していきます。今回はロシア・サンクトペテルブルクと愛媛県松山市にて、3月公開の日本・ロシア合作映画『ソローキンの見た桜』で主演を務めた阿部純子を撮影。

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現代と日露戦争時代、日本の愛媛県松山市とロシア・サンクトペテルブルク——史実をもとに、時空を超えて紡がれる物語『ソローキンの見た桜』。それぞれの時代に生きる女性を見事に演じ分けたのが、阿部純子だ。

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現代のパートでは、阿部が扮する駆け出しのTVディレクター桜子の先輩、倉田を齊藤が演じている。齊藤はかねてより阿部に抱いていた印象をこう語る。

「阿部純子さんを初めてスクリーンで観た時に、小津、成瀬、溝口など邦画黄金期の頃の女優さんのような雰囲気を持った希有な方だと思いました」

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松山のロシア人墓地を取材した桜子と倉田は、その後ロシアのサンクトペテルブルクを訪れる。

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監督の井上雅貴は、かつてアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』にメイキング担当として参加。自身の前作『レミニセンティア』ではロシア人俳優を起用して完全自主製作、高い評価を得ている。その井上監督が実践するロシア流の映画作りには、齊藤も感銘を受けたという。

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「ロシアの現場は基本メイクのラウラ、録音のサーシャ、撮影のワーニャの3人、そこに井上監督夫妻と阿部さんと自分という最小人数体制でした。フレキシブルでクリエイティブな連帯感が常にありました」

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この作品で齊藤と初共演した阿部は、この「活動寫眞館」の撮影についてこう話してくれた。

「『ソローキンの見た桜』の撮影が終わった後に撮っていただいたので、きっと配慮してくださったんですね。街のあちこちにあるロシア正教会でも撮影しました。

(頭にヘアバンドのようなものを巻いている写真を指して)これは頭に着けるものではなかったのですが、巻いたほうがおもしろいんじゃないかという話になって(笑)。民族的なイメージを持っていらっしゃったのかもしれません。ロシアでしか撮れない写真を撮っていただけて、私自身も本当にうれしいです」

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現代に生きる、親近感を感じさせる等身大の女性・桜子と、想いを心に秘めて凛とした態度で戦中を生きるゆい(阿部の二役)。纏っている空気さえも違って見えるふたりを演じた阿部は、スクリーンで観る時の大人びた印象以上に、愛らしい笑顔が魅力的だった。

「活動寫眞館」の中では、また別の物語が生まれたようにも見えてくる。

「ご覧の通り、阿部さんの表情、佇まいには“物語”が見えます。一枚の写真という断面に、こんなにも奥行きをもたらすことのできる、阿部純子という女優さんの立体的で豊かな資質、本質に終始感銘を受けていました」

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『ソローキンの見た桜』
●監督・脚本・編集/井上雅貴 
●出演/阿部純子、ロデオン・ガリュチェンコ、山本陽子、アレクサンドル・ドモガロフ、斎藤工、イッセー尾形
●2019年、日本・ロシア映画 
●配給:KADOKAWA 
●3月16日より愛媛県先行公開、3月22日より角川シネマ有楽町ほか全国にて公開
https://sorokin-movie.com
©2019「ソローキンの見た桜」製作委員会

阿部純子 JUNKO ABE
大阪府出身。『リアル鬼ごっこ2』(2010年)でヒロインに抜擢される。主演を務めた河瀬直美監督『2つ目の窓』(14年)は第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、またサハリン国際映画祭主演女優賞を獲得。その後渡米、ニューヨーク大学演劇科で学ぶ。帰国後、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16年)などのドラマ・映画に出演。主演を務める『ソローキンの見た桜』が公開中。
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TAKUMI SAITOH
移動映画館プロジェクト「cinéma bird」主宰。監督作『blank13』(18年)が国内外の映画祭で8冠獲得。昨年12月、パリ・ルーヴルでのアート展『Salon des Beaux Arts 2018』にて写真作品『守破離』が銅賞を受賞。2018年日本映画ペンクラブ賞特別奨励賞を受賞。主演作『家族のレシピ』が公開中、『麻雀放浪記2020』は4月5日公開。企画・プロデュース・主演を務める『MANRIKI』が今年公開予定。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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