大ブレイク女優・奈緒の優しさと儚さを、齊藤工が撮る。

映画『スイート・マイホーム』公開にあたって齊藤工 活動寫眞館スペシャルプロジェクトを決行、キャストの魅力に迫る。今回は、今年もっとも輝いている女優のひとり、奈緒が登場。

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最初に尋ねたのは、「家」というものをどう捉えているか?
「"家"に帰ると私はとても解放されます。その分、家には心の中がそのまま表れたり、"家"の居心地で気持ちも変わったり......その全面が、心を映し出す鏡のような場所だと思います。そして"家族"は大切なチーム。大人になるにつれ関係も変化していきますが、時に自分を無条件に肯定できるのは家族からの愛があったからです。『スイート・マイホーム』では、そんな大切な存在に歪みが生まれたら......と、自分に置き換えて想像せずにはいられませんでした。改めて"家"、そして"家族"を大切にしたいと思います」(奈緒)

家が壊れていく。家族の心も一緒に壊れていく。それは、ただただ恐怖でしかない。そんな人間の模様を描く作品で指揮棒を振った齊藤工監督の演出については、
「監督はホッとする雑談のような時間も、すべて演出に繋がるような一言を下さる方でした。"孤独"というキーワードを休憩中のお話の中でいただいた日がありました。それは(私が演じた)本田さんを理解しようとする上で、とても大切な言葉となりました」(奈緒)
そんな奈緒の言葉に対し、齊藤は、
「本田と向き合うことは、私自身『スイート・マイホーム』のなんたるかを解釈することでした。ただ、海のように深くて到底深層まで辿り着けない中、現場が始まりました。そして奈緒さんが、言葉ではなく、佇まいでその答えをくださったんです」(齊藤)

奈緒が演じる本田と対をなすような存在が、窪田正孝演じる清沢賢二。窪田という個性派かつ演技派の人気俳優と共演して、どんな感慨を得たのだろう。
「窪田さんはあらゆることに敏感で、優しい方だなぁと思います。お芝居で不安なことがあると、ご相談する前に窪田さんが解決してくださいました。そして、物知り博士な一面もあって、いろんなことを窪田さんに聞くとお話がどんどん膨らんで、とても楽しかったです」(奈緒)
今回のコメント取材で、キャストのほとんどが撮影現場の和やかさを語っている。作品の恐ろしさと反比例するかのごとく、穏やかな空気が流れていたようだ。
作中では、その恐怖へ導くのが母性でもある。母性、そして女性性。本作のキーワードにもなりうるが、女性性などとジェンダーに境界線を引くのも繊細な現代。奈緒はどのように考えているのだろうか。
「私はジェンダーも、その人のひとつの個性だと思っています。何を美しいと感じ、何を愛おしく思い、自分のどこが好きなのか、一人一人違います。"母性"に性別は関係なく、その人の中で愛から自然と生まれてくるものだと思っています」(奈緒)

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先のコメントで、「自分を無条件に肯定できるのは家族からの愛があったから」と言った奈緒の、母性の解釈は懐が深い。だからこそ、とてもまっすぐで謙虚でもある。それは「怖いこととは?」という質問への回答にも表れていた。
「(怖いこととは)"知らないこと"です。以前、自分の無知のせいで、とても後悔したことがあります。知らないことを目の前にした時はいつも、知らないうちに自分の無知で人を傷つけていないかな?と怖くなります」(奈緒)

『スイート・マイホーム』に限らず、画面の中にいる奈緒は、とても親しみやすいのに、どこか儚く危うさを与える。その繊細さが、彼女を見つめる女性たちにも、ある種の共感と共犯感情を授けるような印象のある演じ手だ。
「役柄や作品、共演者、スタッフ、それらのすべてに、誠実に心を寄り添ってくださる暖かさを感じました。そんな心根を持たれる奈緒さんが、日本のエンターテインメントのトップランカーであることは、希望の光です」(齊藤)

奈緒/NAO
1995年生まれ、福岡県出身。連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年)でヒロインの親友役で注目される。テレビドラマ「のの湯」(19年)で初主演し、「あなたの番です」(19年)で第102回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞。『ハルカの陶』(19年)で映画初主演、『#マンホール』(23年)でもヒロインを演じた。主な出演作に、『みをつくし料理帖』(20年)、『余命10年』(22年)、『マイ・ブロークン・マリコ』(22年)など。2023年は話題となったドラマ「あなたがしてくれなくても」で第116回ザテレビジョンドラマアカデミー 最優秀主演女優賞を受賞。また2023年エランドール賞新人賞を受賞した。

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『スイート・マイホーム』
●監督/齊藤工●出演/窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、窪塚洋介、根岸季衣、松角洋平ほか●2023年、日本映画●113分●配給/日活、東京テアトル●2023年9月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国にて公開 ©2023『スイート・マイホーム』製作委員会©神津凛子/講談社

合わせた読みたい
齊藤工の目に映る里々佳、愛らしいネイバーフッドガールの先にある虚無感。
窪塚洋介と齊藤工の間にあるもの。
齊藤工が託した、もうひとつの母性・根岸季衣。
齊藤工が表現する、大らかさと繊細さ―リアリティのある両極を持つ蓮佛美沙子。
「癖」を大胆に演じる俳優・中島歩と、監督・齊藤工。
齊藤工が撮った、弱さや戸惑いを演じきれる人・松角洋平。
齊藤工が窪田正孝を選んだ理由、そして窪田正孝が出演した理由。
齊藤工が映像化した『スイート・マイホーム』、原作者は美しき女性作家・神津凛子。
齊藤工、『スイート・マイホーム』の旅。

TAKUMI SAITOH

ナビゲーター役の NTV「こどもディレクター」(水曜 23:59~)放映中。出演映画『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』が 7月26日公開。企画・プロデュースした今冬公開の児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』に続き、ハリウッド映画『ボクがにんげんだったとき/When I was a human』のエグゼクティブプロデューサーも務める。www.b-b-h.jp/saitohtakumi

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