齊藤工が捉えた、片岡千之助の色香。

「片岡千之助さんを撮りたい」

齊藤工からそう連絡が入った。フィガロジャポンの2025年7月号(5月20日発売)は「美しい和の暮らし方。」特集。歌舞伎の世界で羽ばたく若き才能が今号に登場するのは願ってもないことだった。

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2025年4月、都内スタジオにて撮影。スタジオにあった花を見て齊藤は突然、「片岡さんに持っていただいて撮影したい」と言い出した。久しぶりに会った齊藤はとても痩せていて、こちらも心配になったが、「役作りのため」とのこと。ほっと安心。

家紋が入った浴衣とブラックのシャツ、両方の衣装で撮影しようということになった。ヘアスタイリストが「とてもいい感じのくせ毛。写真映えする」と片岡の髪についてコメント。確かに自然な軽やかさが、佇まいを柔らかくも切なくもしてくれる。

「『ハムレット』のチラシを観たことが、この人を撮りたい、と思った理由です」(齊藤)

片岡千之助は9月、舞台『ハムレット』で主役を演じる。そのポスターの撮影をしたのは写真家の阿部裕介。実は片岡がフィガロジャポンに最初に出演した2017年でも阿部が撮影を担当した。そして、今回の舞台の宣材写真を阿部に、というのは片岡本人の考えだったそうだ。

1カット目の浴衣姿を撮り終えた齊藤は、
「想像はしていましたが、千之助さんは撮る前から完成している。ふだんはマイルドな雰囲気なのに、オンになった瞬間、見る側が『見たいと思うもの』を表現して見せてくれる。客席側に『目』があって、そちらから捉えている感じなんです」(齊藤)
撮られ方に品位がある人、とも加えた。

撮られる側の片岡は、
「アップの時、瞳の奥までも撮ってくださっているように感じました。自分の中にも確かに、撮っているような感覚で撮られることが肝、という気持ちはあります」と答えた。

「千之助さんは光を把握してる感じがする」と齊藤は言う。

「ご本人の中に『自分はこれだ』っていうことがありすぎないほうが、決めつけ過ぎない"淡さ"があるほうが撮っていて立体的になっていく、という感覚がありました。目から光のビームが出ていましたし」(齊藤)

2カット目も撮り終えた齊藤が発したのは、「美しい。すべて作品です」と一言。

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実はこちらが1カット目。家紋の銀杏と、松嶋屋の屋号より松葉が入った模様だ。

撮影終了後も、齊藤と片岡の会話は続いた。映画のこと、ドラマのこと。昨今の片岡千之助は映像作品の撮影も続き、舞台とは異なる感慨を得ていると話す。

「映像のお仕事は、自分が演じた後にも完成するまでたくさんの工程がありますから。舞台は毎日毎日演じ、その場で完成して修正をかけていけるけれど」(片岡)

ただし、ライブ感にあふれる舞台と、演じ手の離れたところで完成に向かっていく映像の世界、その両方に片岡はとてつもない喜びを感じているように思えた。同世代の俳優仲間とプライベートで食事をしたり、卓球をして汗を流したり。良き友人であるのと同時に、仲間たちがいい演技をしてエンターテインメントの世界で階段を上っていく姿を見ると「絶対負けられない」とも思う、とも。その気持ちを「嫉妬するというよりも、素直に憧れます」と表現した。

最後に、9月の『ハムレット』公演にはぜひ齊藤に観に来てほしい、と片岡は齊藤に伝えた。東京(9月3日~9日)は新国立劇場で、京都(9月13日~15日)は先斗町歌舞練場で行われる。

「歌舞練場はレトロな劇場で建物もおもしろいんです。そこで演じるということも楽しみです」(片岡)

秋、齊藤はレンズ越しではなく、舞台に立つライブの片岡千之助の魅力を再発見する。その感想も聞いてみたいものだ。

片岡千之助/SENNOSUKE KATAOKA
2000年、東京都生まれ。04年、4歳で歌舞伎座にて初代片岡千之助として初舞台を踏む。11年には片岡仁左衛門との『連獅子』が実現、戦後初の祖父・孫の共演となった。12歳で自主公演『千之会』を主催するなど芸事の研鑽を積みつつ、17年にはパリのペニンシュラにて、24年にはNYのグランド・セントラルステーションにて、歌舞伎舞踊を披露。20年、カルティエ「パシャ ドゥ カルティエ」コレクションのグローバルキャンペーンに起用された。今秋9月、初のシェイクスピア劇『ハムレット』で主演。昨今は映画、現代劇舞台、大河ドラマ「光る君へ」など、復学した大学でも学びながら表現者として邁進する。
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齊藤工/TAKUMI SAITOH
出演作であるNetflix映画『新幹線大爆破』が現在配信中。ほかにも出演作『少年と犬』や、企画・プロデュースした児童養護施設のドキュメンタリー映画『大きな家』(劇場公開のみ)がロングラン上映中。ハリウッド映画『When I was a human』の制作にも携わっている。

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