子どもたちと向き合う、監督・齊藤工。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2023.10.19
齊藤工は、自身の監督作や出演作の撮影現場でキャストたちのモノクロポートレートを撮影する機会は多い。そして、主要キャストだけでなく、子どもの俳優たちにもレンズを向ける。大分県を舞台に監督した短編『縁石』でも子役のポートレートを撮影しているし、最新監督作『スイート・マイホーム』でもサチ役を演じる少女・磯村アメリと、ユキ役の赤ちゃん・伊東玲舞に対してシャッターを切っている。
「私自身、幼い頃に、『子ども扱いされた』という記憶があって、大人が目線を下げてきたことを、子どもこそ敏感に感じるものだ、と思っています。その実体験もあり、子役さんをひとりの役者として、大人と対等に扱いたいという気持ちがあります。演出もそういうつもりでしているので、ご本人の個性を活かしながら適したオーダーやリクエストを、子役さん、エキストラさんを含む出演者さん全員に対してしているつもりです。皆さんプロフェッショナルなので」(齊藤)
とはいえ、ユキ役の伊東玲舞はまだ小さな赤ん坊だ。赤ちゃん役の伊東玲舞の無邪気さが本作では救いでもあり、切なさも誘う。世界に生まれ出てから少ししか時間を経ていないのに、なんて多彩な表情を浮かべ、ユニークな佇まいなのだろうと思う。
齊藤が「レムちゃん」と呼ぶユキ役の伊東玲舞。
「レムちゃんに関しては撮影時1歳にすらなっていなかったと思うので少し特殊な状況でした。彼女の表情が、生まれ出た世の中に対して不服そうに感じました。勝手な解釈かも知れませんが。
海外の映画祭でも『どうやって赤ちゃんからああいう表情を引き出したのか』と質問されました。引き出すも何も、現場でのレムちゃんがあの状態でした。
撮影現場と言う非日常、他人がたくさんいたり、カメラがどこかにある――という状況への違和感を純然に表現してくれていたのだと思います。(これも勝手な解釈ですが...)
子どもさんがいる現場は大変ですが、撮影現場の優先順位がはっきりするから、かえって明快な感じもしました。スタッフの方々、俳優の方々、皆さん前置きなく、当たり前に子どもたちをたててくれた。そんな建て付けと人運に恵まれた事で現場の風通しが良かった気がします」(齊藤)
磯村アメリをサチ役に起用した理由は、
「オーディションを受けてくれました。彼女はばっちりセリフを覚えてきて、ドヤ顔でお芝居して。その後、気を抜いた瞬間が更に良かったんです、自分の役割終わった!という瞬間に少し足をバタバタさせたりして。そういうところに素が見えました。ちゃんと役割を果たした、使命を終えた、そして、ちゃんと歳相応の子どもに戻っていく、という。その"磯村アメリらしさ"が『スイート・マイホーム』には必要だと思いましたし、実際に彼女は素晴らしい瞬間をたくさん作品の中に残してくれました」(齊藤)
2022年2月、映画『スイート・マイホーム』撮影現場にて。清沢サチ役の磯村アメリ。
本作の底知れない恐怖感に観客を導く役割を担ってくれたサチ役の磯村アメリは、公式コメントでこのように述べている。
「優しくて、魔法が使えそうな監督さんとお仕事できて本当によかったです。怖いものが好きなので、サチになれてすごいすごいうれしくて撮影も楽しかった! 映画みながらいっぱいドキドキしたけど、ドキドキもおもしろかったし、ふしぎな黒い色の魔法にかかったみたいでした。みんなもドキドキして楽しくみてくれるといいです!」(磯村)
齊藤の使った魔法とは?
「黒い帽子、被っていたんですよ。それです、魔法使いに見えた理由」(齊藤)
なるほど......。
フィガロジャポン本誌12月号では、少女と赤ちゃんに対して特別な感情を抱き、『スイート・マイホーム』の大事なテーマである母性を見事に演じた奈緒のポートレートも掲載。
大ブレイク女優・奈緒の優しさと儚さを、齊藤工が撮る。
母性に対しての奈緒の想いにも触れている。ぜひ読んでほしい。
2016年、東京都生まれ。テレビCMやドラマ、映画などに多く出演。主な作品に『アキラとあきら』『チェリまほ THE MOVIE~30 歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『夜を走る』(以上22年)、『サイドバイ サイド 隣にいる人』(23 年 )など。公開中の映画『スイート・マイホーム』にて清沢サチ役を演じている。
2021年5月11日、岩手県生まれ。広告などに出演。映画『スイート・マイホーム』では清沢夫婦の次女、ユキ役を演じた。
●監督/齊藤工
●出演/窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、窪塚洋介、根岸季衣、松角洋平ほか
●主題歌/yama
●2023年、日本映画
●113分
●配給/日活、東京テアトル
●2023年9月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国にて公開
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会
©神津凛子/講談社
TAKUMI SAITOH
ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi