齊藤工 活動寫眞館・番外編 齊藤工 in パリ。

発売中のフィガロジャポン5月号で、女優・小松菜奈とともにパリのブランドを纏ってファッション撮影に臨んだ齊藤工。撮影後の対談では、自身にとってのパリについて語り、昨年末にパリを訪れた際の写真も披露した。今回は本誌で紹介できなかったエピソードを、写真と動画とともにお届けする。

齊藤工が俳優・斎藤工として登場する、フィガロジャポン5月号パリ特集。実はちょうど3年前、齊藤はパリに渡ってフォトグラファーのソニア・シエフとファッション撮影をし、その写真はフィガロの2017年パリ特集の表紙を飾った。

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フィガロジャポン2017年5月号「Je♥PARIS いつだって、パリは私たちを待っている。」

この時は、齊藤にとって17年ぶりのパリだった。パリコレのランウェイを歩くことを目指し、フランスに1カ月滞在して以来だったという。当時は「マイノリティとしての自分の存在を知らしめてくれる」パリという街で悔しい思いもした、と語った齊藤。昨年12月、自身が主演・プロデュースを務めた映画『MANRIKI』を携え、再びパリに飛んだ。

「そもそも『MANRIKI』の始まりは、永野さんの世界観×ヨーロッパのコアな映画ファンの相性のよさを確証することだったので、感慨深かったです」

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こう齊藤が語る『MANRIKI』は、パリ国際ファンタスティック映画祭のコンペティションに日本映画として初めて入選。映画祭参加の合間を縫って、齊藤に密着取材していた日本テレビ系の番組「アナザースカイII」スタッフとともに、20年近く前のパリ滞在での思い出の場所を巡った。

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「オペラ座のあたりにミニシアターが何軒かあるんです。当時通っていた映画館もまだあって、綺麗な青いシートも傷んではいるけど変わっていなかった。大事に使われているんだなと思いました。

受付にいたおじいさんに、最近気になる日本人監督はいますか?と聞いたら、濱口竜介監督の名前を挙げていました。『ハッピーアワー』(15年)がパリですごく評価されていて。是枝裕和監督や河瀬直美監督ももちろん知っているけど、新しい世代の日本のクリエイターに注目している、と言っていました」

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今回のパリ滞在中、奇しくも齊藤のもうひとつのクリエイションがパリの観客に披露されていた。アート展『Salon des Beaux Arts 2019』に、前年に引き続き学展のゲストアーティストとしてモノクロ写真作品を出展していたのだ。

会場はルーヴル美術館に隣接する地下ホール、カルーゼル・デュ・ルーヴル。作品タイトルは『Oubaitouri(桜梅桃李)』。フィガロジャポンのパリ支局長・髙田昌枝によれば、ストライキの影響でパリの交通が麻痺するなか、たくさんの人々が会場を訪れていたという。展示された3点の写真の中には、フィガロジャポン19年12月号「活動寫眞館」に登場した女優・高橋メアリージュンのポートレートも。

「実際のルーヴルの広大なスペースに存在する自作に、あり得ない事が起きたんだなとあらためて実感したのと同時に、周りに展示されている各国から集まりし力強い作品に飲み込まれそうにもなりました。(よく前年銅賞取れたなと)
ほとんどの方が自作に板付きで寄り添い、来館者にアピールしていて“ルーヴルがゴールではない”という各国クリエイター方の志を感じました」

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そして、『MANRIKI』はパリ国際ファンタスティック映画祭にて「スペシャルメンション」を授与された。扱うテーマの特異さから主要映画会社に断られ続けながらも、海を越えて世界の観客に届けたいという思いを貫き、永野をはじめとする盟友たちと完成させた本作が、パリで快挙を成し遂げた。

しかしながら、映画祭後のインタビューで齊藤は「悔しさしかない」と明かした。全力で作り上げた作品だったからこそ、予想以上にシビアな観客の反応を肌で感じた。そのことが創作意欲を再燃させたようだ。直後に、齊藤は『MANRIKI』を再編集することを決めた。

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映画祭の翌日、大規模ストライキが行われている広場に齊藤は赴いた。美しい石造りの街並みの中でパリの人々が声を上げ、抗議の旗が掲げられ、あちこちで煙が上がる真っ只中で、緊迫した空気までもとらえるように、自ら映像を撮影した。そしてその映像は、当時完成間近だった映画『COMPLY+-ANCE』に収められることになる。

「『MANRIKI』は、国内での上映前には(劇場に来ない、事前に無料で観てくださった)評論家方や自称評論家の方々からの酷評およびバイアスが強めだったので(覚悟はしてましたが^ ^)、永野さんや斎藤工の存在を知らないパリ国際ファンタスティック映画祭の舞台でスペシャルメンションを受賞したことは素直にうれしかったし、この時代に永野さんや清水監督と『MANRIKI』という映画を練り出せたことが誇らしかったです。

やはり映画は、受け取り手の数だけそれぞれの見方の個性・良し悪しがある。そしてプチョン国際やパリ国際でのリアクションを受けて、さらに旨味を足した『MANRIKI』完全版を仕上げることを決めました。この春、お届けできたらと現在進めております。『COMPLY+-ANCE』も進化版になってきています」

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再編集を経た『MANRIKI』は、まずディレクターズカット版として3月27日より池袋シネマ・ロサにて特別限定上映が決定した。さらに齊藤が言及した完全版が、春公開に向けて準備中だ。そして上映中の『COMPLY+-ANCE』は、日によって出演者・スタッフによるトークが行われたり、上演前に漫才が行われてSNSでライブ配信されたりと、今後も斬新な劇場体験が仕掛けられていくという。齊藤がパリで得たインスピレーションが吹き込まれ、進化する2作品を見逃すわけにはいかない。

なお、現在は齊藤、永野、金子ノブアキ、SWAY、清水康彦によるチーム万力が製作した短編作品4本、そして齊藤が企画・ストーリー原案・脚本・声の出演を務めるクレイアニメーション作品『映画の妖精 フィルとムー』が、期間限定で無料配信されている。この状況の中で、観る人が少しでも笑って元気になったり、楽しい時間を過ごしたりしてもらえたら、との願いからだ。映画の持つ可能性を枠にとらわれずに追究する試みであるとともに、『MANRIKI』へと繋がる齊藤らのクリエイションに触れられる貴重な機会!
視聴は下記リンクから。

>>チーム万力 短編4作品
>>『映画の妖精 フィルとムー』

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『MANRIKI』ディレクターズカット版特別限定上映
●監督/清水康彦
●企画・プロデュース・出演/齊藤工、永野
●出演/金子ノブアキ、SWAY、神野三鈴ほか
●2019年、日本映画 
●88分
●配給/HIGH BROW CINEMA、東映ビデオ
●3月27日(金)より4月2日(木)まで、池袋シネマ・ロサにて公開
http://crush-them-manriki.com

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『COMPLY+−ANCE コンプライアンス』
●総監督・企画・原案・共同脚本・撮影/齊藤工
●監督/岩切一空、飯塚貴士
●出演/秋山ゆずき、平子祐希、大水洋介ほか
●2019年、日本映画
●70分
●配給/SPOTTED PRODUCTIONS
●アップリンク吉祥寺&渋谷ほか全国にて順次公開中
https://complyance.tokyo

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TAKUMI SAITOH
移動映画館cinéma bird主宰。長編初監督作『blank13』(18年)が国内外の映画祭で8冠獲得。18年、パリ・ルーヴル美術館のアート展にて白黒写真作品が銅賞受賞。19年も出品。日本代表として監督を務めたHBO Asia “Folklore”『TATAMI』、同企画第2弾“Foodlore”『Life in a box』が映画祭およびBS10スターチャンネルにて放送中。企画・制作・主演の『MANRIKI』、企画・脚本・監督・撮影の『COMPLY+-ANCE』が公開中。21年公開予定の『シン・ウルトラマン』では主演を務める。
www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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撮影舞台裏を公開!「齊藤工 活動寫眞館」について

photos : TAKUMI SAITOH, vidéo : SHOICHI INOUE (EAST ENTERTAINMENT)

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