花起こしの雨で桜の蕾がほころび、列島が薄紅に染まる美しい季節がまた巡ってきました。さあ今年はどんな桜に出合えるでしょう! 麗らかに続く桜色のトンネルを、大切な人と歩けたら素敵ですね。
世の中がお花見でそわそわしている頃、花屋さんは年度末で大忙し! そして、5月第二日曜日(今年は5月14日)の「母の日」に向けてさらに忙しくなります。寒い季節に私たちを楽しませてくれた春の球根花たちともそろそろお別れ、店先の花々はまるで衣替えするかのように、春の花からいっきに初夏の花へと変わっていきます。
変化が目まぐるしいのは人間も同じですね。4月は新たな環境での生活や人間関係の始まりで、思っている以上に気疲れするシーズンでもあります。緊張が続く毎日、いつも以上に週末が待ち遠しいはず! オンとオフを上手に切り替えるひとつの方法としておすすめなのが「週末の花」。土曜の朝に花と向き合う時間を少し持つだけで、不思議とリフレッシュ! 週末を気持ちよくスタートできるのです。
まずは、金曜の仕事帰りに花屋さんに立ち寄って、生命力あふれる旬の花、もしくはその日の気分でピン! ときた花を選びます。
その昔アロマセラピーの勉強をしていて、細かな部分はすっかり忘れてしまっていますが(笑)すごく印象に残っている話があります。それは、いくつかの香りを嗅いでみてその時自分が一番心地良いと感じた香りが、実はその時の体調や気分に必要な香りなんだ、という話。植物の力や人間の感覚ってすごいなあと思いつつ、それは何だか花選びにも通ずる気がして、スッと心に入ってきた話なのです。そして、「この色素敵!」「この花いい香り!」と直感で手にする花は、今の私が無意識のうちに欲している何かを満たしてくれる花なのかもしれない、と思うようになりました。
植物の香りにさまざまな効果効能があるように、「色」も人の心の働きに影響を与えます。たとえば黄色やオレンジのビタミンカラーは元気の素だったり、ピンクは女性らしい美しさや幸福感をもたらしてくれたり、ブルー系には鎮静効果がある、などなど。部屋のカーテンなどインテリアの色を頻繁に変えるのは大変ですが、花なら気軽に暮らしに「色」を取り入れることができますし、気分でカラーチェンジするのも簡単ですよね。
ふと自分のことを振り返ると、黄緑色の花を選ぶ確率が高い……! 観葉植物のグリーンも好きですが、何より黄緑色の生花が好き。緑色には情緒の安定や身体を癒す効果があるとされますので、どれだけ疲れているのか私! とつっこみたくもなりますが(笑)、何色にも寄り添える明るくニュートラルな黄緑色をとても心地良く感じます。今回は、中でも溺愛する花「ビバーナム・スノーボール」を主役に、「白&グリーン」「パープル&グリーン」という、癒しの花色をご紹介しましょう。
爽やかなライムグリーンとも、ジューシーなアップルグリーンともいえる「ビバーナム・スノーボール」。ボール状の小さな花の集まりは一見アジサイのようですがアジサイにあらず、「スイカズラ科ガマズミ属」の花木になります。冬の終わりから輸入物が出回りますが、国産のみずみずしいスノーボールはこれからが旬! 咲き進むにつれて、黄緑色から淡い白色に変わっていき、水揚げがしっかりされていれば思いのほか長く楽しめます。美しいシーズンにぜひ一度手に取ってみてくださいね!
スノーボールにあわせて、野に咲く草花のような花々をチョイス。オンシーズンのレースフラワー「グリーンミスト」は、ふわっとした柔らかな質感が魅力。ニンジンの葉を思わせる繊細な葉も美しく、デザインの大切な要素になります。小さな風船のような「グリーンベル」や「タラスピオファリム(ナズナ)」のようなのびのびした軽やかな草花からも、爽やかな初夏の風を感じます。そして「オルラヤ・ホワイトレース」は、可憐な花がキラキラとした陽光をまとっているようなピュアホワイト……!
白色は、気持ちをリセットして新たな出発を助けてくれる色。心が洗われるような「白&グリーン」の花々は、揺らぎがちな4月の心と体に優しく寄り添ってくれるようですね。
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スノーボールのシャンペトルアレンジ
【材料】(画像左から)
タラスピオファリム(ナズナ) 1~2本
ビバーナム・スノーボール 2~3本
レースフラワー・グリーンミスト 2~3本
オルラヤ(オルレア)・ホワイトレース 2~3本
グリーンベル 1~2本
器(画像はガラス花器、バスケットなどでもOK)
切花栄養剤 小袋1袋
(最近は花屋さんで購入時につけてくれるところが増えています)
【作り方】
- 切花栄養剤を正しく希釈した水を器に入れます。
- スノーボールの枝はできるだけ斜めにカットし、ハサミを入れて枝を割ります。グリーンミストは水に浸かる部分の葉を手で取り除きます。
- まず、ガラスの器の縁を利用して、スノーボールとグリーンミストをあしらいます。器の大きさに対して花の量が少ない場合は、花を四方に活ける「四方見」ではなく、正面左右から見る「三方見」とし、花は手前にボリュームが出るように活けます(画像下左)。
- 次に、オルラヤ、グリーンベルを3に重ねるようにふわっと活け、最後に小分けにしたタラスピオリファムを飛ばすように長めに活ければ完成です!(画像下右)
※全ての花を活けた様子を上から見ると下の画像左のようになります。茎はなるべく1箇所にまとまるように、活ける際には同じ方向に向けて挿していくとアレンジがまとまりやすくなります!
同じ花材、同じ活け方でもバスケットに活けるとまた雰囲気が変わりますね。
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そして、もう一つの癒しの花色パターンは「パープル&グリーン」。
高貴なイメージの紫色には「精神的な成長・癒し・思考を深める色」といった効果があるとされ、創造力豊かに、センスを高めてくれながら、さらに深い癒しをもたらしてくれるとも言われています。様々な願望を叶えたい欲張りな私たち女性にはぴったりな色ですね(笑)ともすると寂しげになりそうな紫色ですが、スノーボールやグリーンミストのような明るい透明感あふれるグリーンと合わせると、何とも爽やかで心地よい雰囲気に! 器次第でモダンなテイストにもなります。
画像下右は、上記の「白&グリーン」のアレンジの花材の白いオルラヤをパープルの花々にチェンジしたもの。水彩画のような「アネモネ・レリティー」とシックな暗紫色の「スカビオサ」に、愛らしいブルーの「忘れな草」をちょこっと入れています。画像下左は暗紫色が入っていない組み合わせパターンになりますが、紫の色合いには幅がありますので濃淡やボリュームで印象が変わりますね。「パープル&グリーン」は「白&グリーン」よりやや上級編かもしれませんが、どちらもリラックスしたいリビングに飾るのにぴったりの花色でおすすめです。
週末ゆっくりと過ごすひととき、傍らに季節の花々が優しく佇んでいてくれたら……自然と笑みがこぼれますね! そんな花のあるライフスタイルがきっと、日々の暮らしをいっそう上質で心豊かなものにしてくれます。そして、満開に咲き誇った後、枯れて散りゆく花の切ないまでの美しさをぜひ知っていただきたいと思っています。
さて、ご縁をいただき2年と4か月×月に約2回、計51回続けさせていただきました本コラムも今回で最終回になります。
私自身、創刊当時から無類のFIGAROファンで、花の世界に入るきっかけをくれたのもFIGAROでした。かつて、パリ在住の猪本典子さんによる花の連載ページがあったのですが、それがまさに私のバイブル! 洋書のように美しい誌面はご自身によるスタイリング&フォト、そしてエスプリの効いたエッセイ。猪本さん×FIGAROの世界観にどれほど憧れたことでしょう……! いつかこんなページが持てたらと、夢中で勉強しました。そんな私がこの連載を担当させていただくことができて、どれほど幸せだったかは言うまでもありません(もちろんプレッシャーも…笑)。
このコラムの撮影のために、金曜に花屋さんで旬の花を買い求め土曜の朝に活ける、というWEEKEND FLOWERのご提案そのものの暮らしが始まりました。朝日の射しこむリビングで、フレッシュな水をたっぷり用意して、花の表情と向き合いながら、パチン、パチン、とハサミを入れて丁寧に花をあしらう……その心静かな週末の朝時間が、いつしか自分の中で一番好きな時間になりました。
花にはたとえ一輪であっても生きているものが持っている“精気”があり、植物のエネルギーを感じることで自分の中の“気”も目覚め、不思議と元気が湧いてきます。そして時に、花が心身の不調を助けてくれることもあります。花を飾りながら花に励まされ、愛でる時間が心の余裕のようなものを生みだしてくれると感じます。だんだんと咲いていきながら表情を変える花の姿に心を奪われたり感情を揺さぶられたり、花の美しさの真実を見届けてほしい。今を生きるたくさんの方に、花の魅力を身近に感じていただけたらと願っています。
ウィークエンドに家に飾る花を選ぶ、それは何だか心浮き立つ“日常の素敵”。ぜひ花屋さんに足を運んで、旬の花にときめいていただきたいと思います。四季のある日本は、世界中のどこの国よりも花の種類が豊富で、その品質も素晴らしく、何より美しいのですから……!
毎回お伝えしたいことがたくさんありすぎて、モリモリのコラムにお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。この【花のある週末】が、皆さまの暮らしの彩りにほんの少しでもお役に立っていましたら嬉しいです。
自分らしく、心地よく。これからも花と素敵な週末を。
<INFORMATION>
花の国日本協議会では、昨秋より本格的に
「WEEKEND FLOWER」企画をスタート!
家族や友人が集う食卓に、1週間がんばったご褒美に。ウィークエンドに花があるだけで、会話がはずんだり、笑顔が増えたり、心がほっとしたり。"日常の素敵"――花のある暮らしを提案します。
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photo,styling,text:NORIKO OGAWA