齊藤工が想いを寄せる、別府の町、安部賢一の佇まい。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2023.05.19
人が浮かべる表情の柔らかさや奥行に、心がほろりとほどけることがある。悲しみを背負っているような、内緒をたくさん持っていそうな、でも、優しい表情。フィガロジャポンの長期連載「活動寫眞館」7月号に掲載された、齊藤が撮った俳優・安部賢一の佇まいは、見る人にそんな印象を抱かせる。
安部賢一。撮影されたのは2022年5月。
齊藤自らがメガホンをとった短編映画『縁石 ふちいし』に出演する安部。日本の映画作家たちが「オリジナルな視点で、「別府でのオールロケ、そして温泉の登場はマスト」というユニークな縛りのなかで撮影する別府短編映画プロジェクト第3弾の作品『縁石 ふちいし』に、大分県出身の安部が主演したという経緯だ。
「『ガチ星』等を拝見して惹かれました。物語がある方なので、準備段階から撮影、仕上げ、上映にいたるまで、ずっとこの作品のライフラインでいて下さいました。「サンクチュアリ 聖域」の安部さんも素敵でした」
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齊藤工のモノクロ写真が捉えたのは、俳優・安部賢一の優しさと寂しさが共存する表情だけではない。別府に住まう、土地とともに生きる人々、別府の生花店の花。どこか切なく、静かで、でも笑顔とささやかな幸せが漂っている。短編映画の中には、煙突から煙が流れる定番の別府の風景も。ここに暮らす人々はもちろん、ここを訪れる人々も、湯を愛し、湯が育む食べ物を愛し、ここを大切に思う人たちとのコミュニケーションを楽しむ風景が淡々と綴られていく。
「別府にお邪魔して撮影させていただいているというより、別府の方々が一緒に映画作りに切磋琢磨して下さっている感覚がありました。第一弾、第二弾と別府短編作品を積み上げ来た賜物、恩恵だと思うので、これからもその相互扶助の関係が紡がれることを願っています」
別府ブルーバード劇場の岡本照館長。92歳を超えてもその映画愛は永久に。
安部賢一演じる男の子供時代を演じる地元の少年。
少年の母を演じる女性。
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本作は4月22日に別府ブルーバード劇場で上映がスタートした。齊藤は英語字幕を付けることにとてもこだわったという。舞台挨拶に安部賢一とともに訪れた際、「どこにでもあるチェーン店じゃなくて、地元の人に愛されている屋台とか、そういう場所に行きたいじゃないですか。僕は映画館もそうじゃないかと思っていて、照館長に会いに行く先に短編プロジェクトがあることに意味があって、観光に来た方々にブルーバード劇場で映画を観るきっかけになる役割を担えればいいなと思います。日本映画すべてに英字幕があるほうがいいと思っている」と語った。
別府ブルーバード劇場に足を運び、『縁石 ふちいし』を観た人々は特別な体験となったに違いない。いまさっき見てきた場所が、その土地の空気が、スクリーンに映っている。同じ風景でも体感する人が違えば、また新しい視点や感情を帯びて、ユニークなメッセージを届けてくれることを目の前で味わえる。
旅と映画の楽しみ方は、果てしない。
1973年8月4日生まれ、大分県出身。競輪選手だった父に憧れ、同じ道を目指すが、怪我で断念。映画、舞台、TVドラマ、CMなどで幅広く活躍する俳優となる。2016年、TVドラマとして 放送され、後に映画化された江口カン監督『ガチ★星』(18年)で初主演。近作に、安里麻里監督『アンダー・ユア・ベッド』(19年)、池田エライザ監督『夏至るころ』(20年)。齊藤工監督短編映画『ふちいし』(23年)で主演。
●監督/齊藤工
●出演/安部賢一、別府に暮らす人々
●41分
●4月22日、別府ブルーバード劇場にて公開された。
別府短編映画プロジェクト https://beppu-tanpeneiga.com
別府ブルーバード劇場 www.beppu-bluebird.info
TAKUMI SAITOH
ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi